第8話 別々の帰り道。やっぱりあなたがいなければ・・・

いつものバーにより、先に帰る事にした私。


初めて別々に帰る事になった。



その途中の事だった。



「ねえ彼女一人?」

「今、仕事帰り?」



二人の男の人が私に声をかけてきた。



「ねえ、お姉さん飲みに行こうよ」

「いいえ……私はもう。この後、仕上げなきゃならない仕事が残っているので」

「またまた~そんな事言って」

「本当にごめんなさい!」



私は横切る。



グイッと私の腕を掴み引き止められる。



「別に良いじゃん」

「や、やだ、離して…っ! 他当たって下さい!」

「まあまあ、良いじゃん!」



私の肩を抱き寄せ連れて行こうとする。



ドンッと押し退け走り去ると身を隠した。




いつも肩を並べて


カウンターでお酒飲んでいる陸が


隣にいないと


不安で仕方がない


夜の街が怖いと思った瞬間だった




「……陸……」




――・――・――・――・



「斐音さんいないと何かつまんねーし……寂しく感じるんだけど……」


「えっ?」



「ほとんど一緒にいるような感覚だからかな?」


「そうじゃないかな?」


「帰ります。マスター、御勘定して」



――・――・――・――・――・



私は身を隠した場所から帰ろうとした、その時だった。



「斐音…さん?」



ビクッ

私の名前を呼ばれ驚く私。



「…陸…」

「何してんの? 別れてずいぶん時間経ってるのに、まだ帰ってなかったの?」

「…う、うん…ちょっと…久しぶりの夜の街を、たまには歩いて帰ろうかな? と思って……」


「………………」




グイッと腕を掴み抱き寄せた。


ドキンと胸が高鳴る。




「…何かあった?」


「………………」




私はそれに応えるように、陸をぎゅうっと抱きしめ返した。



「…怖…かった……」

「一緒に帰ろう。俺ん所に来な! それとも自分の部屋に帰る? だとしたら送るけど?」



私は首を左右に振る。



抱きしめた体を離し私の肩を抱き寄せ歩く陸。


タクシーを拾い、私を先に乗せ後に続いて陸がタクシーに乗り込む。



「……ごめん……」

「えっ? 別に謝らなくても。気にしないで下さい」


「いつもお世話になりっぱなしだね」

「お陰で慣れたよ。あんたの面倒見んの。まあ、今日は意識しっかりしているみたいだし。訳ありだけど」



頭をポンポンとする陸。



ドキン

胸が大きく跳ねる。



「そうだね」



そして、陸のマンションへと行く。


ネクタイを外しシャツを脱ぎ始める陸。



ドキッ

私の胸が大きく跳ねる。



「ちょ、ちょっと…私いるんだけど!」

「斐音さんじゃないので、これ以上は脱ぎませんよ!」


「………………」


「だけど、今日は斐音さんと会話出来てるのが変な感じです」


「えっ?」


「いつもなら酔っ払って脱いで寝る姿しか見ないから」


「それは……それより陸って話し方コロコロ変わるよね?」

「そうですか?」

「うん。敬語だったり、タメ(同級生)口だったり……コロコロ変わってまるでサイコロだよ」


「サイコロ?」

「だってサイコロは次に何が出るか分からないから」


「確かにそうですね。話し方気になりますか?統一した方が良いですか?」

「ううん、大丈夫」

「コーヒー作ります」

「うん…でも本当いつもキレイだよね? やっぱり彼女いたりして」


「俺、彼女いないって言ったじゃないですか」

「そうだけど、いてもおかしくないルックス…」

「だったら第一候補に斐音さんにしておこうか?そうすれば、俺の特等席はあんたのもの」


「えっ? 結構です! 年の差ありすぎだし」

「7~8歳なんて可愛いもんですよ」

「そうでもないよ!兄妹だよ!兄妹!」

「じゃあ、斐音さんの特等席に俺を第一にしておいて下さい♪」

「えっ!?」

「な~んて」





そして


いつの間にか


私の心には


あなたが


存在しているのでしょうか?









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る