第380話 サウナ談義し、一旦帰国。留学の話

 アブカリフとともに、サウナで語らう。

 飲み物まで用意されてて、至れり尽くせりではないか。

 流石王族。


「なるほど。ショート殿の身の回りも一段落ついたということで、世界を巡っているわけだね」


「おう。知ってる奴の顔を見て回ろうと思ってな。この後は海の王国でザザーン王を見てから、宇宙船村にでも立ち寄ろうかと」


「世界を巡ったというのに、ショート殿が親しくしている国というのは存外少ないものだな」


「そんなもんだろう。魔王大戦中は一ところにのんびりしてたら、たちまち世界が食い尽くされる事態だったからな」


「それもそうか。だが、そのショート殿の頑張りがあったからこそ、我らはこうして平和な時代を謳歌できている。いつまで続くかは分からないが、長く維持していきたいものだ」


「そうだなー。できるだけ協力はするが、基本的に現地の人の頑張り次第だ。頑張ってほしい」


「ああ、頑張ろう」


 そう言う話になった。

 ここからは、お互いの子どもに関する話題だ。


 アブカリフはたくさん子どもがいるので、隅々まで目が届いているのだろうか?

 うちなんか、マドカ一人で大変だったのにシーナも増えて、毎日大騒ぎだからな。

 ……いや、シーナは存外おとなしいので大騒ぎではないな。


「ところで……」


「なんだ、裸でにじり寄ってくるんじゃない」


「ショート殿の土地にだな、我が子を留学させてやりたいと思っているのだがな」


「砂漠の王国の子どもかあ。まあ、うちにはここから移住した親子がいるからな。問題ないだろう。砂漠の王国よりもずっと湿気が多いからな。そこだけが注意点だ。で、誰が来るんだ?」


「そうだな。第四夫人が子どもたちの引率として一緒に行くことになる」


「それは問題ないのか?」


「シルカは第四と言え、平民の出だからな。生まれも砂漠の王国ではない。他の夫人たちもシルカへの対応は困るところがあるようだ。地位では下位だが、夫人としての順番は第四だ」


「あ、つまりそのシルカさんが気を遣って、外に仕事しに行くわけか?」


「そうなるな。本当に他人に気を遣う女だ。そこが良いのだがね」


「のろけるなあおい」


 肘で小突いたら、アブカリフはニヤニヤした。


「余はな、十人の妻全員を等しく愛している。さすがにこれ以上増やす気は無いが……」


「人間関係の管理だけでも大変だもんな。ハーレムってのも大変だ」


「ああ。並の度量ではやっていられぬ。心が休まる暇が無いぞ」


 まあ、俺はカトリナ一筋だからな!


「ということで、頼めるか」


「よし来た。引き受けたぞ」


 そういうことになった。

 シルカと子どもたちは、俺が勇者村に戻り次第、迎え入れよう。


 こうして俺は、サウナから出るなり猛スピードで村へと帰ることになった。

 一瞬で到着だ。


「あらショート。何日かいなくなると思ってたけれど、早かったねえ」


 シーナを抱っこしたカトリナが、すぐに迎えてくれた。


「おう。あのな、砂漠の王国から留学生を迎えることになった。とは言っても、みんなこーんなちっちゃい子どもたちが三人ばかりだが」


「それは賑やかになるねえ」


 カトリナがニコニコした。

 さて、早速彼らとの人間関係を築いてもらう家族に、依頼をせねばならない。


 勇者村に移住してきた三家族目。

 それが、アキムとスーリヤの夫婦だ。


 アキム、スーリヤ、長男のアムトはもう成人しており、近いうちに教会のリタと結婚するだろう。

 そうしたら新しく家を分けないとな。

 で、次男のルアブはまだ子どもだが、必死に大人になろうとしている。


 長女のサーラはまだ三歳だが、マドカのいいお姉ちゃん役をやってくれている。


「ってことでお願いできる?」


「ひええええ、第四王妃様かよ!? とんでもない方がいらっしゃるんじゃないか!」


「シルカさんは平民出だと聞いてるぞ?」


「そりゃあそうだけどなあ……。王に嫁いだ以上、俺たちとは立場が違うんだよ。まあ、勇者村ならもう関係ないだろうけどさあ」


 アキムはその辺、気が小さいところがあるよな。


「まあまあ、子どもたちが増えるのは結構なことではないですか。どこに住まわれるんです? 家を建てるんですか?」


「そうなるな。ゲストハウスを作る。王国から来た留学生たちは、適当に暮らさせてるだろ? だが今回は砂漠の王アブカリフ直々の願いだからな。きちんともてなしてやるつもりだ。その上で勇者村に馴染んでもらう」


「いいですね。では我が家に近いところに建てて下されば」


「そうなるな」


「仕方ねえなあ……。俺も手伝うよ。ブルストが中心になって作るんだろ?」


「そうなるなー」


 そうなった。


「家を建てるのも半年振りくらいか? 腕が鳴るぜ!」


「あぶあー!!」


「おう、バイン! そこでしっかり見てろよ。お前にも建築の技を叩き込んでやるあからな!」


「あぶあぶ!」


「あっはっは、バインが興奮してるねー! お父さんの仕事、ちゃんと見ていきなよ」


「んば!」


 ブルスト、パメラ、バインの一家でやって来たな。

 ブルストはオーガでカトリナの父親だったんだが、ミノタウロスのパメラと再婚した。

 この世界のミノタウロスは、牛の頭蓋骨を加工して被る風習があるんで、牛の頭の巨人だと思われたりしてたわけだ。


 で、二人の愛の結晶たるバインは、俺にとっての義弟に当たるんだが……。


「バイン、角が立派になってきたな」


「んお?」


 赤ちゃんをそろそろ卒業という年頃のバイン。

 オーガの角よりも、ちょっとミノタウロス寄りの角だなー。


「よーし、それじゃあブルスト! アキム! いっちょ、ゲストハウス建設を始めようか!」


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