6.でーと(こうはん)
喫茶店を出た俺と相沢は書店に来ていた。
小説がたくさんある区画で相沢は本を選び、普段本を読まない俺は表紙の帯を眺めたりしていたが映画化と書かれたもののタイトルを見ると今日見た映画のものだった。
映画では描かれていない話とかもあるのかなと考えると興味が出てくる。
相沢も見ようと思っていたと言っていたし、読んだのだろうか?
「相沢はいつもどんな本読んでるんだ?」
「‥笑わない?」
「もちろん」
「‥恋愛小説‥‥私なんかが似合わないって分かってる」
「は?何でだ?いいじゃん、恋愛小説。今日見た映画も原作は小説だよな?俺も興味あるし」
「‥ぁ、うん」
「2人してボロボロ泣いちゃったなー。また見にいこうな」
「‥‥うん」
「あっ、それと読み終わったやつで相沢の持ってる恋愛小説、何かお薦め貸してくれない?」
「‥わかった」
「今日見た映画の原作小説も持ってたり?」
「‥する」
相沢が少し得意げな顔をしたのが嬉しくて、そこからはお薦めの本の簡単なあらすじを教えてもらって貸してくれる本を決めたりした。
相沢が本を2冊買って次にゲームセンターに来た。
相沢は普段ゲームセンターには来ないようで、今いるクレーンゲームがたくさんあるコーナーで物珍しそうに景品を見ている。
「この中で一番好きなのってどれだ?」
「‥これ」
相沢が指を差したのはパンダのヌイグルミで、どことなく相沢に似ていて可愛いと思った。
「パンダ好きなの?」
「‥うん」
そんなの、取るしかないじゃねーか!
「絶対取ってやる」
「‥え?悪いからいいよ」
「俺が取りたいの!分かったらほら、横にいって丁度いいとこでストップって言ってくれ!」
その後は右にずれたーとか、ごめんストップって言うの遅すぎた、とか何やかんやあり、結局1500円程かかったがパンダのヌイグルミを無事にゲットできた。
「ほら、相沢」
「‥ありがとう。‥嬉しい」
そう言ってパンダのヌイグルミを胸に抱いて笑う相沢は、誰が何と言おうと可愛かった。
次に、2人でクイズゲームをやってみた。
協力プレイではなくCPU2人を交えたあえての対戦で相沢が毎回1位、俺は2位と3位をうろちょろって感じ。
「相沢つえぇなー」
「‥手、抜いてない?」
「いや、かなりガチなんだが。むしろ相沢に手を抜いて欲しい」
「ふふっ、‥分かった。少し手を抜くね」
クイズゲームも楽しんだのでそろそろ出ようかといったところで、相沢がプリクラを見ているのに気付いた。
「やってみるか?」
俺もやった事ないけど‥
すると、相沢は首を横に振った。
「‥私、可愛くないから」
「他の人が何を言おうが、俺は相沢は可愛いと思う」
「‥節穴だね」
「周りがな」
そう言うと相沢はまた帽子のつばを少し下げた。
照れているのか、怒っているのか、困っているのかは分からないけど、照れてくれてたら嬉しい。
結局プリクラは撮らなかった帰り道、少し暗くなってきたので
「いやじゃなければ家まで送る」
と言ってみたが、ちょっと聞き方がズルかったかもしれない。
「‥いやじゃないけど‥でも」
「いやじゃないなら宜しく!」
そう言って送らせてもらった相沢の家の前で
「また誘ってもいいか?」
と聞いてみた。映画また見に行こうと言ってオッケーは貰ったし大丈夫だよな?
「‥好きにして」
との事なので返事はもちろん
「んじゃ、また誘うな!またな」
「‥うん、またね」
帰り際、相沢は小さな手をふりふりと振ってくれた。
その姿を思い出しながら、家に着いた俺は自分の部屋のベッドの上でバタフライでも泳ぐかのようにジタバタした。
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