第371話 ミーのとこで先に生まれた!
ミーが産気づいた!
きたーっ!!
ポチーナとショータに続く、赤ちゃんラッシュ第二弾だ。
きっと呼び水になって、カトリナのお腹の子も出てくるだろうなーと思う俺である。
何かあれば呼ばれるであろうから、俺はまったりと生まれるをの待つ。
フックが不安げにうろうろしている。
「落ち着くのだフック……」
「いやさ、二回目になっても慣れないよな。あー、心配だ心配だ……」
「心配は今しかできないもんな。いつでも俺が助けに入れるように構えているぞ、ちなみに俺に助けられると祝福されるから大変なことになる」
「大変なこと……!?」
「なんか生まれつき宿命とか運命みたいなものを得ることになる」
「うわあ、いやだなあ! ……ってことはもしかしてビンは」
「今気づいたか。済まんな……! すっごい祝福を受けて何かものすごい宿命を背負った子になった」
「あー……それであそこまで出来がいいんだな。俺の子どもなのに、なんであんな凄いのが生まれたんだって思ってたら……」
「あの頃は俺も自分の力に無自覚だったからなあ。ビンとうちの子とショータが祝福を受けた感じになってるな」
「ショータは、まあ仕方ないよな。村長にあやかった名前を付けようって気持ち分かるもの。それで祝福を受けちゃうのはもう通り魔だよ」
「わっはっは! 祝福の通り魔だー」
すっかり和やかになってしまった。
そうこうしていると、オギャーッ!!という物凄く大きな泣き声が聞こえてきた。
このパワフルさは……。
「生まれたー!」
フックが家の中に飛び込んでいく。
「男の子だー!!」
「おとこのこだー!」
フックの叫びを真似して、どこからかビンもやって来て叫んだ。
「おお、ビンは心配してうろうろしてなかったのか」
「あのね、おとうとがね、おなかのなかにいるのはしってたんだよ」
「知ってたのか!」
「ママもげんきでねー、おとうともげんきでねー。だからぜんぜんしんぱいしてなかった!」
「驚くべき念動力の力!」
ビンは念動魔法に関して、俺を凌ぐエキスパートである。
謎の手段で母体と弟の安全を察知していたというわけだ。
フックが赤ちゃんを抱っこして出てきた。
「ビン! 見ろ! 弟だぞ!」
「はじめまして!」
弟への挨拶がはじめましてってのは凄いな。
そしてこれで、フックとミーの子は男の子二人ということになるんだな。
我が家はどうだろう?
転生者が入り込もうとしてたのは男だったから、多分男の子が生まれるんだと思うのだが……。
男子人口が増えるな。
ということは将来の労働力が増すということでもある!
男手が増えると、開拓なんかもやりやすくなっていくからな。
女手が増えると、村の環境維持がやりやすくなる。
つまりどっちが増えてもいいことばかりということだ。
大事なのはバランスである。
フックの次男が、ほぎゃあーと泣いている。
元気元気。
そして丸々としていて大きい。
勇者村の栄養分をたっぷり蓄えたわがままボディだな。
きっと活発な子に育つであろう。
「男の子かー。うちはどうなんだろうねえ。なんだかね、あの子が生まれたのに刺激を受けて、うちの子ももう生まれそうって気がする」
カトリナが隣に来て、そんな事を言う。
「もうすぐ生まれそう?」
「多分。泣き声聞いて、もぞもぞってしてる。お腹の中なのに自己主張が凄い子だよー」
「マドカみたいにめちゃくちゃ元気な子どもが生まれそうだ」
「んー?」
自分が呼ばれたと思ったのか、マドカが顔を出した。
そしてすぐに赤ちゃんに気付くと、パタパタ走っていってしまう。
「あかちゃんね! ちっちゃいねー」
「おっぱいのんでおっきくなるんだよ」
「おっぱいいっぱいのむといいねー」
マドカとビンが、赤ちゃんを前におしゃべり中。
自分たちが通ってきた道を、このちっちゃいのも通ってくるであろうと、語りかけたりしているようである。
心温まる光景だなあ。
ビンは弟の誕生にも比較的クールというか冷静だが、マドカはどうだろうな。
弟か妹が生まれて、どう反応するだろうか?
俺が聞いた話だと、年の近い兄弟は下が生まれると、上としては愛情を取られたと思って反発したりするらしいが……。
マドカはそこまで、カトリナにべったりではないしな。
村人みんなが家族みたいな勇者村なら、その辺りの心配は少ないかも知れない。
「まおもねー、おねえちゃんになるの」
「マドカもだよねー。いっしょにがんばろう!」
「がんばろう!」
ビンとマドカでエールを送り合っているではないか。
心温まる光景だなあ。
「ショート、さっきからすごくニコニコしてる。ちっちゃい子たちがやるぞーってなってるの、可愛いよねえ」
「ああ、めちゃくちゃ可愛い」
「あっ、新しい可愛いのが……なんだかこう……外に出てきたがってるみたい」
「なにいっ」
陣痛が始まったらしい。
連鎖して生まれてくるのか!?
「ヒロイナ! もうひと仕事頼んでいいか?」
「まさか来たわけ!? やるわよ。ほら、カトリナ運んであげなさい! おっしゃ、二人目行くわよー!!」
腕まくりするヒロイナが心強い。
そんなわけで、我が家のニューカマーが誕生することになるのである。
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