第491話 俺の甥っ子か!!
車が到着したのは、マンションだ。
いいところに住んでるなあ。
どーれどれ……。
おっ、赤ちゃんの気配を感じるぞ……。
海乃莉のものだけなら、特に分からないと思うんだが、パワースが混じってると微弱ではあるが魔力を持っていることになるからな。
魔力持ちの赤ちゃん、確認!
部屋番号を指定してからマンションのインターフォンに話しかけると、『はい』とパワースの声がした。
完全にこっちの世界の技術を使いこなしているなあ。
「俺だ」
『ショートか!! こちらの世界に来ていたのか……』
「おうおう、赤ちゃんを見に来たぞ!」
「赤ちゃん!」
「ちゃん!」
マドカとシーナがぴょんぴょん跳ねている。
異世界に来ても元気元気。
『お前のとこのチビたちも来てるのか! まあいいや。お義父さんとお義母さんも一緒だろ? 入ってくれ』
ガチャッと鍵が開く。
パワースも本当に丸くなったもんだなあ。
エレベーターに入って上階へ向かう。
このぎゅーんと運ばれる感覚が珍しいらしく、マドカがわあわあ騒いだ。
俺の魔法だと基本的にGを殺してるからな。
原始的な構造だとGの相殺が行われないからこんな感じなのだ。
「ここだぞ!」
父がなんかハイテンションで案内してくれる。
母はマドカと手を繋いでいるので、ニコニコしながら後ろの方。
むしろ、シーナがトテトテトテーッと走っていく。
速い速い。
カトリナがピッタリ後ろについてるから大丈夫か。
オーガのフィジカルなら、赤ちゃんがどれだけ全力で動いても一瞬でフォローに入れるもんな。
俺もいるし。
父がピンポーンと呼び鈴を鳴らしたら、シーナが「おーっ!」と目を輝かせた。
何でも出っ張ったものを押したくなる年頃だもんな。
「こーれ! こーれ!」
「シーナちゃん押したいのかい?」
手をバタバタさせるシーナ。
父が眉を下げて、孫が可愛くて仕方ない顔になった。
シーナを抱っこして、呼び鈴を押させてあげる。
ちょうどパワースが出て、「今開けるよ」と言ったところだったな。
また鳴って、どうやらカメラを確認したらしいパワース。
「ちびが押したのか。まあ、珍しいんだろうな。しょうがねえなあ」
ちょっと笑いながら、向こうから扉が開いた。
「おっ、久しぶりだなパワース。髪切った?」
「おう、久しいなショート。お前全く変わってないな……」
「年を取るという次元を超えた気がするからな……。だが我が家の小さい人々は大きくなったぞ」
「おう、分かる分かる」
パワースが、父に抱っこされたシーナと握手している。
赤ちゃんの扱いが上手くなっている気がする。
マドカが「こーんにーちはー!!」と叫びながら入ってくる。
大変大きい声だったので、向こうで赤ちゃんの「ふぎゃ!」という反応が聞こえた。
これはびっくりしたな。
わいわいと部屋に入っていくと、ベビーベッドに寝転がった赤ちゃんが、カッと目を見開いてこっちを見ている。
「あー、起きちまった。さっき海乃莉がおっぱい飲ませて、落ち着いて寝たとこだったのに」
「ほうほう、これが海乃莉とパワースの赤ちゃんか……。目力なかなか強いな」
「目が大きいだろ? 俺達に似て美形だ」
「まだ分かんねえだろ。海乃莉に似て可愛くなりそうだが。で、男? 女?」
「男の子だぜ」
赤ちゃんは、パワースと海乃莉の髪色を混ぜたような、焦げ茶色の髪をしていた。
光りの反射で、やたらと髪が明るい色に輝くのな。
じーっと俺を見てる。
そしてすぐに興味を失ったらしく、ふいっと目をそらした。
「おしめも替えたし、現状に満足してるから泣かないんだ。合理的だぞうちのガキは」
「パワース、ガキって言わないの。力人(りきと)って名前がちゃんとあるんだから」
「そうだったそうだった」
奥から抗議しながら、海乃莉が出てきた。
おお、なんかしばらく見ない間に、凄く大人っぽくなったなあ。
「ショートくん、久しぶり! カトリナさんも!」
「お久しぶりミノリ~!」
奥様二人で手を取り合って喜んでいる。
マドカがこれを見上げて、ニコニコするのだ。
「マドカもマドカも!」
「あら、マドカちゃんは喋るの上手になったねえ」
しゃがんだ海乃莉が、マドカとペタペタタッチした。
子どもの扱いが上手い!
そんな中、シーナはトトトトトっと走っていって、家の中のボタンみたいな部分を片っ端から押して回っている。
今、我が家で一番自由かも知れん。
「シーナ、こっちこいこっち。おーい」
俺はシーナを追いかけ回す。
するとこの娘は面白がって、「キャーッ」と言いながら走るのだ。
いやあ、賑やか賑やか。
力人くんはベビーベッドの上から、目だけ動かしてこれを追っている。
まだ首が据わってないような赤ちゃんなのに、高い身体能力の片鱗を見せているな。
「情操教育っていうことで、犬を飼おうと思ってて」
海乃莉が犬を飼う!?
そうなると、今度は俺も、うちからトリマルたちを連れてこねばならないようだな。
この世界の動物と、勇者村四天王の対面はなかなか面白いかも知れん。
途中でシーナをキャッチし、ヒョイッと抱き上げた。
シーナがピャーッと声を上げて、バタバタ動いた。
元気元気。
慣れない環境に来たから興奮してるんだろう。
よし、俺の念動魔法でちょっと遊んでやろうじゃないか。
片手間でそう言う事ができるくらいには、俺は魔法に精通しているからな。
ということで、積もる話なんかをしながら、俺はシーナの相手をしてやるのだった。
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