伯爵令嬢の恋愛相談室
伊佐波瑞希
第1話
皆様初めまして
私はマリア・ルイートと申します。
いきなりですが現在私には非常に頭を悩ませてる悩みがあるのです。
今私がいるのはアルスード王国の貴族の子息令嬢が通うアルスード学園、その校舎裏にある誰が使うの?と甚だ疑問が過る庭、そこには小さな花壇と小さな池、それとその二つを眺めることができる横長のベンチが一脚のみ、そのベンチに座る私の隣には一人の男子生徒がおりました。
彼は膝に乗せた手を握りしめ涙を流しています。そして掠れる声で
「酷いですよね、ぼ、僕は彼女のことをこんなに愛しているのに‥ぐす、か、彼女のを、ま、前にすると、つい、悪態や、冷たい態度をとってしまって、彼女に、つ、辛い思いをさせて‥‥う、本当に僕はなんて酷い奴なんだ!!」
彼は立ち上がり池の前まで歩くと止まり、普段は絶対に口にしない奇声を叫びます。
私は黙って彼が落ち着くのを待ち、彼が叫ぶ奇声が一段落してから声をかけました。
「気はすみましたか?アルノルド・アルスード殿下?」
そう、今私の前で泣き言を漏らし、奇行を繰り広げた男子生徒は輝く金色の髪に海を連想されるマリンブールの瞳、まるで絵本から出てきた王子さまのようだと巷で大人気のこの国の第一王子、アルノルド・アルスード王太子殿下です。
なぜそんな方が私のようなしがない伯爵令嬢と学園の裏庭で密会のように会い、さらになぜ殿下の奇行を目の当たりにしているのかというと、それは一週間前に遡ります。
☆☆☆
今日は年に二度行われる学術試験の結果発表です。今回の私の結果は頗る良く、両親と約束した目標を達成し、私が前から行きたかったお店でお祝いのディナーを取る予定でした。浮かれた私は鼻歌を歌いながら廊下を歩き馬車が止まっている待場に向かいます。
「~♪」
そして校舎間にある渡り廊下に来た時です。
一匹の小さな犬が私の前を通りました。
実は私は犬が大大大好きなのです!!
時間にもまだ余裕があったので私は犬を追いかけました。
追いかけるのに夢中な私はいつの間にか校舎裏まで来ていて、残念ながらあの犬は見失ってしまったのです。
肩を落として戻ろうとした時になにか林の向こうから人の声が聞こえた気がした私は気配をできるだけ消して茂みの隙間からそっと声のする方を覗いみました。
するとそこでは二人の男女がおり、口論していました。
「お前のような女は嫌いだ!!」
「殿下!?私は殿下の事を思って」
「うるさい!!早く目の前から消えろ!!」
「っ!?、し、失礼いたしますっ!!」
そして女子生徒は涙を我慢するようにその場を去りました。
「うわ~、変なもの見ちゃった~、関わらない方がよさそう‥‥」
私はゆっくりと後退し、去ろうとした時でした。
「あー!!」
びくっ
いきなり男子生徒が大声をあげ私の足はビックリして立ち止まってしまった
すると耳にやたら男子生徒の独り言が聞こえてきた。
「またやってしまった、俺は、僕はなんでいつもいつも、毎日鏡を見て言い聞かせているのに、ナリアに会う前にも必ず100回暗示をかけているのに、心のなかでは素直に彼女への愛を囁いているのに!!どうしてだ!!どうして‥‥ぐっ、ぐすっ」
最終的には男子生徒は泣き出してしまった。私は少し心配になりゆっくり音を鳴らさないように振り返る、すると男子生徒はゆっくりと立ち上がりふらふらと池の方へと歩みだしてしまった。
これは不味いのでは!?
焦る私に構うことなく池の淵に立ち水面を見つめる男子生徒
そして私の耳に不吉な単語が
「こんな不甲斐なく、彼女を傷つけるだけの僕なんか‥‥生きていても‥‥」
その言葉を聞いた瞬間私の身体は自然と動いていた。
「は、早まってはいたけませんっ!!」
「え?」
「「あ」」
ドボンっ!!
私が声をかけた瞬間男子生徒は驚き振り返る瞬間足を踏み外しそのまま池に落ちてしまいました
これが私、マリア・ルイートと後にヘタレ残念王子と揶揄して呼ぶほどの仲になることになるアルノルド・アルスードとの出会いだった。
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