11.たそがれ


はろろー、沢渡浩二だよっ。

え?誰に挨拶してるのかって?ただの脳内での独り言だよん。


それはさておき、響と相沢ちゃんが恋人になってから1週間が経ったんよ。


あっ、相沢ちゃんとは今まで話した事無かったんだけど、響に紹介されて話してみるとすっごくいい子だったから、そこからちゃん付けさせてもらってるんよ。


いやー、初日はそれはもう大変だったにゃー。




一緒に教室に入ってきた響と相沢ちゃんの空気が昨日までと全然違ったから、人前で言うべきかちょっと迷ったけど聞いてみる事にしたんよ。


「仲直りできたみたいねー。むしろ恋人にでもなった?」


って聞いたら響は


「ああ、昨日から付き合う事になった」


と、宣言したんさ。

その瞬間教室内を


「「「「「ええええええええぇぇ!」」」」」


という絶叫が染め上げたね。


俺は響が相沢ちゃんLOVEなの知ってたけど、まあビックリはするよね。


そうしたら縦に並んでる響と相沢ちゃんの席の周りに主に女子が群がっての質問タイムが始まったんだけど、とある女子が


「青羽君、何か弱みでも握られてるんじゃないの?」


なんて聞くから、あちゃー‥‥響怒らないかな?って思って止める準備してたんだけど、事態は見当違いの方にいったね。


「ああ、弱みなら握られてるな」


「えっ!?やっぱり!」




「惚れた弱みをがっつり握られてるよ」




響はそう言って相沢ちゃんに愛おしそうな目を向けた。


その瞬間、教室内の時は止まり

相沢ちゃんは真っ赤になって俯き


教室内を桃色の風が駆け抜けた。






そういえば、今日の体育で響と並んでマラソンしながら話してたんだけど


「学校1のピュアラブカップルの交際は順調かにゃー?」


「はあ?何だそれ?」


「響と相沢ちゃんカップルの最近の呼び名だね。今日も男遊びが激しめだったギャルが、登校中に手を繋ごうとして引っ込めてを何回も繰り返して、結局繋げなかった相沢ちゃんを見て浄化されたとかなんとか」


「は?待て、相沢が手を繋ごうとしてたのか‥‥?」


「らしいよ?」


「俺の馬鹿ぁぁぁぁぁあああ」


響が頭を抱えた。


「あはっ、響ほんとにキャラ変わったよね。退屈だなーとか口癖みたいに言ってたのに」


「退屈してる暇があったら、何をしたら相沢が喜んでくれるか考えるよ」


「ぐぇ、砂糖吐きそう。ごちそうさま」



なんて会話をしたんだけど、ちゃんと手を繋げたかな?






というわけで、屋上の隅で現在俺はここ1週間の事を思い出しながら黄昏中なのです。


いつも響と一緒にいたからちょっぴり寂しい。

夕日が眩しくて目に染みるにゃー。



突然だけど俺には姉が2人と妹が1人いるんよ。

貧乏だったから、小学生の頃は遊びに行ったりもできなくて会話相手は姉か妹だった。

そうしたら口調も女の子っぽくなっていって‥

洋服とかも小学校まで姉のお下がりをたまに着たりしていたら仕草まで少し女の子っぽくなったりして。

だけど心はちゃんと男で。


中学では気持ち悪がられて、はぶられて、友達なんていなかった。


高校では友達を作りたい。

せめてこれは直そうと高校に入るにあたって私だった一人称を必死に俺と言う練習をした。


高校で、最初に響に声をかけた時も結構勇気出したんだよ?

でも、響は俺の事をいつも『普通』に接してくれて‥‥それで入学から数日経ったあの日、思い切って聞いたんよ。


「あのさ、青羽は、わた‥俺の事、気持ち悪いとか思ったりしないの?その‥‥言葉遣いとか」


「いや、全然思わんが。そんな事より学食行こうぜ、腹減ったよ」


「そっか、そうだよね!そんな事よりもね!お腹減ったね!」



『そんな事』響は何気なく言ったんだろうけど、でも俺は涙が出そうなくらいに嬉しかった。


そのままでもいいんだって、初めて俺という人間を肯定された気がした。


それから俺の性格もどんどん明るくなれて‥‥



救われたんだよ、響に。




というわけで、恩返しチャンスかにゃーって事で頑張ってみました。

相沢ちゃんに嫌がらせとかされないように。


響はイケメンランキング、同学年の女子だけで考えると1位だからね。

相沢ちゃんにベタ惚れなのは見てて分かるだろうし、そんな相沢ちゃんに手を出したら響は絶対に許さない。

だから、響に嫌われると同学年の女子の半分近くを敵に回すかもしれないよ?

相沢ちゃんと仲良くなりたいならWelcomeだけど下手な事はしない方がいいよ。という話を俺の持てる女子ネットワークをフル活用して流しておいた。



唯一の被害者といえば白百合ちゃんかにゃ?

白百合ちゃんが響狙いってのは誰しもが知るところだったから周りは手を出せないでいたんだけど、そんな響に白百合ちゃんではない彼女ができたもんだから、白百合ちゃんが告白される姿を結構見かけるようになったねー。


って思ったそばから白百合ちゃんが告白されてる。

まっ、放課後の屋上といえば定番だよねー。

それにしても美人過ぎるってのも考えものだね。ちょっと疲れちゃいそう。


あれ?告白してるのうちのクラスの男子の山下じゃん。

しかも断られたのに近付いてるし。


白百合ちゃんの肩のあたりを掴もうとしている手を掴んで止めて、そのまま山下と肩を組んだ。


「こーら、がっつく男は嫌われるよん。いい男は手を出すんじゃなくて行動で示すのだよ」


YESロリータNOタッチって言うしね‥‥あれ?何か例えが違う気がする。


「えっ!?沢渡?」

「え?沢渡君?」


「はい、撤収。こいつは躾けておくから、じゃーね白百合ちゃん」


そのまま手をヒラヒラと振って、もう片方の手は山下と肩を組んだまま撤収。




山下には


「次、女の子に乱暴してるところ見かけたらコレ潰しちゃうよん」


と、ある部分をポンポンしたら顔を青くして頷いてくれたから、分かってくれたみたいだね。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る