第9話 お見合い写真
「斐音」
「お母さん、どうしたの?」
仕事から帰ってくると私に声を掛けてくる女性の声。
「お父さんがあなたの所に行けってうるさくて、これ預かってきたわよ」
「ま、また……お見合い?」
「お父さんの知り合いの息子さんらしくて、一流会社の方みたいよ」
「…一流…ていうか…お父さん…一流会社の知り合いにいたんだねー。そっちが驚きなんだけど……」
「あーなんか同窓会で再会して…それから度々、出かけたみたいだし。私のお見合いの為にわざわざ?」
「クスクス…まあ、元々同級生だし会社経営している人の繋がりもあったんじゃないかしら?」
「ふーん…」
「とにかくお父さんも心配なんじゃない? 色々あったから…」
「私はまだ働きたいし。確かに結婚したいとは思うんだけど…」
「だったら…」
「結婚して幸せになれる? うまくいかない事だってあるし。だから正直結婚はしたくないのが本音なんだけど…取り合えず今日は泊まって帰って」
そして、母親が眠りに入った後、私は、お見合いの写真を確認した。
ドキッ
私は胸が大きく跳ねた。
「えっ!?」
私は、一旦閉じ、もう一度広げた。
「………………」
そこに写っていたのは
紛れもなく
いつも顔を合わせていた
彼だったのだから ―――――
「…20歳…だよね…」
ある日、私はいつものバーに足を運ぶ。
「マスター」
「斐音ちゃんいらっしゃい」
「アイツ、まだ来てないんですか?」
「ああ」
「…そうか…」
「何? 残念そうに」
「いや……話があったから…」
「そう?」
「うん」
私は飲んで待つ事にした。
「アイツ……来ないのかな?」
「う~ん…どうかな~?」
私は閉店迄飲み待っていたけど、結局、陸は現れなかった。
次の日も…………
次の日も……
そのまた次の日も……
「…はあぁぁぁ~」
大きい溜め息を吐く中、閉店迄いた私は結局陸に会えずじまい。
お見合いも間近に迫っていた。
「斐音、お見合いの返事を聞かせてくれないか? 先方の方が首を長くして待っていらっしゃるんだ」
父親から連絡が入り催促された。
「相手の方は何て?」
「斐音次第の様子だったぞ」
「…そう…分かった…じゃあ OK の返事をしておいて。ただし、お父さんの気持ちは有り難いし心配するのは分かるけど、もう二度とお見合いの話をしてくる事も、持って来ないで! でないと私は行かないから!」
「分かったよ」
そして当日 ――――
「着物!? お母さん着物なんて辞めてよ!」
「似合っているから良いじゃない?」
そして、陸とお見合い。
両親と先方の方は意気投合。
「それじゃ、後は、お若いお二人で」
「そうですね」
「斐音さん外に出ませんか?」
「は、はい」
私達は外に出た。
「着物なんてどうしたの?」
「お母さんが用意していたみたいで…好きで着てないから」
「良いんじゃねーの? 斐音さん酔っ払って着物も脱いじゃうの?」
「えっ!? そうなる前に酔っ払いません!」
「じゃあ、俺が酔わせてあげようか?」
「あのねー」
クスクス笑う陸。
「もう…こんな時まで…冗談言ってからかうの辞めてよ!」
「斐音さんだから、こういうやり取り出来るんですよ?」
「それは……そうだろうけど」
「着物、似合ってますよ。見慣れない格好なんでドキッとしました」
ドキッ
「えっ?」
「なーんて嘘です。いつもの斐音さんらしくないから調子狂う」
「そんな陸はカッコイイよ」
「えっ!?」
「なーんて嘘!」
「斐音さんっ!」
「お互い様でしょう!? それより、20歳なのに、どうしてお見合いなんてしようと思ったの?」
「うちの会社、早目に結婚相手、もしくは婚約者を見付けておく条件が入社当初から決まっていて……」
「えっ!?」
「奥さんと海外出張なんて当たり前なんです。だから出来る限り仕事が出来る人や高学歴条件で相手を見付けないといけなくて……」
「そうだったんだ」
「今迄、お見合いの話は沢山あったのですが会う事なく全て御断りさせて頂きました。それにまだ20歳だからっていうのもあったし……だけど……今回は斐音さんだったので……」
「私と一緒だね」
「えっ?」
「私も今迄ずっと断っていたんだけど……」
「俺だから、お受けしたと」
「うん…だけど、今回を最後に、お見合いはしないって父親には言ってある」
「そうなんですね。じゃあどうすんの?」
「えっ?」
「このままお付き合いされますか? 深崎 斐音さん」
「陸は?」
「えっ? 俺は別にまだチャンスはあるかな?とは思っているけど……」
「そっか……」
「取り合えず後は俺達次第なので。斐音さん迷っている感じだしうまく言っておきます。斐音さんの今後の事も実の父親に話をしている事が聞けたので。一先ず近いうちに出掛けませんか?」
「えっ?」
「これも何かの縁という事で」
「うん分かった」
私達は出掛ける約束をした。
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