第15話 御沢 陸の想い ~ラストチャンスを君に~

~ 御沢 陸 side ~



「本当……素直じゃねーな」



パサッ

お見合い写真を広げてテーブルの上に置く俺。




そこに写っていたのは


深崎 斐音


彼女だった……




どんな反応するだろうと思ったけど


お見合い写真の表紙を広げようともしなかった





「斐音さん以外いるわけねーだろ!?」





俺はナンパしたあの日から


ずっと傍で彼女を見てきた




正直


初めて会ったあの日から


彼女の存在は


俺の心の中にあったのだ




恥ずかしい話


一目惚れしたのが本心だ




わざと意地悪な事を言って


彼女の性格を知ろうと ―――





結局、付き合っていく上で


価値観や育ってきた環境が違うと


色々嫌な部分が見えてくる


良い所なんて


後回しで良い




マスターの所に行くと


彼女が来ている事が分かり


それから


店に行くのが


一番の楽しみだった



お互い冗談を言いあったり


ふざけあったり


当たり前の時間を過ごした




気付けば


俺は


彼女に


初めて会った日よりも


マジ(本気)になっていた




正直


お見合いの話を


俺から持ち掛けようと思った矢先


お見合いの話があった


チャンスだと思った


だけど元々彼女の事は


接待の時に


社長が気に入っていたのだ


印象が凄く良いと褒めていた



今よりも近付ける


顔なじみだったら


尚更


彼女の返事をもらうまで


わざとマスターの所には


行かなかった


お見合いするのに


行く理由なんてない


俺は彼女の行動次第で


動くだけ


彼女を


愛する女性(ひと)を


手離さないように ――――――







「…崎…くん…深崎…くん……深崎くん」



トントン

誰かが私の肩を叩く



「えっ?」

「深崎 斐音くん」

「あっ!は、はい! す、すみません」


「さっきから呼んでいたんだが…大丈夫か? 体調でも悪いのかね? ぼんやりしてないで仕事に集中、集中!」


「すみません…」


「すまないが、これを⚪⚪コーポレーションに持っていってくれないか?」


「えっ? あ、はい」




≪⚪⚪コーポレーション≫



「あー、それから深崎くん、海外出張の話を聞いたのが知らんが仕事に支障がないように」


「海外…出張…?」


「あれ? まだ聞いてないのか? あちらの会社から是非、君にと推薦されているが?」


「推薦……あっ! そ、それでは、これを渡して来ます」


「ああ、頼んだぞ」



私は会社を出る。




「深崎くん…大丈夫か?」




心配そうに呟く社長。




私は取り合えず陸のいる会社に足を運ぶ。




「お疲れ様です。すみません、△△コーポレーションからです。社長から預かった書類をお持ち致しました」


「はい。お疲れ様です。深崎 斐音様ですね。どうぞ御案内致します」


「は、はい」



≪案内?≫



私は社長室に案内された。




「どうぞ入りたまえ」

「はい、失礼致します」



私は中に入る中、そこには社長と陸の姿。





ドキッ

胸が高鳴る。




「あ、あの、こちらを私の会社の社長から預かって参りました」

「ああ、すまないね」

「いいえ、それでは失礼致します」

「ああ」



私はお辞儀をし、社長室を後に出る。




会社に戻ろうと帰っていると私の携帯が鳴った。



「はい」

「斐音さん?」



ドキン

電話口からは陸からと思われる声。



「陸?」



念の為、尋ねる。



「良かった。携帯持って外出されたんですね」

「う、うん」

「今から会えないですか?」

「えっ? でも……勤務中…」


「大丈夫ですよ。社長室に案内されるって事は、きちんとした理由があるって事だし、うちの会社と斐音さんの会社は契約結んであるので、ある方のお陰で」


「えっ?」


「第一、斐音さん、疑問だらけじゃないですか?」




図星だった。


私は陸と待ち合わせをし会う事にした。



仕事の合間に外で会う事はない為、不思議な感じだし、大丈夫だろうか? と思ったけど、でも疑問を残しては仕事にならない。


だけど、解決した所で仕事になるのだろうか?




「ご、ごめん」

「いいえ、別に良いですよ。俺が斐音さん呼び出したので」



煙草に火を付ける陸。



「………………」




何から話そう?


喧嘩した後のような…本当にサヨナラしたような別れ方したから……




「斐音さん」

「はい」

「この間の事は気にしなくて良いから。俺も悪かったと思うし」

「陸は悪くないよ」


「……斐音さんなら、そう言うと思った」

「えっ!?」


「取り合えず、斐音さんが、今、疑問に思った事話してみて。感情的にならないで、ゆっくりで良いから」



「………………」




だけど、どれからどう話せば良いのか分からない



「じゃあ、俺が質問していく。斐音さん、整理ついてなさそうだし」


「………………」


「こっちに来る時、社長に何て言われたの?」

「書類を持って行って欲しいって」


「そうですよね。その時、他に言われた事ありませんでした?」

「えっ!? 海外出張のどうとか……推薦されたとかで……」



スッと私に何かを差し出した。



「ニューヨーク行きのチケットです」



ドキン



「えっ!?」

「一枚は、深崎 斐音さん、あんたのものだ」

「私の? どうして?」

「説明は、当日に話しますよ。だから来てもらわないと困ります」


「………………」


「……もし……来なかったら?」


「契約解除になりかねないでしょうね。あなたが契約結んで繋いで下さってるので……なんて……真実は分かりませんが……後は……本当にお別れになると思います」


「えっ!?」


「俺達」


「………………」



鼻の奥がツンとし涙がこぼれそうになった。



「今は仕事のパートナーとして斐音さんは推薦されているので、人生のパートナーとなれば…また話が違ってきますから」


「………………」


「元々、斐音さんは……俺の人生のパートナーとして含まれた、お見合いだったんです。しかし、あなたは……この後は言わなくても良くお分かりでしょう?」


「………………」




≪……私……馬鹿だ……≫

≪本当なら……人生のパートナーとしても陸とずっと歩めるはずだったんだ……≫



私は下にうつ向く。


涙がこぼれそうになった。



「話は以上です。それじゃ」



陸は去り始める。


私は涙がこぼれた。



「……私…自分の人生を自分で…幸せになるはずだった人生の幕おろして閉じちゃったんだ……」




グイッと抱きしめられた。



「斐音さん……俺は…まだ諦めていないから」



ドキン



「えっ?」



私は顔を上げる。



「…陸…」



私の涙を親指で拭い、瞼にキスをくれた。



ドキン


「…陸……私…」



キスされた。



ドキン


そして、すぐに唇を塞ぎ深いキスをする。



「契約のキスです。深崎 斐音さん、あなたにもう一度だけチャンスをあげます」



ドキン



「但し、ラストチャンスですから、二度はありませんので……それじゃ」







俺は信じるしかなかった


彼女次第で


運命は変わる


お互いの想いが




『ひとつ』




になったら


俺達の人生も変わる








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