第407話 アリたろうからの連絡
夜になったら、アリたろうからもがもがと連絡が来た。
「どうしたどうしたアリたろう」
「もがもが」
コルセンターを念のために仕掛けておいたのだが、平和な現代日本だ。
エルダードラゴンが出現するくらいの事件でも起きない限り、俺にお呼びはかからないと思っていた。
だが、そうではなさそうなのに連絡が来るとは何事であろうか。
「もがーもが」
「ほうほう、コアリクイだから、玄関あたりに泊められていたと?」
「もが」
「シャルロッテとカールくんが居間で宴会を? アリたろうはお肉をスムージーにしてもらったのか。良かったなあ。優しい人達っぽいじゃないか」
「もがー!」
ここからアリたろうが大いに説明をしてくれた。
詳しいことは、シャルロッテが奥様方に話すということで、今回の話は俺の胸に留めておくことに。
だが、なかなか身につまされる話だった。
市郎氏のご両親、息子がなかなか結婚しないというか、学生時代から全く女っ気が無かったので心配していたらしい。
市郎氏、真面目なのだが、だからこそ女性とそんな感じになることがなかった。
で、一人のままずーっとここまで来てしまって、ついには異世界勤務になったと。
これでご両親は、もう孫の顔は見られないなと諦めたそうなのだが……。
今回、なんと日本人じゃないお相手と、連れ子でカワイイ、カールくんを連れてきたと。
そりゃあもう、物凄い喜びようだったらしい。
カールくんなど、孫ができたとめちゃくちゃに可愛がられて、戸惑っていたそうな。
「良かったじゃないか。そういや、俺の実家がある地方は少子高齢化がものっすごい勢いで進んでたからな」
シャルロッテとカールくんは大歓迎されたわけだ。
本当に良かった良かった。
「むっ」
おっと、これはシーナが夜に起きた音だな。
おっぱいが欲しいのであろう。
「よし、カトリナが寝ている状態のまま、念動魔法でおっぱいを飲ませよう……ツアーッ」
そっと小さな声でツアーッをしたのである。
シーナはたっぷり飲んだ後、俺に抱っこされてげっぷをした。
その後、おしめを替えて……。
すぐにぷうぷうと寝てしまった。
うちの子たちはものすごく育てやすいのではあるまいか。
「もがもが」
「おっと、まだ繋がってたな。そっちの人間は夜更かしだろ? テレビやらなんやらあるからな。結構遅くまで起きてるんだ。カールくんは寝たろ?」
「もが」
「ああ、眠れない様子だったから、アリたろうが寝かしつけに行ったのか」
「もがー」
「ははあ、しばらく抱きまくらをしていたか。おつかれおつかれ」
コルセンターから手を伸ばして、アリたろうをなでなでした。
ゴワゴワしているが、パジャマごしならばいい感じの感触であろう。
おっと、結界越しなのに、今はワールディアにいるせいか気が抜けていた。
俺の腕がまとった強烈な魔力が、日本の世界法則みたいなのとぶつかり合って凄まじい干渉波が生まれた。
一瞬、世界が揺らいだな。
向こうの世界がバタバタする。
地震か! とか聞こえた。
正確には魔力震だな。
お騒がせしてすまんな。
俺は腕を引っ込めた。
なぜか、市郎氏とシャルロッテが何かを察して、くすくす笑う声がした。
俺だとお分かりになりましたか……。
こうして俺も寝ることにしたのだが……。
日本との扉から、誰かが出てくる気配があった。
誰かはなんとなく分かる。
見に行ってみると、うちの両親がはあはあ、ぜいぜい言っている。
「どうしたんだ」
「翔人! す、すごい地震があってな。いや、何も揺れてないんだ。だが猛烈に何かが揺れている感じが凄くてな。怖くなってこっちに逃げてきてしまった」
「ほんとにね、何が起きたのーっていう感じだったのよ! まるで、世界が震えてるみたいな……」
そこまで言ってから両親、じーっと俺を見る。
「もしかして……翔人なにかした?」
「お前か翔人」
「すまんな……やらかしてしまった」
今後は一層気をつけてあっちの世界に接していかないとな……!
とりあえず、両親はせっかくこっちに来たんだからと我が家に泊まっていく事になった。
カトリナが熟睡中なので、俺が客間に布団を用意したのだ。
こうして、朝になった。
「あれ? お義父さん、お義母さん? いつ来たの!?」
そりゃあカトリナも驚くはずだ。
マドカは目覚めると、大好きな祖父母がいたので、
「ばあばとじいじだ!」
とはしゃぎながら駆け寄っていった。
関わりが多い母の方が、マドカからは優先されているな!
「くっ……負けないぞ」
努力を誓う父なのだった。
そして、カトリナに事情を説明することになる。
「実は昨夜、アリたろうから連絡があってな。シャルロッテとカールくんの事情をな」
「ええーっ!? ショート、先のことを聞いてたの!? ずるい、ずるーい!」
「詳しい事情は話さない約束をしたので、後でシャルロッテから直に聞いてくれ……」
「お預けなの……!?」
カトリナ、上目遣いで見ても教えないぞ。
その後、朝食の席で奥様方に、俺がシャルロッテの状況を知っている旨が伝わったらしい。
その日は一日中、なんとかしてシャルロッテの話を俺から聞き出そうとする彼女たちの攻勢を凌ぐことになったのである。
みんな、本当にこう言う話大好きだね!!
だが俺は!
絶対に口を割らなかったのである!!
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