第6話 人生はサイコロ
ある日の仕事帰り、私はいつものバーに寄る。
「もうマスター聞いて下さいよー」
「どうしたの?」
「実家の父親が、お見合いしろ!ってうるさいんですよっ!」
「そうかぁ~大変だね~」
「27だし、多少の焦りは確かにありますよ。だけど、焦り過ぎて失敗なんてしたくないし、バツイチなんて嫌じゃないですか?」
「この際、バツイチも良いんじゃねぇの? 斐音さん脱ぎ魔だし酒癖悪いし。旦那さんも大迷惑で間違いなく離婚だから。お見合いすれば良いじゃん」
ガンっ
グラスを置く私。
「陸っ!! あんたは来て早々茶化すなっ! 馬鹿にするなっ! 大人をからかうなっ!」
「陸君、斐音ちゃんを知り尽くしてるねぇ~」
「もう知り尽くし過ぎて~。斐音さん、結婚歴も離婚歴もギネスになるかもしれないですよ」
私は御沢君の頬を摘まむ(つねる)
「痛いし……」
「その減らず口、マジムカつくっ! 一言多い! このサイコロ馬鹿っ!」
「サイコロ馬鹿って……」
「ふんっ!」
「大体、斐音さんとは初対面が初対面だったから今じゃ毎回の事なんで俺は慣れっこですよ。俺だから良いものの…他の男なら斐音さん傷ついてますよ」
「もう傷ついてるし!」
「えっ? さっきの事で?」
「それ以前の問題だから……」
「斐音さん? でも、俺思うんですけど、人生サイコロみたいな感じじゃないですか?」
「はあぁぁぁっ!? 何が人生サイコロって意味分かんないしっ!」
「だってサイコロって 1~6 迄しかないじゃないですか? 恋愛は駆け引きだけど、仕事も友情も人生サイコロみたいなものだって思うんですよね?個人的な意見ですけど……」
「やっぱりサイコロ馬鹿だね」
私達は騒ぎつつ飲んでいた。
そして―――
「結局…酔い潰れ…また脱ぎ…人の布団で寝ると…」
当たり前になっている光景を実況中継みたいに言う俺。
ドサッ
「本当相変わらず…ちょっと意地悪しようかな~?」
次の日。
「んー…」
目を覚ます私。
ドキッ
目の前に陸の顔。
「きゃああっ!」
ドサッ
ベットから落ちる私。
「朝からどうしたんですか?」
「えっ!? ええっ!? きゃあっ! う、上…ぬ…脱いでるぅぅっ!」
「あ……これ…斐音さんが…」
「ええっ!? う、嘘っ!」
「本当です」
「大胆でしたよ~」
「………………」
≪嘘だっ! だけど覚えてない…≫
「…ごめん……私…本当に……」
≪最低だ……≫
スッ
私の片頬に触れる。
ドキン
「嘘ですよ」
「えっ?」
頬から手が離れる。
「ちょっと意地悪して驚かそうと思って」
「あのねーーっ!」
「斐音さんが悪いんですよ! 俺はあなたの召し使いでも何でもないし面倒見屋じゃありません!」
「………………」
「手数料頂きたい位だけど」
「じゃあ体で……な~んて」
私の両頬をつねる。
「…痛い…」
「冗談にも程があるし! つーか俺だから良いものの普通なら食い付きますよ!」
「…だ、だよね…」
私達は騒いでいた。
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