第391話 勇者村の家屋配置計画

「ブルスト。新しい夫婦が二つ増えた」


「おう。ピアの家は狭いから二人じゃ無理だろ。なので、こっちはこっちでグーから依頼を受けてるんだ」


「さすがグー、動きが早い。もう設計図があったり?」


「ああ。俺の作だからありきたりなデザインではあるがな。ピアの家をまるごと解体して、あっちにくっつけるんだ」


「いいねいいね」


「アムトとリタの家はショートが手伝ってくれるだろ? それまで二人とも実家から通い婚するらしいからよ。夫婦水入らずにしてやりてえじゃねえか」


「分かる。まあ俺はカトリナとくっついても、ブルストがずっと家にいたけどな」


「言うねえ義理の息子!」


 笑うブルストに、バンバン背中を叩かれた。

 わっはっは。


 ということで、早速作業開始だ。

 村の男衆が集まってきて、ピアの家を素早く解体していく。

 そして木材として運んでいくのだが、途中で荷車を繋いだガラドンと合流。


 ガラドンのパワーなら一気に運搬ができるのだ。


「そのうち、荷馬とかは飼ってもいいかも知れねえな。いつまでもガラドンに頼むわけにもいかんだろ」


「ブルスト、そこまで心配はしなくていいぞ。ガラドンはまだ若いヤギだし、自我に目覚めてなんかとんでもない存在になるには、あと十年以上掛かるだろ」


「いつまでもショートに頼ってたらいかんっての、よく言ってるじゃないか」


「そりゃあな。村のみんなが自力でどうにかできるようにしていかないと、俺がいなくなった時に困るだろ」


 そんな話をしていたら、フックがギョッとしてこっちを振り向くのだ。


「村長、いなくなるのか!?」


「いやいや、うちのちびが二人とも成人するまではいるし、カトリナと添い遂げるつもりである。だがご覧のとおり、いつ神様になってもおかしくない状況でな……」


「あー、確かに……。それを考えると、うちのビンも神様になっちまうのかも知れないな」


「ありうる。だが、ビンはもっと自由に……こう、宇宙を飛び回るような銀河的英雄になるのではないか」


「村長の言うことは難しくてよく分からねえなあ……」


 ワールディアにおける普通の人であるフックには、想像もできまい。

 だがそれでいいのだ。

 宇宙から飛来してくる魔王が尽きない話とか、他になんかよく分からんオーバーロードがいるとか、そんな事を普通の村人が知ってもいい事は何もないわけである。


 杞憂と言う言葉があり、空が落ちてくるんじゃないかと心配した中国の人で、ありもしないことを心配することを言うのだが。

 この世界は本当に空が落ちてくるなんて知ってたらいかんでしょ。


「到着だぞー! またショートは難しい話をしてるのか」


「分かりやすく伝えようにも、分かりやすく伝えたらコズミックなホラーが理解できてしまうので危ない話をしていたんだ。だから分かりにくくていいんだぞ」


「??」


 ブルストも分からないようだが、それでいい。

 さて、ここはグーの家。

 これからは、グーの家と、息子のフーと嫁のピアの愛の巣になる。


 新しい資材も持ってきているので、これをみんなでワーッと組み立てていく。

 基本的には木材を組み合わせたログハウスであり、勇者村の家屋はみんなこれ。

 基本構造も全部一緒。


 大きいか小さいかなのだ。


 一時間くらいで取り付けが終わり、そこからは固定作業に入る。

 家具なんかはフーとピアに任せる。



「うちの家が大きくなってくっついちゃった!」


「これからは俺とピアの家だぜ!」


「そっかそっかー! あれ? 後ろをアリたろうがついてきてる! そう言えばうちに泊まってるんだった!」


 そうだったそうだった。

 ピアの家に、アリクイのアリたろうが住み着いているのだった。


「アリたろうはこっちに寝泊まりするといい。向こうは若い夫婦の家だからね」


 グーはとても人間ができている虎人なので、アリたろうを彼の住まいに泊めてあげるようである。

 まあ、ここの若夫婦はアリたろうがいても気にしなさそうではある。


 家が広くなったし、ピアとアリたろうが増えたから、三人と一匹で何をしようなんて話をしているではないか。

 ここは心配はなさそうだ。


「よし、次だ次! 雨が降らないうちに、アムトとリタの家を用意しちまうぞ!」


「いやあ、ついにうちのアムトも独り立ちか……。家が広くなっちまうなあ」


 アキムがヒゲを撫でながら感慨にふけっている。


「アキムの家は五人で暮らしてたもんなあ」


「ええ、そうなんですよ。なんていうか、でかいのが一人いなくなるとおもうと、寂しくなるなあと……。あいつもあんなに立派な結婚式を挙げて。すっかり大人になっちまったんだなあ……」


「アキムもついに分かったみてえだな」


「ブルストのとこは一人娘だから、もっとショックはでかいだろ。俺なら、サーラが嫁に行ったら死んじゃう……」


「分かる」


「村長も分かってくれるか!!」


 親の会話になってしまうのだった!


「だがな、ショートの家のマドカとシーナは俺の孫でもある……。孫が結婚するとこれはこれで嬉しいものがな」


「おおーっ」


 フックとアキムがどよめいた。

 二人が未経験な世界である。


 しかし、マドカに続いてシーナもなのか……!?

 そう言えばそうだ。

 ぐぬぬ、心配事は尽きないなあ……。


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