第4話 外泊
ある日の事だった。
「深崎君、今日の接待に付き合ってもらえないか? 場所は既におさえてある」
突然に言われた接待。
私には遠い縁だと思っていたけど、入社してから同期の人や先輩含む、後輩も寿退社で、みんないなくなっていき、私の部署の女性社員は私含み数人しかいない。
特に、新入社員の出入りは女性社員よりも男性社員がほとんどだ。
「えっ? 私なんかで良いんですか?」
「君しかいないんだ。一番長いからな」
痛い所言われた。
だけど無理もない。
だって、本当に長い私なのだから。
「そうですか……分かりました」
――― 接待 ―――
愛想振り撒いて
正直疲れる
そして ――――
「すみません、お待たせ致しました」
「いいえ」
接待の相手は○○コーポレーションの社長と私達の前に現れたのは御沢さんだった。
飲んで仕事の話をして、周囲に気を使わないといけない。
私の接待の時間は過ぎていく。
そして無事に終わり社長達をタクシーに乗せた。
「お疲れ様でした」
「いいえ。そちらこそ、お疲れ様でした。御沢さんはタクシー良かったんですか?」
「俺は大丈夫です。深崎さんを今からデートに誘います」
「えっ? いやいやデートって…」
「だって全然飲んでる様子なかったし」
「私が飲む訳にはいかないでしょう? 社長達の機嫌損ねないようにしなきゃならないんだし。今後の会社に掛かっているからね。第一、今日急に接待の話を言われたんだから」
「そうだったんですね? 頼りにされているんですね」
「そういうわけではないと思うよ。みんな寿退社して、同期や後輩達に先越され…長く働いてるだけ。恥ずかしい話だよ。気付けば一番長くて27歳。人がいないだけ」
「そんなの関係ないと思いますよ。やっぱり長く働いてる人が一番信頼出来るし、安心して任せられます。俺も、そういう相手(パートナー)がほしいです」
「そう? まあ、無事に終わって何よりだよ。すっごい緊張してたし」
「じゃあ、その緊張から解放されましょう」
そう言うと、私の手を掴み連れて行く。
行った場所は、いつものバーだ。
「深崎さんも常連のバーなら落ち着くでしょう?」
「それは」
私達は店に入り飲む事にした。
しばらくして ――――
カウンターで飲んでいた私達。
カラン
カウンターテーブルに片頬を乗せ、氷と少し飲みかけが入っているグラスを揺らしぼんやり眺める私。
「深崎さん? 酔ったんですか?」
「…うん…多分…でも良く分かんないや」
「帰れますか?」
「大丈夫……多分…」
「多分って…」
「マスター、お勘定して」と、私。
フラフラと体がフラつく中、体を支えながら歩く。
「深崎さん、送ります!」
「大丈夫だって~」
「心配なんで、俺の所に来て下さい。何かあったら遅いですから。気が気じゃないので…マスター、俺のと一緒にお勘定して下さい」
「了解!」
そして会計を済ませタクシーに乗せる。
「…ごめん…」
「いいえ」
私は彼に凭れかかり眠っていた。
そして、御沢さんの部屋につき、私はスーツを脱ぎ始める。
「深崎さんっ! ちょっと何して……」
「……え~っ? なぁ~にぃ~?」
「スーツ脱ぐのは辞めて下さい!」
「スーツ? えー…シワになるから脱ぐの~!」
「駄目です! 俺は、男なんですから」
「じゃあ目を閉じたら?」
「いやいや、そういう問題……ちょ……」
そして私は上下のスーツを脱ぎ、御沢君のベッドに入る。
しばらくして ――――
「……んー…」
目を覚ます私。
「あれ? ……ここ……」
そして自分の姿に驚く中、脱衣場から音がしドアが開く。
「………………」
「えっ? えっ!? 何で? 脱がした? もしかしてヤっちゃった?」
「えっ!? ヤっちゃったってストレート過ぎでしょう? ヤってませんっからっ! 深崎さんがスーツがシワになると言って脱いだんです!」
「嘘!?」
「本当です! 当本人は覚えてないんですね」
「…うん…全く……」
「深崎さん、言っておきますけど、俺、好きでもない女性を抱くわけないでしょう?」
「いや……初対面がナンパだったからあんたならやりかねない!」
「本当に手、出してないですから!」
「………………」
「疑いの眼差し……取り合えずコーヒーでも作ります」
「……うん……」
御沢君は、コーヒーを作る。
「どうぞ」
「ありがとう」
「コーヒーを飲む前にスーツ着て下さい」
「布団にくるまる」
「…そうですか……」
「御沢君、彼女はいないの?」
「いません」
「部屋キレイに片付いているから」
「そういう深崎さんは、彼氏いないんですか?」
「いないよ。いたらここにいないよ」
「まあ、いたら彼氏に迎えに来てもらいますよね?」
「そういう事」
私達は色々話をしていた。
次の日。
「それじゃ、お邪魔しました」
「いいえ」
私は、御沢君の部屋を後に帰るのだった。
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