第2話 常連客

申し遅れました。

私の名前は、深崎 斐音(みさき あやね)27歳。


独身。彼氏はいない。


過去に色々あって、正直、男の人に対するイメージが悪い。


特にナンパする男は大嫌い!




ある日の事だった。




私はいつも利用するバーで一人飲んでいた。

常連客なので、マスターとか顔なじみになっていた。


女性客一人でも入りやすいバーなので、スゴく気に入っている。


勿論、男の人一人で入れるバーなので利用客は半々位ではないだろうか?




「マスター、もう一杯」

「はいよ」



そこへ ―――



「マスターいつもの下さい」

「はいよ」

「いつもここに来んの?」



今来たと思われる男性客が声を掛けてきた。



「そうですけど」



私は振り向く。




「……あっ!」




そこには以前ナンパしてきた男の人の姿があった。



「この前は酒のシャワーをどうも」

「あ、あれは自分が……」

「まあ、ごもっともだけど……」


「………………」


「でも……ごめんなさい……だけど…あんな事言われなかったら私だって…」




カチッ

煙草に火をつける男の人。




「まあ、俺も悪かったし。美味しいお酒の後で不快な思いさせて悪かったな」




トクン……

胸の奥が小さくノックした。




≪意外にイイ奴?≫

≪でも……ナンパだしな≫




「あんた名前は? 俺、御沢 陸(みさわ りく)」



そう言いながら私に名刺を渡す。




≪ここ……私の会社の近くにある一流の会社……≫



「私は、深崎 斐音」



私も一先ず、名刺を渡した。




「仕事でも何でもねーのに名刺交換もどうかと思うけど、この前の事もあったし、ちょっと気になっていたから」


「えっ?」


「男を相当毛嫌いすんのも酒癖悪いのも全てあんたの過去に何があったんだろう……なんて」


「それは……」


「まあ、今話す事でもないから良いけど。それじゃマスター、御勘定して」



「もう帰るの?」


私は尋ねた。



「ああ。明日までに仕上げないといけない仕事があるんで。じゃあな、深崎 斐音さん」



そう言うと店を後に帰って行った。




「マスター、彼、常連客なんですか?」

「陸君は、お父さんと小さい時から一緒に来ていたから」

「そうなんだ」

「お父さんにも良くしてもらっててねー」

「へぇー」



そして、私もしばらくして帰る事にした。







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