第14話 分かれ道~溢れる想い~

親友の美須保と別れ、一幸君からアイツの話を聞いた。


本当は、そのまま帰る予定にしていたんだけど何故か気付けば、いつものバーに足を運んでいた。


すると、陸と入れ違いで私が店に来たみたいで、マスターから陸の状況を聞いた。


心配になり、後を追ったものの辺りを見渡すが陸の姿はなくて…………


偶然に私に気付いた陸が私に声を掛けてくれて…





「ま、待って! 陸」



私は陸の背中に抱きつく。



「…一緒に…連れて行って…」

「…斐音さん…?」

「…お願い…」

「…分かりました…どうぞ…」



タクシーに私を先に乗せタクシーは陸のマンションへと走らせた。


マンションにつき部屋に行く。




「どうぞ。適当に座って下さい。今、コーヒー作ります」


「…うん…」




≪あっ! ついてきちゃったけど≫




『今度は、抱いちゃうかも』




前に言っていた陸の言葉が脳裏を過った。




≪ヤバイ≫

≪私は大丈夫だけど…陸…結構飲んでるみたいだし…意識的にしっかりしてるのかな?≫

≪話は出来る位だし…≫



私は色々と考えてしまった。




「はい、どうぞ」

「あ、うん…ありがとう…あの……」

「何?」

「何もしないって約束して!」


「えっ?」


「いや……えっと…前に……」

「あー、大丈夫ですよ! …多分…」

「えっ!?多分って……」


「冗談ですよ。今日は、そんな事より本当に真面目な話なので……」

「真面目な話?」


「はい。斐音さんにとって俺は…どんな存在なのかな?と思って……」



ドキン



「えっ?」

「実は……転勤の話が……決まっていて……しばらくはこっちには帰って来れないんです」


「えっ!? ……転…勤…?」




一幸君が話していた事が現実となった。



「はい。だから斐音さんの本当の気持ちを聞きたくて…」


「そ、そんなの…気持ちって言われても…ただの飲み友達だよ…」


「……そうですか…」




スッ

私に何かを差し出した。


陸と出会う迄、嫌でも見続けてきた、お見合い写真の表紙だ。



「……これ……」

「俺達が良く見てきたお見合い写真です」


「………………」


「社長の推薦で、その方と結婚前提で、お付き合いする事になって……彼女と一緒に海外に行くようにと言われました」




余りにも立て続けに

一幸君から言われた事が

現実になりすぎて頭と心がついていかない。


何もかも一気に押し寄せる波のように

突然過ぎる……




「………………」



「……す、凄いね……」

「彼女、仕事が出来るみたいで先方の方には既に話がついていて……」


「話って……この事だったんだね……良かったね。じゃあ、準備があるだろうし私は帰るね」




私はこぼれ落ちそうになる涙を堪え立ち上がり玄関へと向かう。



「待てよっ!」



足を止める私。



「あんたは、それで良いのかよっ! 俺が他の女性(ひと)と遠くに行っても! いつ戻るかも分かんねーのに……」


「………………」


「もし、こっちに戻ってきたとしても……あんたとは……もう会う事もないと思う。今日で最後かもしれねーっていうのに…あんたは……」


「……最後……? へぇー、……私よりも相応しい相手だから推薦されたって事でしょう? だったら良いんじゃない?」


「斐音さん…。…でだよ…何でだよ! なあっ! 斐音さんっ! あんたの本当の気持ち言えよっ! 話せよっ! 意地張ってねーでさ!」



振り返る私。



「そ、そんな事、私には関係ないよっ!あんたが何処へ行こうが関係ないっ!」


「…斐音さん…」


「私達は飲み友達。確かにお見合いしたけど…別にどうこうじゃないでしょう?あんたの人生に私はいたらいけないの!」


「そんな理由……何処にあんだよ……俺達が過ごした時間に無駄なんてねーだろ?」


「………………」


「あんたは……俺の隣にいなきゃいけないんだよっ!」


「そ、そんな事言われても知らないわよ! 酔っ払ったら、すぐ脱ぐし酒癖悪いのに…そんな私が陸に相応しいと思うわけ? つりあわないでしょう?」


「……本当…あんたは認めねーんだな……」


「認める事は何もないから!私は陸の事、何とも想ってないし! そういう事で、さよう……」



言い終える前にキスで唇が塞がれた。



「……分かったよ……じゃあ……あんたとは今日限りだな……新しいお見合い相手の人と…海外でも何処でも行くわ。さようなら。斐音さん」




私は部屋を後に出て行った。




このままで良いの?


私の中にアイツはいた


年下なのに


すごい生意気で


ムカつくアイツ




だけど ―――



あなたといる時間は


とても好きだった


私は次々に溢れる涙が止まらず


溢れてくる想いが


流れていくように


初めて…………


大泣きした…………

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