16.ちゅう


「なぁ、浩二。キスって付き合ってどれくらいでするもんなんだ?」


「おう、今すぐしてこい。今すぐだ」


「最近の浩二、何か口調が男らしいな」


「9割9分5里くらいは響のせいだからな!?」




そんな会話を浩二と繰り広げている昼休み。

あぃ‥美麗は最近白百合と仲良くなったらしく、今日は白百合と一緒に昼飯を食べている。


教室では、たまに宇佐美と話してるのも見かけるようになったな。


4時間目が終わって、俺は事前に聞いていたが白百合が教室に入った瞬間に教室内に緊張が走ったように静かになった。


ヒソヒソと修羅場?みたいな言葉が出ているが、いやそんなの起こらないから。


「美麗ちゃん、行こう」


白百合が声をかけて美麗がこっちを見たので


「行ってらっしゃい」


と笑顔で手を振った。

美麗も笑顔を返してくれた。


「‥うん、行こう。愛ちゃん」


「それじゃあ青羽君、美麗ちゃん借りるわね」


そう言って教室を2人で出ていった。



何でも、白百合的には自分に媚びない美麗が一緒にいて楽なんだと。

んで、美麗的には思った事を何でも言うけどそこに悪意何て一切無い、どこまでも対等に接してくる白百合が好きだと。


ちなみに白百合は俺を青羽君と呼ぶようになったが、これは一応美麗に気を遣ってのもので美麗が名前呼びに慣れたら戻すつもりらしい。


慣れないから早くしてと美麗が急かされた事から、俺と美麗は名前呼びの練習を始めてたりする。






放課後となって帰り道。

梅雨はまだ明けずに雨の日が多く、今日も放課後になる寸前に雨が降ってきた。


雨は嫌いじゃなかったんだが、嫌いになりそう。

なぜなら‥‥手を繋げないんだよ!


「美麗、公園に寄ってもいいか?」


「‥うん、いいよ」


そうして、2人で公園にあるガゼボの椅子に座って手を繋いだ。


「今日で恋人になって1ヶ月だな」


「‥そうだね」


ちなみに美麗と話し合った結果、1ヶ月記念は特に特別な事はしない事にした。






その時に話した事を思い出す。


「もうすぐ1ヶ月だけどお祝いとかするか?」


美麗から借りる恋愛小説では、よく1ヶ月記念とかが出てくるので聞いてみた。


「‥んー‥‥」


美麗は何か考えるような表情をしているが、何となくだけど同じ事を考えてる気がして言ってみる事にした。


「俺はさ、美麗と一緒にいるだけで毎日が記念日だよ」


「!‥うん、私も同じ。今日は響君がこんな事言ってくれて嬉しかったとか」


「ああ、今日は美麗がこんな事してて可愛かったとかな」


「‥全部、記念日になってる」


「これからも、一緒に色んな記念日作っていこうな」


「‥うん。でも毎日お祝いしないといけなくなっちゃうね」


美麗が可笑しそうに笑った。


「お互いの誕生日とか、クリスマスとか、そういう特別な日にお祝いする事にしようか。あっ!でも、一年記念はお祝いしたい‥って気が早いか」


「‥ううん、一年記念楽しみ」


「そうだな」






そんな事を話した。

美麗を見ると、同じことを思い出しているのか目を閉じているが口は綻んでいる。



‥‥美麗の唇



今日、浩二と話したのは昨日見ていたドラマでキスシーンがあったから何となく話題に出しただけだけど、


意識すると目がいってしまう。



「あのさ、美麗」


「‥?」


美麗が目を開けてこっちを見る。


「キス‥‥‥‥していいか?」


「!‥‥‥‥うん」



そっと美麗の頬に手を当てると、少し震えているのが分かった。



俺は頬に当てた手を美麗の頭に持っていき、ゆっくりと撫でた。


「ごめん、ちょっと急ぎすぎた」


すると美麗は首を横に振った。


「‥ううん、私こそ勇気が出なくて‥響君、ちょっと耳をかして」


「?ああ、いいけど」


そう言って美麗に耳を近づけると






チュッ






と、頬に柔らかい感触が‥‥



「‥今は、これが精一杯」



美麗が真っ赤な顔をしてそう言うが、俺は


「きゅー」


と何かよく分からない鳴き声を出しつつ両手の平で顔を覆ってしゃがみ込んでしまった。


「え!?響君?」


「いいか?俺の中では美麗は世界で一番可愛いんだ」


「‥う、うん」


「ここで問題だ。そんな世界で一番可愛い大好きな女の子にほっぺにチュウされたら、俺はどうなるでしょう?」


「‥えっと」






「正解がこれだよっ!」




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