第497話 各地からの来客!

「あら……思ったよりもずっと大きな規模ですわねこれは……!」


「は、は、ははうえー! ひとがいっぱいいるのです!!」


 おっと、聞き覚えのある声がする。

 どうやら賓客が次々に到着しているようだ。


「ようトラッピア。それにアレクス王子。でかくなったなあ!」


「ショート、今日はお招きありがとう。国はハナメデルにまかせて、遊びに来たましたわ。アレクスはハナメデルの血が濃いのかしら。もりもり大きくなってて……どうやら魔法まで使えるみたいで」


「む、むむーっ」


 アレクスは俺を見て、トラッピアの前に立った。

 おっ!

 お母さんを守ろうっていうのか!

 いいぞいいぞ、そういうやる気のある子は大好きだ。


「俺は敵じゃないぞー。お前の名付け親だ。トラッピア。色々な出店があちこちから来てる。楽しんでいってくれよ。良からぬ連中は俺がパトロールしているから問題ない。安心して欲しい」


「ショートが直々にやってくれるならば問題ないでしょうね。お任せしますわ。アレクス」


 アレクスに呼びかける時、優しい声になったな。

 いいお母さんをしている。


「守ってくれてありがとう。母は大丈夫ですわよ。さあ、参りましょう」


「は、はい!」


 テテテテーっと走っていくアレクス。

 うんうん、かわいい。

 それでいて心根はちゃんとした男子。

 将来が楽しみすぎる。


「おとーさーん」


 おっ、将来的にアレクス最大のライバルになりそうなのが来たぞ。

 マドカだ。

 あちこちで遊びまくって、ひとまずは満足したらしい。


「マドカねー、あのねーたくさんあそんでねー。あれ? アレクスのいろがみえる」


「あー、魔力を色で判断してるのか。マドカにも分かるレベルだから、アレクスは本物だな。王子でなければ勇者村に留学させて英才教育したいくらいだ……と、また来客だ!」


 今度は大人数。

 砂漠の王国からだ。


 アブカリフと、たくさんいる奥さんとたくさんいる王子や王女。

 以前よりもちょっと張り詰めてる雰囲気だな。


 それぞれの奥さんと王子王女たちの集まりが、それぞれちょっと距離を取っている。


「やあアブカリフ。収穫祭へようこそ。そちらの継承者決定のバトルロワイヤルはもうすぐ?」


「まさに真っ最中だよ! 誰が生き残り、余の後を継いでくれるのか。今から楽しみだな」


 強いものでなければ生き残れない。

 厳しい土地だからこその厳しいルールと言えよう。


 頑張ってほしい。

 俺は静観するので。

 というか、アブカリフが見込みなしとしてうちに送った王子たち、ニルスもサルナスも傑物なんだが?

 あいつら残ってたら、勝負がもう決まってたぞ。


 いや、砂漠の王国はあくまで、人間のための国だということだろう。

 あいつらがいたら、覇王と怪物が国を支配してしまうもんなあ。


 ニルス辺りは将来、アレクス王子とぶつかり合うことになるだろう。

 グンジツヨイとハジメーノは今は兄弟国となっているが、その関係は恐らく後二十年ほどで破られる。


「世の中はちょいちょい動かしていかないとな」


 この辺りで冷徹な判断をするのが、俺がちょっと神様化してきたなーと思うところだけど。

 おっと、向こうでマドカが幼い王子と王女を誘って遊びに行っているな。

 年若いうちは、複雑な人間関係なんて意味がないものだもんな。


「ま、こっちにいる間は楽しんでくれアブカリフ! いつまでも王様でいると肩が凝るだろ」


「ははは。気遣い痛み入る。ではせいぜい羽根を伸ばさせてもらうとしよう! 行くぞ!」


 彼が声をかけると、砂漠の王族たちがぞろぞろ続く。

 大所帯だなあ。

 俺にはとてもあの数は管理できないよ。


 その他、次々にやってくる世界中の人々。

 黄金帝国の皇帝もやって来て、収穫祭の繁栄っぷりに腰を抜かしかけている。


 海の王国の王たちもやって来て、普段は食べられない山の幸に舌鼓を打つ。

 

 あっ、当たり前みたいな顔をして鍛冶神や海神やユイーツ神がいるじゃないか!

 あいつらが羽を伸ばすのは予想外だった!


 今は人間っぽいガワを被っているが、あんなマネできたんだな……。


 おっと、東の空が一面かき曇る。

 そして雲が割れて、一組のカップルが降りてきた。

 片方は俺に似ている。


「アソート! ナイティア!」


「うむ……」


 アソートが俺に声を掛けられ、複雑な顔をした。

 ナイティアはちょっと嬉しそうに手を振る。

 なんだ、仲良くやってるじゃないか。


「どうよ、最近」


「フレンドリーに話しかけてくるやつだな……。国造りは一年や二年では終わらない。今、溶岩が広がってやっとそれなりの大きさの島になったところだ。冷えた大地に藻類を纏わせ、虫と鳥を呼んだ。彼らが食い、出すものが土となり、新たに植物を生み出す大地を形作っていく……」


「気が遠くなりそうな話だな。だが……ちょっとワクワクしてくるな」


「分かるか」


「分かるー」


 アソート、少しだけ嬉しそうになったな。

 ナイティアがこれを見てニコニコする。


「彼ったら、少しずつ世界ができあがっていくのを見ていつもニヤニヤしてるんですよ……」


「俺も似たような感じだから分かる。少しずつ何かが積み上がり、形になっていくのって楽しいんだよな。じゃあ、二人共、俺が仲間たちと積み上げてきたものの結晶を今日は存分に楽しんでいってくれよ」


 俺はそう告げて、振り返った。

 収穫祭は大盛況だ。

 今まで作り上げてきたものが、ここにある。


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