第13話 分かれ道~前兆~
ある日の事だった。
「ごめーん、待った?」
「遅いよー! 美須保から呼び出しといて」
「ごめん、ごめん」
私達は居酒屋で飲んでいた。
「実は私、陸君の友達の一幸君と結婚前提で付き合っているんだ」
「だから見ない間に雰囲気変わったんだね」
「えっ? そう? 分かる?」
「うん。十分分かるよ」
「ほら、婚約指輪」
「本当だ。おめでとう!」
「ありがとう! それよりそっちはどうなの? 陸君と飲みに行ったりしてるんでしょう?」
「飲みに行ったりというより、偶々、同じバーで偶然会って、お互い同じバー利用してる事を知って待ち合わせとか関係なく飲み友達みたいなものだから」
「そうなんだ。だけど、陸君や一幸の会社って条件つきらしいじゃん?」
「そうなんだよね。私もその事を初めて知った時、偶々、お見合いの話があってお互い顔馴染みという事で初対面演じてたけど……」
「あーうん、そうみたいだね。一幸が陸君から聞いたらしくて二人の情報は聞いてるよ。結婚のカウントダウン始まっているのかもね」
「7~8の年齢差あるのに無理、無理!」
「そんな私は結婚前提で付き合っているよ」
「それは…そうだけど……」
「斐音、年齢差なんて関係ないよ! 今ここで前に踏み出して陸君ゲットした方が良いって!」
「…美須保…」
「もし、これ逃したら……多分……結婚は程遠くなると思うよ。うまく話を陸君がしてくれてるから今を至っているんだと思う。本来なら続いてなかったんじゃないかな?」
美須保が言う事は分からなくない。
私も一理あると思った。
私達は色々と話をしながら飲み、美須保は一幸君に迎えに来てもらう。
「久しぶり! 斐音ちゃん」
「久しぶり!一幸君」
「斐音ちゃん、陸の事、頼んだよ」
「えっ?」
「陸…今、結構色々と大変なんだ」
「そうなんだ」
「近いうちに斐音ちゃんに話さなきゃってアイツ言ってたから……多分話してくれると思うけど、アイツ……上司から、転勤もしくは出張の話がきてるんだ」
「えっ!?」
「時間の問題だと思う。アイツの事、考えてあげてくれないかな?」
「……もし…それに応える事が出来なかったら?」
「俺にも分からないけど……多分、他のお見合いの話があるかもしれない……」
「……そうか……」
「アイツの努力を無駄にしないでやって欲しいんだ。アイツの事を信じてやって欲しい。斐音ちゃんが一番の頼りだからアイツを支えてやれるのは斐音ちゃんしかいないと思う」
「斐音、きっと幸せが待っていると思うから……今まで斐音、色々あったじゃん。陸君を信じて同じ人生を歩んで良いと思うよ」
「……分かった。…ありがとう…」
「じゃあね、斐音」
「うん」
「それじゃ」
「うん」
私達は別れた。
その後、私はいつものバーに足を運ぶ。
今日は、そのまま帰る予定にしていたんだけど、
ただならぬ胸騒ぎがしていた為、何故か導かれるように、気付けばいつものバーに来ていた。
「今晩は」
「あれ?斐音ちゃん、いらっしゃい。陸君に会わなかった?」
「えっ? 陸ですか?…やっぱりアイツ……来てたんですね」
「うん。いつになく、かなり酔ってた感じだったけど」
「えっ!?」
私は店を出た。
辺りを見渡す。
「陸?」
タクシーに乗る人影に声を掛ける。
「えっ?」
人違いだった。
「あっ、すみません……アイツ…大丈夫かな…?」
「斐音さん?」
私の名前を呼ぶ声。
ドキッ
振り返る視線の先には陸の姿。
「陸……」
「どうしたんですか?」
「マスターから…いつになく酔ってたって聞いて……」
「心配してくれたんだ」
「だ、誰がっ! さて、マスターの所に行こうっと。それじゃ気を付けて!」
グイッ
私の腕を掴む陸。
ドキン
「話があるんだ」
「話? だったらここで」
向き合う私達。
「出来たらそうしてる……でも…そういう訳にはいかないから」
「…陸…?」
「後で迎えに来るから連絡下さい。連絡先、知ってるだろう?」
「それは…」
「それじゃ」
帰って行く陸。
離れていく後ろ姿が
もっと遠くに行きそうな気がした
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