第456話 第一回? 勇者村神様サミット
「ではここに、神様サミット開催を宣言する!」
俺が告げると、村の仲間たちがわ~っと盛り上がった。
会議場代わりに食堂の席を使ってるんだが、ユイーツ神と海神と鍛冶神、それから俺の分身が自我を持ち、神格を有したアソートに奥さん候補の物語の神ナイティア。
後は見たことがない若そうなのが二柱ほどいる。
「新人さん?」
俺が聞くと、その二柱の神はコクコク頷いた。
『牧畜の神パンガーです!』
角を生やし、上半身は裸の男性、下半身は山羊の後ろ半身になっている少年のような見た目の神だ。
肩から紐を掛けて、角で作った笛をぶら下げている。
『私は山の女神マノンです!』
緑色の髪がめちゃくりゃ量が多く、そこから葉っぱや花が顔をのぞかせている。
一見するとボロボロに見えるローブは、生きている植物をそのまま纏っているもののようだ。
髪の奥で、つぶらな瞳がきらっと光っている神様である。
彼らはよろしくお願いします、と頭を下げてくる。
なんと、つい最近自我に目覚めたらしい。
それまで、漠然とした信仰を受けながら曖昧な加護や災いをランダムで振りまく存在だったのだとか。
『なるほど。これはつまり、滅ぼされた神々の力がまたあちこちに固まりつつあるのでしょう。新たな神々がこうして生まれてきますよ』
ユイーツ神が嬉しそうに告げる。
『ですが、彼らは恐らく特殊。話を聞いていますと、偶然今のタイミングで神として目覚めた存在ですね』
『うむうむ。水が岩を穿つように、本来ならば気の遠くなる時間を掛けて神とは成るものですからな。ですが、今はたまたま空席が多い。神となる条件さえ整えば、あちこちに生まれることでしょう。アソート殿のように』
『俺か』
海神に話を振られて、アソートが頷いた。
『今は西方大陸を作りつつある新参のアソートだ。種族から創造しているから、神がどうとかいう余裕がない』
『大変ですよねえ……。主に種族のイメージや設定は私が考えているんですが』
『うむ。ナイティアの豊かなアイデアには助けられている』
『年季が違いますもの』
ナイティアが褒められて嬉しそうだ。
なんだなんだ、いい雰囲気じゃないか。
『しかし、西方大陸はあの広さで二神だけでは大変であろう。神はそろそろ手が空きそう故、手伝いに行こうか』
「鍛治神、宇宙船村はもういいのか! じゃあ心強いな。どうだアソート? お前も俺もよく知ってるだろこの神のことは」
『うむ。手伝ってもらえるならありがたいな……』
アソートも随分柔らかくなったものだ。
ナイティアが近くにいて、話し相手になったり、一緒に仕事をしたりしてちょっと満たされているのだろうな。
「お茶ですー」
カトリナがお茶と茶菓子を差し入れてくれた。
神々がワイワイとこれを飲み、茶菓子を食べる。
捧げ物みたいなもんだし、勇者村でとれる作物から作れば、茶菓子だって神気を帯びる。
『これ、すっごいいいものですねえ!』
『美味しいー!! 山にいると素材の味ばっかりだし』
山の女神がそれ言っちゃいけないんじゃないか。
『今度山で働く人たちに、こういうお菓子を捧げるように言おうかなあ。あ、でも山の獣はこういうの食べられなかったりするし。うーん』
『マノン神。山と里の境界に祠を作らせてですね。そこに捧げ物をさせればいいのですよ』
ここでユイーツ神がアドバイスした。
なるほどなるほど。
山の入口を境界線として、山の神秘性も演出できるし、人間も危険なところまで入っていかなくても、山の女神にお供えができるわけだ。
「頭いいなあ」
『ははは、この仕事やって長いですから』
『ありがとうございます~!! 早速帰ったらやってみます!』
『あ、じゃあ僕! 僕いいですか!』
「はい、牧畜のパンガーくん」
『はい! あのですね、まだ目覚めたてで権能が薄いんで、移動が自分の脚を使うしかないんですよ。でも、牧畜をしているところは世界中にあるじゃないですか。これはどうやったら……』
「それこそ、世界中にパンガーを名指しで崇める祠を作らせるべきだろうな。俺のいた世界に地蔵ってのがあってな……」
お地蔵さんみたいなパンガー像を、牧畜地域のあちこちに立てまくり、これをゲートとしてパンガーは世界を渡り歩くというわけだ。
「こいつは俺が手を貸そう。もうしばらくしたら手が空くから、そしたら声をかける」
『ありがとうございます! なるほど、なるほどー! 流石は勇者様、世界を見てきた方のお考えだあ』
「そんな大したもんでもないけどな!」
わっはっは、とパンガーの肩を叩く俺だった。
神様からヨイショされるのもなんか変な気分だな。
こうして、今後の世界の方向性をざっと決定した。
海神は海神で、小神たちを育成しているんだそうだ。
世界の様々な海で、小さな神々が生まれつつある。
彼らを導く方向性が誤れば、地元から出てきたちっちゃい魔王みたいなのになってしまう。
『わしもなかなか大変ですよ! こちらも手を貸してもらいたいですぞ』
「よっしゃよっしゃ! じゃあパンガーをやって、次は海神だな! そんな感じで行こう!」
俺は今後の予定を決定する。
ユイーツ神がニコニコしながらお茶を飲んだ。
『すぐに私の代わりの神が見つかりそうですねえ。最低でも、ユイーツ神を交代制に戻せそうです。今からお休み三昧の日々が楽しみですよ……』
「最高神が不純なことを言うなあ……。でもまあ、気持ちは分かる」
こうして和やかに終わる、神様サミットなのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます