第390話 ダブル結婚式スタート!
本日は、雨!
「ツアーッ!!」
俺は天に衝撃波を放ち、全ての雲をぶっ飛ばした。
本日は、快晴!!
「すげえ力技で天気を変えたな……!!」
ブルストが目を丸くした後、ニヤリと笑った。
「やろうと思えばいつでもできるんだが、俺は自然のままにしておくのが好きなんだ。だが今回は話が別だろう?」
「そりゃそうだ。花嫁衣装は晴天の下でこそ映えるからな」
全部が全部そうではないだろうが、今回の衣装は特に晴天をイメージしているらしい。
それに、晴れてしまえば会場は広場で行うことができる。
「よっしゃ、晴れたわね! 外でやるわよ! 野郎ども、設備を外に持ち出せー!!」
ヒロイナの掛け声を受けて、勇者村の力自慢たちが椅子を運び出す。
あれっ!?
真っ赤なウエディングドレス姿のピアが混じってるんだが!?
さらに、赤い礼服姿のフーも一緒になって椅子を運んでいる。
この姿には、勇者村の大人たちも笑ってしまった。
だが、この夫婦らしいと言えよう。
ちなみにブルストとパメラの夫婦は、テーブルをまとめて運んでしまい、大荷物はほとんどなくなった。
後からカトリナが、ユイーツ神の像を抱っこしてトコトコ歩いてくるくらいだ。
「カトリナ、その像って大人の男と同じくらいの重さなんだけど」
「そお? 私たちオーガは力持ちだから、これくらいは全然余裕だよ?」
「背丈があたしと同じくらいしか無いから忘れちゃうけど、あんたってオーガだったもんね……」
「おう。カトリナはパワフルだぞー」
「そういう元勇者様は何もしなかったわけね? まあ、空を晴らしたけど」
「十分だよねー、ショート」
そんなやり取りをしつつ、ヒロイナは広場の中心へ。
「はいはい! 始めるわよ! 気が早い夫婦が、紹介する前に飛び出してきちゃったけど!」
ドッと笑う一同。
フーとピアはさっぱり分かってない顔をしているな。
天然な夫婦である。
「あのー、俺たちは」
「私たちは出てきていいんですか?」
「ええ。出てきて出てきて! やるわよやるわよー! はい! 好天に恵まれ……いいえ、好天を呼び寄せて、ここに聖なるユイーツ神の名の元で、二組の夫婦が生まれます! みんな、拍手!」
巻き起こる拍手。
おずおずとやって来る、アムトとリタ。
二人は青い礼服と青いドレスだな。
赤と青か!
なるほど、それぞれのカップルらしい!
「アムト、いいぞー!」
「リタちゃんも可愛らしいわよー!」
「フー、立派になって……! ピアさんもよく似合っている」
保護者たちも盛り上がっているようだ。
「前に来なさい」
二組の夫婦が進み出る。
「では、誓いの言葉を!」
ユイーツ神の結婚式、割りと毎回形式が違うよな。
世界各地の宗教を取り入れているので、無数の形式が存在しているんだそうだ。
なにげにいい加減なんだな!
まあ、あのユイーツ神のことだ。
そこまでこだわりというものは無いのだろう。
二組がもにゃもにゃーとそれぞれの言葉で誓いを述べ、そしてなんか、流れでキスをした。
うおおおーっと盛り上がる俺たち。
そうそう、結婚式はこういうのでもいいんだよ。
めでたいイベントにかこつけて、みんなで大騒ぎするものだからな。
祭りだ、祭り。
わあわあと盛り上がる中、お料理チームが厨房にダッシュする。
これからイベントのお料理を作るのだ。
後片付けは明日に回して、今日はみんなでひたすら飲み食いするのだ。
酒もバンバン出るぞ。
料理に関しては、朝のうちに仕込んであった。
要は、式は火をかけっぱなしで行われたのである。
あとは火を止めて盛り付けるだけ。
食べ物を傷ませないためには、常に調理中ならいいのだ!
まあ屁理屈だけどな。
勇者村はとにかく、保存食以外は傷みやすい。
今日中に料理を食い切るぞ!
「きたきたきたー!! うち、これが一番楽しみだったのー!!」
赤いドレスの新婦が、大喜びで席につく。
日本だと、結婚披露宴の新郎新婦なんか食事があまりできないものだけど、勇者村ではそんな慣例無いからな。
むしろ、新郎新婦なら上げ膳据え膳でひたすら食っていればいいのだ。
うちの村には、ゴーレムたちという食事をせずにサーブし続けられる人材がいるからな。
こうして、式は割りと速攻で終わり、食事タイムとなった。
みんなワイワイガヤガヤ騒ぎながら、飲んで食う。
シルカの三人の子どもたちは、和気あいあいとした宴会が珍しいようで、目を見開いてキョロキョロしている。
いつもの食事と感じが違うものな。
だが、そこは俺とカトリナとマドカとシーナ、フックとミーとビンとギアが放ってはおかない。
二家族でサンドイッチして、話しかけては料理を勧め、ちびっこたちがご飯に飽きたら、マドカとビンが遊びに誘っていく。
完璧な二段構えだ。
「いいんですか? あの人たちの結婚式だって言うのに、わたしたちに構ってもらっちゃって」
「いいんだよ。結婚式はお祭りだ。あの四人は、確かに今日は村の主役だろう。だが、それ以外の俺たちが主役になっちゃいけないって決まりはない。それにちびっこたちは、ずーっと世界の主人公なんだぞ?」
「そうですね!」
「そうそう!」
表情を明るくしたシルカに、カトリナも笑顔を返した。
こうして、結婚式後の大騒ぎは夜更けまで続くのであった。
「赤ちゃんがいるとお酒を飲めないのはちょっとストレス……!」
「子どもが乳離れしたら、たくさん飲もうね!」
ミーとカトリナが誓い合っている……!
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