第4話 二度目のキス

それから一ヶ月が過ぎたある日の事。


バイトでクタクタだった私は帰り次第、そのまま眠りに入っていた。


「ん…」



ふと目を覚ます私。



ドキーッ


私の隣で眠る男の子の姿に驚くの同時に寝顔の綺麗さに胸が大きく跳ね上がった。





「きゃああっ!」

「ん…」

「だ、誰っ!? ひ、人の部屋で何してるんですかっ!?」


「無用心。鍵は掛けなきゃ駄目だよ~紫原さん」

「えっ!? 今……」


「俺、隣人の優崎 玲二でーす♪」



ドキン


まるで仔犬のような可愛い屈託のない無邪気な笑顔で言われ私の胸が大きく飛び出す勢いで跳ね上がった。




≪ヤバイ!≫



隣人のどうこうよりも笑顔にやられた!

みんなこの笑顔に騙されてる?



私は言葉を失った。




「………………」


「紫原さん?」

「えっ? あ、ごめん……えっと…何だっけ?」

「大丈夫?」

「だ、大丈夫じゃない!」


「………………」


「クスクス……紫原さん、隣人だったんだね。眼鏡と制服とその容姿が何よりも証拠だよね?」

「えっ!? あ、そうだ……昨日バイトでクタクタで眠っちゃってたんだ……」

「まさか隣人同士なんて。しかも同じクラスの同級生」




スッと眼鏡を外される私。



「ちょ……」



ドキン

キスされた。



「ちょ、ちょっと何するの?」

「キスしたかったからキスしただけ」




ニコッと微笑む優崎君に胸が高鳴る。



「これも何かの縁という事で」


「キスしたくなったらとか何かの縁だとか……もうどれだけの女の子を敵にまわすの?」


「まわしていない。逆に寄って来るから」




「………………」



「好きでもないのに駄目だよ。彼女になったら絶対浮気されそう……」


「それは逆に俺だから」


「えっ?」


「俺が…される側だから…」




トクン…


優崎君の何処か寂し気な表情に私の胸が小さくノックした。



「…優崎君…」

「それじゃ部屋に戻りまーす」



パッと無邪気な笑顔に切り替わる優崎君に、また胸が高鳴る。



「またキスしたくなったら来まーす♪ それとも紫原さんからキスしに来る?」

「優崎君っ! からかわないでっ! 第一ファーストキス……」

「今のじゃないよ」

「えっ!?」





カチャ

隣の部屋に繋がるドアが開いた。



「ええっ!?」



イタズラぽい笑顔を見せる優崎君。



「そうだ……!」



私は記憶が蘇る。



「じゃあね~」



≪2回目だ!≫




パタン

ドアが閉まる。



「……2回目……なんて嘘……本当は3回目……君の涙は良く覚えている……彼女は……変わっていない」




俺は、気付いた。

彼女があの時の女の子だと …………





Kiss から始まった


私達の恋?


遠い 遠い昔……


中学の時に


私達は出逢っていた…………


その時から


私達の出逢いは


始まっていたのかもしれない……




そして


恋の扉も


開いていたのかもしれない




だけど ――――



私は


まだ気付いていなかった


彼が


彼との出逢いが


あの時の


彼だったなんて ――――




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