第463話 急に大人な話になってきたぞ……?
宇宙船村で愛人を作るだって……!?
急に大人な話になってきたぞ。
我が勇者村は表向きは健全な村のはずだが……。
いや、子どもが増える以上はやることはやってるんですが!
砂漠の王国の、たくさんいる后の一人であるシルカ。
彼女は宇宙船村で愛人を探すつもりなのである。
「そういういいんですかね」
「前も言った通り、王はそれを許しているんです。だって、私がこちらに来たということは……恐らく二度と王国の土地を踏むことはないわけですから」
「なんと」
砂漠の王国の王子たちは多いから、彼らの間で王位を巡って争いが起こるだろうと言われている。
砂漠の王アブカリフは、あえて王子たちを争わせ、勝利したものに王位をやる……とか考えているようだ。
だが、誰もがまともに戦える能力を持っているとは限らない。
力、魔法、権力、カリスマ、金、etc……。
そういうのが全然使えないような、凡人でしかない王子というのはいるわけで。
彼らは王位継承権を巡る争いに加われば、即退場だろう。この世からの退場だ。
アブカリフもやられ役は求めていないので、こいつらは廃嫡した上で勇者村に……というのが本当のところなのである。
「なるほどなあ……。ではシルカが今決意したのは」
「私も勇者村に馴染んできましたし……。時は来た、と思いまして」
「強い」
元々、砂漠の王国を守って戦った女戦士だった彼女である。
確かに女豪傑な精神を持っているのは当然と言えよう。
「じゃあ宇宙船村まで連れてくよ、明日」
「ありがとうございます!!」
そういうことになった。
我が村の方針は、産めよ増やせよだからな。
愛人と言っても、第二の夫みたいなもんになるであろう。
問題ない問題ない。
こうして翌日、俺はシルカと王子たちを引き連れて、宇宙船村へ行った。
王子の数は四人ほどいる。
みんなあまり個性が強くない少年であり、勇者村に来て、四天王や様々な異種族と遭遇して圧倒され、イキる気分をへし折られて粛々と暮らしてきた。
農作業のいい感じの戦力になり始めているのだが、彼らはあまりにも禁欲的に働いている。
ここで息抜きをさせてもよかろう。
そのついでに、シルカは愛人を探すわけだ……。
勇者村に来れるような男か。
どんなのだろうなあ……。
「勇者よ……また俺との戦いを望んで現れたようだな!」
「あっ、アベンジャーじゃん。まだいたのかお前」
「旅費もないし行く宛も無いので宇宙船村で生活している……」
「そっかあ」
今はもう新大陸に作り変えられつつある、西方大陸出身の彼。
シルカがアベンジャーを見て、いぶかしげな顔をした。
「ショートさん、彼は一体……?」
「この間、俺と激闘を繰り広げた復讐者、アベンジャーだ。リベンジャー? だがアベンジャーと名乗っているのだ」
「ショートさんと激闘を!?」
驚愕するシルカ。
アベンジャーはニヤリと笑った。
「いい勝負だった。俺と勇者では決着はつかぬ……! 引き分けだった。だが、今回は違うぞ!!」
「ショートさんと互角!? そ、そ、そんな方が世界に存在していたのですか」
一定ジャンルにおいては俺以上なんかゴロゴロいるぞ。
もしかして、戦闘力で俺と互角だと勘違いしてる……?
「よし、勇者よ! またトラクタービーム射的で勝負だ! 店の親父が腰をやって休んでいてな。雇われ店主だから問題なく入れる」
「あっ、そんなことになってたか。じゃあやるかあ」
「ふむ……では私もこの戦いに加わらせてもらいます!! とらくたーびーむとやらが何なのかは分かりませんが……。強い殿方を見極めたい事情がございますので!」
「ほう、姐さん、やる気だな? だが……」
指先で銃の形を作り、ヒュウっとそれを吹くアベンジャー。
「生半可な覚悟で俺と勇者の戦いに首を突っ込んだら……火傷をするぜ?」
俺もお前もど下手くそで店主巻き込んで出禁食らったじゃん。
「ドキッ」
えっ!?
シルカ、君は目が曇っているのではないか……?
いや、まあいい。
射的をやれば全てが分かるだろう。
案外、シルカが一番上手くて俺たちが下手くそで終わる可能性もある……。
俺たちは、トラクタービーム射的に挑んだ。
その結果……。
「ひいーっ!? び、ビームとやらが言うことを聞きません! あーれー!!」
「うおおーっ! 姐さんがビームを信じられないくらい下手くそに暴れさせて逆に持ち上げられた! 手を離せ! 飛び降りるんだ! 俺の腕の中に!!」
「でっ、ですが! それではこのビームとやらが!」
「俺が姐さんを助ける! 勇者がビームを止める! 適材適所ってやつだぜ!!」
「ドキッ」
あっ!
こいつらフラグ立ってるじゃねえか!!
世の中、分からんもんだなあ。
ビームガンを手放して飛び降りるシルカと、これを根性で受け止めるアベンジャー。
このアベンジャー、ただの清掃業の男だったはずなのに、妙にタフだな……!
俺は飛び上がり、ビームガンを叩いて止めたのだった。
その後……。
「その、まだ彼の人となりが分かりませんので、私はアベンジャーさんとしばらく行動をともにしてみます」
「姐さん、あそこで飛び降りれる度胸は大したもんだ。よし、宇宙船村を案内してやるぜ! 俺の庭みたいなもんさ」
「ドキッ」
アベンジャー、ただの畑を手伝っているだけの男だぞ……!
だが、あのよく分からない凄まじい自己肯定感と自信は大したもんだ。
「よし、王子たち。俺が遊ぶところに案内してやる。今日は羽を伸ばせよ」
ということで、俺が王子たちを引率し、宇宙船村を楽しむことにしたのだった。
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