35.しゅうがくりょこう(ばくはつ)


「これ、どうしようかねー」


京都駅前でイチャコラしている響と相沢ちゃんを見ながらいいんちょーに目を向けると、


「そうですねー」


いいんちょーも生暖かい目を向けつつ苦笑しながら2人を眺めている。


普段は相沢ちゃんが恥ずかしがって、響もそれを察して人前で抱きついたりはしないんだけどね。


でも、


『俺の大切な人を傷つけるやつを、俺は許さない』


こんな事言われちゃったら‥まぁ、しょうがないかにゃー。

あれは男でもキュンときちゃう。

相沢ちゃんの中学の時の事を考えたら余計にね。



それにしても‥‥


改めて響を見る。


響は親友という色眼鏡を抜きにしても、それはもう綺麗な顔をしてるんよ。

してるんだけど、その響が‥‥ものすごくだらしない顔をしている。

人の目ってハートマークになるんだね。


初めて見たけど、相沢ちゃんと2人の時はこんな感じだったりするんかね?


この顔を写真に撮って、響にほのかな恋心を抱いてた妹の弥生に送ったら一瞬で醒めるんじゃないかな。

100年の恋もってやつ。


ギャップ萌えする気もするけど。




あっ、そうだ。


「いいんちょー、着物似合ってるよん」


女の子はちゃんと褒めてあげないと‥‥とかは抜きにしてもよく似合ってんね。

ただ、変な意味ではなく、いいんちょーは胸が大きいから着こなしに苦労してそうだにゃー。

和ブラかスポブラしてるのかな?多分


「ふふ、ありがとうございます。沢渡君もよく似合ってますよ。そうですね‥‥土方歳三っぽいです」


「あれ?それ、レンタル店でも言われたんだけどさ‥‥」


紫の着物と、この前髪を垂らした髪型で土方の完成って。

何か腐向けのアニメを参考にしてるとか言ってたけど‥‥あれ?それをいいんちょーが分かるって事は‥


いいんちょーって、もしかして腐———


「沢渡君」


「え?」


「藪を突いたら蛇が出ますよ?」


そう言っていいんちょーはニッコリと笑った。


「あ、あははー‥‥」


まるで、アナコンダに睨まれたアマガエルくらいの恐怖を感じたんよ。






響と相沢ちゃんが正気に戻ったところで、移動を開始。

伏見稲荷大社に向けてレッツラゴー(死語)


色んな人に見られていた事に気付いて、真っ赤な顔を手で覆っている2人は自業自得って事で。

2人とも着物を着てるのもあって、それはもう注目の的でしたよええ。

まあ、それでもイチャつきの得の方が圧倒的に多かったでしょ、2人には。にゃはは。




伏見稲荷大社に着いたところで、親切そうなオジサンに声をかけて大鳥居の前で4人で並んだ写真を撮ってもらった。


「修学旅行かい?楽しそうだねぇ」


と笑顔で聞くオジサンに、4人でピースをしながら『楽しいでーす!』と言っているところも撮ってもらって大満足。

うん、みんないい笑顔。


3人には後で送るけど、白百合ちゃんにも送っておこうかな。


その後は千本鳥居を見に行ったけど、和風ファンタジーみたいで何か凄かった(語彙力)


本殿でお参りもしたんだけど、ここの神社は五穀豊穣・商売繁盛がメインなんよね。

他にも家内安全・諸願成就・安産・万病平癒・学業成就なんかにもご利益があるみたいだけど、安産で揶揄うのはやめておこう。うん、やめよう。

多分砂糖の嵐が吹き荒れる。


今年ももう2ヶ月切ってるけどおみくじでも引いてみる?なんて話にもなった。


なったんだけど‥‥ほんとこのカップルは‥


相沢ちゃんが大吉を引いて喜んでたんだけど、響が小吉を引いたんよ。


そうしたら相沢ちゃんは、自分のおみくじを響に渡そうとしたり。

響は『俺が小吉を引いたせいで、せっかく大吉を引いた美麗の笑顔を曇らせてしまった』って落ち込んでたり。


この2人は、いつもお互いがお互いの事を本気で一番に考えてる。

そんな事ってある?普通は自分を一番に考えるのにね。


それと、2人とも書かれている事もちゃんと見ようね。お互いに『今の人が最上』って‥

あぁ、甘い甘い。


それと、俺は末吉なんだけど‥‥


そんな俺の肩に中吉を引いたいいんちょーがポンと手を置いて優しげな表情をした。




伏見稲荷大社を後にして、調べておいた抹茶スイーツが美味しいお店にも行った。


「おっ、美麗。これ美味いぞ。ほら、あーん」

「‥こっちも美味しい。はい、あーん」


倦怠期が迷子になってるバカップルは置いといて、抹茶スイーツは美味しかった。

苦味が足りなかったけど。

それと、カフェインが足りない。




そんなこんなで楽しい時間は過ぎるのが早く、お土産屋さんを回っていたらいい時間になったので、着物を返しに行って修学旅行3日目も終わった。

4日目は自由行動ではなく団体行動だったけど、映画村に行ったりして、そこでも響と相沢ちゃんは笑顔だった。

どちらも、相沢ちゃんの中学の修学旅行のやり直しとかそんな事は頭から抜けていて、作り笑いとかではない、心から楽しいと思ってるような笑顔。

見てるこっちも笑顔になっちゃうよ。


相沢ちゃん、楽しい修学旅行になって良かったね。




こうして、楽しかった4泊5日の修学旅行はあっという間に終わっちゃった。






「響に相沢ちゃん、またオセロでもやる?」


帰りの新幹線で、また何かゲームでもして暇つぶしをしようと声を掛けてみたら‥‥


「あら?」


相沢ちゃんが響の肩に頭をのせて、響はそんな相沢ちゃんの頭に自分の頭をのせて幸せそうな顔して寝ている。

響の膝の上でしっかりと手も繋がれていて


「これはこれは、微笑ましいもの見せてくれちゃって」


そんな2人の写真を撮って【爆発しろ】と銘打って2人にメッセージを送っておいた。




ちなみにこの写真は2人の待受に採用されたとか何とか。


爆発しろ!




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