第488話 トリマルの帰還と、四天王再結成

 俺が頭にトリマルを乗せて帰ってきたら、勇者村はちょっとしたお祭り騒ぎになった。


「お帰りトリマル!」


 ということで、ホロロッホー鳥たちが一斉に解放され、トリマルを迎えて踊り回る。

 中には、トリマルがいなくなってから生まれた若鳥もいる。

 彼らはトリマルにオスとして勝負を挑んでは軽くあしらわれたり、メスとして色目を使ったりしている。


「とりまるー!」


 すっかり発音ができるようになったマドカ。

 駆け寄り、トリマルを抱き上げた。


「ホロロー!」


「ひさしぶりだねー!」


 おお、くるくる回っている。

 兄と妹みたいなもんだからな。


「トリマル久しぶりだねえ。ちょっと大きくなった?」


 カトリナがやって来て、マドカからトリマルを受け取る。

 シーナがトリマルを抱っこしたがって「あーうー」とか言っているな。

 トリマルはおもちゃじゃないぞ。お前のお兄ちゃんに当たる鳥だからな。


「ホロホロ~」


「あらら、すりすりしちゃって」


「トリマルにとって、カトリナも馴染みが深いからなあ……。お母さんみたいなもんだろう」


「あら、うちに男の子が!」


 ニコニコするカトリナなのだ。

 そうこうしていたら、勇者村ちびっこ軍団が気づいたぞ!


 バインとギアとダリアとショータがやって来た。

 ちっちゃい連中も、もうちょこちょこ走れるようになってるもんなあ。

 特に、ニーゲルとポチーナの息子ショータは、二歳にもなってないはずなんだがめちゃくしゃ足が達者だな。

 これは獣人の血だろう。


 トリマルに向かってちびたちがわあわあ言うので、カトリナがトリマルを下ろして上げた。


「ホロホロー!」


 トリマルが翼を広げたら、ちびたちがキャーッと盛り上がった。

 そして彼を先頭にして、またバタバタ走っていく。

 うーむ、凄いエネルギーだな。


 トリマルの帰還は、娯楽に飢えている村にとっては大騒ぎをするいい口実になったようだ。

 奥様軍団がガンガンに料理を作りまくり、テーブルに山盛りになる。

 ほどほどのところで、「よし、次は俺が作ろう。奥さんたちも大いに食え! 飲め!」と尊重のパワーを見せつけることになった。


 イノシシステーキをガンガンに焼き上げて、念動魔法で酒を運んでくる。

 男も女もみんなで大騒ぎだ。

 いやあ、楽しい楽しい。


 毎日の変化が少なく、日々を繰り返すことこそが大切な農村にあって、こういうハレの日ってのはとても大事なのだ。

 そうだな、またそのうちに勇者村の五周年祭りをやってもいいかも知れない。

 ちょうど、雨季が終わって乾季になる頃合いがいいだろう。


 うん、そうだ。

 そこでまた、でかい祭りをやろう。

 各国から客を招いたりして、大いに騒ごうじゃないか。


 料理を楽しみ、酒を飲み交わす村のみんなを眺めていたら、三人ほどいないことに気づいた。


「フーとグーとピアがいないな」


「あ、なんかもうすぐ生まれそうな感じがするって言ってたよ」


「なにっ」


「何かあったら、みんなお祭りを放りだして駆けつけるから!」


 ぐっと力こぶを作るカトリナ。

 うーん、うちの奥さんは本当に心強いなあ!


「じゃあ安心だな」


 なんて話しをしていたら……。

 向こうから、すごい勢いでお掃除ロボみたいなやつがぶっ飛んできた。

 なんだなんだ。


『大変です! 大変ですよー!』


「二等兵じゃないか! ってことは、産気づいたな!」


『話しが早い!』


 俺は厨房から、一瞬でダッシュしていた。

 超光速でフーの家まで駆けつける。


 外では、真っ青な顔をしたフーがいた。

 虎人でも顔色ってよく分かるもんだなあ……。


「そ、そ、村長! 産まれる! 俺の子が産まれる! どうしよう!!」


「任せろ!! ツアーッ!」


 俺は気合とともに家の中に飛び込み、出産の手伝いをした。

 必要な道具を全て作り出し、同時進行でお腹の中の赤ちゃんを調べて無事を確認!


「よし、いきめ、ピア!! ひっひっふーだ! 今から情報を脳内に流し込む! そのビジュアル通りやるんだ!」


「わ、わ、わかったー!! んんーっ! ひぃ、ひぃ、ふぅーっ!!」


 頑張ってもらった。

 初産は大変だからな。

 だが、ピアは尻が大きい系女子だった。

 つまり……比較すると結構な安産である。


 スポーンと、虎人と人間の特徴を併せ持った赤ちゃんが飛び出してきた。

 あっ、双子だ!!


 二人とも、ほぎゃあほぎゃあ泣き出す。

 男の子二人ですなあ。


 サササっとお湯で洗い、へその緒や胎盤の処置などをやっていると、フーが部屋に飛び込んできた。


「うおおおー!! 生まれたのか! でかした! 頑張った! ありがとうピア!! ありがとう!!」


 グーも部屋の中に入ってきて、「おおお、孫が……よくぞやってくれたピア!」

 なんか感動してさめざめと泣いている。


「泣いている暇はないぞ! これからおっぱいを飲ませたり、名前をつけたり……やることは幾らでもある! だが安心しろ。既に勇者村奥さんチームが駆けつけている!」


 フーの家の外には、ずらりと頼もしい奥様方の姿があった。


「任せな! 経験者が色々みっちり教えてやるよ!」


 パメラの力強さが実に頼りになりそうだ。


「足りないものも色々あるでしょ? 任せて。小物の準備は得意だから」


 ミーの指先の器用さが唸りを上げるな!


「服が必要でしょう? 一緒に作っていきましょう」


 スーリヤの服飾技術がまた新しい赤ちゃん服を作り上げるのか。


「あの、あの、ピアさんのご飯は作っておきますね」


 ポチーナだって頑張るのだ。


「ということで! どーんと私たちに任せてよ!」


 最後にカトリナが締めを担当する。

 頼れるなあ!


「ピアー!」


 駆けつけてきたのは、ピアの親友であるリタだ。


「リ、リタ……。がんばった」


「頑張った! ピアも赤ちゃんも元気で良かったよー」


 こうして新しい仲間が二人も加わり、勇者村はさらに賑やかになっていくのだ。


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