第304話 続・ダリアちゃんのおもちゃ
ガラガラと鳴るおもちゃが完成した。
紐がついており、ダリアの腕力が増したときには、ぶん投げて遊べる機構も装備してある。
さらには角が丸められており、安全。
見た目は棒がついた木魚みたいだな。
「あら可愛いじゃない! ほらほらダリアー。おじちゃんたちがおもちゃを作ってくれたよー」
ガラガラ、コロコロと鳴るおもちゃ。
ダリアはこれを、目を見開いてガン見している。
「気に入ったみたい」
「音が鳴るものに反応してるんだな」
まだまだちっちゃい赤ん坊なので、好き嫌いとかそういうのは分からないだろう。
だが、こういう分かりやすいおもちゃがあると、赤ちゃんの気を引きやすくなるのでとてもいい。
この後に生まれてくる赤ちゃんたちにも、受け継がれていくものであろうしな。
この他に、積み木などを作成したのである。
これはまだまだダリアには早いな。
マドカとサーラとビンに与えたところ。
「おしろつくろ!」
「おしろ?」
「おしろはねー、こうゆうのなんだよ」
お城を見たことがないサーラに、ビンが積み木を積み上げ、お城レクチャーを開始している。
その横に、いそいそと建築学の魔本が現れ、お城のページを開いて解説を始めた。
なんと優れた教育環境!
なお、マドカは独自の道を行くつもりか、積み木を縦にどんどん積み上げていき、がらがらと崩してはキャッキャッと笑っている。
年上のお兄さんお姉さんが遊んでいるのを、ダリアがガン見し始めた。
「あら、やっぱりダリアもあっちに混ざりたいのかもねえ。でも、それはもうちょっと大きくなったらね」
「うむ。ダリアはちっちゃいからな」
未熟児として産まれたダリアだが、おっぱいをのんですくすく育ち、髪の毛も生え揃ってきた。
いや、生え揃うの早くない? とは思うが、ヒロイナ譲りのプラチナブロンドである。
目の色は茶色と青が混じっているので、フォスの遺伝子も受け継いでいるな。
そんなダリアの眼下を、アリたろうに引っ張られてバインが通過していった。
未だに自ら動く気はないバイン!
いや、腕力だけで割と自由に移動したり、地面を蹴って跳ぶように移動したりしてるのは見かけている。
省エネ派かな?
「あーうー!!」
おっと、積み木にバイン参戦!
両手に積み木を握りしめ、ガンガン打ち鳴らして謎の雄叫びをあげている。
これぞ赤ちゃんムーブ!!
勇者村は結構しっかりした赤ちゃんが多かったのだが、バインは期待される通りの赤ちゃんをバッチリやってくれるので、見ててちょっとホッとする。
あいつは人生をのんびり進んでいっているな。
大人物になる予感がする。
ダリアは彼らの様子を、じーっと見つめている。
もうちょっとすると、羨ましいという感情が生まれてくるのかも知れない。
ヒロイナは、赤ちゃん軍団がわいわいと遊んでいる傍に腰掛け、ダリアが彼らをガン見しやすいようにしてあげている。
うむ、じーっとじーっと見ているな。
ダリアは本当にひたすら注視する子である。
「あー」
バインが積み木の一つをひょいっと持ち上げ、ダリアに差し出した。
ダリアがじーっと見る。
口を何やらパクパクさせた。
「おー」
バインが積み木をおろした。
まだ意思疎通は成立しないよなー。
そうこうしていると、ダリアに気づいた赤ちゃん軍団がわーっと寄ってきた。
ビンとサーラはもう赤ちゃん卒業だな!
マドカはもうちょっとか。
「あかちゃん!」
「ちっちゃねー」
ビンがダリアを覗き込み、サーラは自分よりもずっとちっちゃい赤ちゃんが可愛くて仕方ないようだ。
勇者村で一番ちびっこだったもんな。
バインでかいし。
マドカはこの二人よりも、ダリアに馴染んでいる。
いつもトテトテと村の中を冒険して回っているからな。
最近では自立心が旺盛になってきて、兄貴分のトリマルに見守られながらあちこちに顔を出しているのだ。
無論、教会にだってやって来る。
ということで、ダリアと会う機会も多いようだ。
「だりや、おっきねー」
「ほう、ダリアが大きくなっているのか」
「おっきよ!」
日々ダリアを観察しているらしいマドカの証言である。
間違いあるまい。
ヒロイナも嬉しそうに顔を綻ばせる。
順調に育っているようだ。
「早く積み木で遊べるようになるといいな。あとはガラガラもあるし、このガラガラは投げて引き戻して遊んだりもできるからな」
「ねえ、思ったんだけどやっぱり、このガラガラって多機能過ぎじゃない?」
「……俺もちょっと思った。作ってる現場で盛り上がりすぎてしまってな」
何の話題で盛り上がったのかは割愛させていただこう。
赤ちゃんフィーバーで沸く勇者村だが、それは何も人に限った話ではない。
ホロロッホー鳥は常に赤ちゃんフィーバーで、ヒヨコたちが村の中をよちよち歩いているし、昨年の赤ちゃんだったヤギベイビーはみんな大きくなって、立派に草をもりもり食っている。
特にガラドンがでかい。
もう大人の牡山羊と変わらないでかさがある。
さらにまだまだ育っているのだから、最終的にはヘラジカくらいになるのではないかと俺は睨んでいるのだ。
そんなガラドンが、赤ちゃん軍団の遊び場を覗きに来て、めえめえと鳴くのである。
ちびっこたちはおもちゃを放り出し、ガラドンにしがみついて遊びだす。
これをダリアはじーっと見ているのだった。
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