18.(ぎもんの)しんそう


私は、とあるテレビ番組を見終わり愕然とした。


宇佐美さんからお薦めされた恋愛物のトーク番組で、愛ちゃんも生々しくて面白いと言っていたので、放送日である今日の夜見てみたんだけど‥‥


今日のテーマは恋人間における喧嘩

結論は

・喧嘩するほど仲がいいとは言うが、実際には一概にも言えない(頻繁に意見が食い違って口論するのは論外)

・だけど、喧嘩をして仲直りする事により仲が深まるのは確かで、喧嘩をしてみないと見えてこないものもある。


私は、響君と喧嘩した事ない。

‥‥そもそも誰とも喧嘩した事がない。


もっと仲を深めたい‥‥だとすると‥喧嘩‥した方がいいのかな?

でも、どうやって喧嘩するのだろう‥



とりあえず、部屋に戻ってネットで調べてみると‥えっと。


他の異性の影をちらつかせて浮気のように見せる事で嫉妬心を煽る‥‥?


これはダメ。私ができるとも思わないけど、嘘でも絶対やりたくない。


でも‥‥響君。私でも、嫉妬‥‥してくれるのかな‥‥ダメダメッ!


私は首を勢いよく振った。



もっとこう、普通のは‥

『こら、だめだぞ』

そう言って優しく頭を撫でてくれる響君を想像しながら、私は喧嘩するための作戦を立てる事にした。






翌日、作戦を3つ立てた私は朝から作戦を実行する。


作戦①時間にルーズ

登校の待ち合わせを遅刻してみる。


早速響君にメッセージを送る。


相沢美麗:遅れるから、先に行っててね


‥‥でも、響君と手を繋いで登校したかったな。

響君からすぐに返事がきた。


青羽響:何かあったのか?大丈夫か?


青羽響:まさか、体調悪いとかか?今どこだ?すぐに迎えに行く!


すごく心配してくれて嬉しい反面、申し訳なさで一杯になった。


相沢美麗:ちょっと寝坊しただけ。大丈夫。


青羽響:良かった。だったら待ってるよ。あっ、急がなくていいからな。ゆっくりでいいぞ。


‥‥この手は二度と使わないと心に誓った。




作戦②食の好みの不一致

遅刻は失敗したけど、私の作戦はあれだけでは終わらない。

響君が美味しいって言ってくれたお弁当の甘い卵焼きをしょっぱくしてみた。


昼休み、響君といつもの場所に座りながら、響君をじっと見る。


響君の箸が卵焼きを掴んで‥‥


どうかな‥‥何回も味見はしたけど‥‥がっかりされたら‥‥やだな。


「おっ、味変えたのか。これもすっげー美味い!」


響君は笑顔でとても喜んでくれた。


嬉しいな。こちらこそ、ありがとうだよ。いつもその笑顔が見たくて、思い浮かべてお弁当作ってるんだよ。


ハッ!あれ?作戦失敗してる?


でも‥‥やっぱり嬉しい。




作戦③わがまま

わがままを言ってみる事にした。

響君に頭を撫でられると、とても幸せな気持ちになれるけど、響君は滅多に撫でてくれないから自分から言ってみようと思う。


ここは喫茶店。

恥ずかしいから周りの目がないタイミングで


今だ!


「‥あの、響君。頭を‥‥撫でて?」


そう言うと響君は


「あ、ああ。勿論いいぞ」


と、私の頭を撫でてくれた。


手を繋ぐのも幸せだけど、頭を撫でてもらうと響君の手の温もりでフワフワするような言葉ではとても表現できない幸せな気持ちに‥‥


ハッ!最後の作戦‥失敗しちゃった。


とりあえず‥‥今はこの幸せを堪能する事にする。




もう作戦は無くなった。

家に着くまでの間に思考を巡らせて‥

最後に、響君を困らせてみようと思う。

でも、響君はどうしたら困るのかな‥‥私は響君に何をされたら困るだろう。


えっと‥


響君に可愛いと言われると困‥‥りはしない。嬉しさと恥ずかしさで慌ててしまう事はあるけど。


響君に言ったら慌ててくれるのかな?


好きという言葉も、何度も頭の中では思っても‥‥恥ずかしくてあまり言葉にできないけど‥‥言ってみよう‥かな。


顔を見たら言えなくなっちゃうかもしれないから


「‥響君」


「ん?どうした?」


私は響君の胸に飛び込んでギュッと抱きついた。



「響君、格好いいです。大好き」



言った私が恥ずかしくなって、慌てて家に駆け込んでしまった。




あれ?今日私何がしたかったんだっけ?




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