スローライフ四年目
第301話 平和な四年目の始まり
『ぐはははは! 外宇宙まで来てみればこんな星が! この宇宙の魔王の気配がするわ! ここならば我が根付くことも容易かろう!!』
「全部喋り終わるまで待ったのでそろそろいいか? デッドエンドインフェルノパーンチ!!」
『な、なんだおまウグワーッ!!』
外宇宙からやって来た魔王は塵になったよ!
俺は再び勇者村に戻ってくる。
四年目のスローライフ生活は、いつものように平和に始まった。
年が変わると、みんな一斉に年齢が一歳増える。
ワールディアはそういうルールだ。
だから年末に生まれた子なんか、生まれたばかりなのにいきなり一歳になる。
そういうのは大変だろうな。
「おとたーん!!」
食堂からマドカが手を振っている。
「マドカー!」
俺も手を振り返しながら、村に着陸。
そしてマドカに向けて、質問を放った。
「マドカは今日で?」
「にちゃい!!」
「二歳えらい!」
「わー!」
マドカがバンザイした。
バインは一歳だし、マドカより半年先輩のサーラは三歳だし、もうちょっと先に生まれているビンも三歳だ。
カールくんとルアブは七歳になり、リタとピアが十五歳でアムトが十六歳か。
勇者村の若者たちが大人に近づいていく。
というかリタとピアは成人じゃないか。
「結婚しよう!!」
虎人のフーが鼻息も荒く走ってきて、キョロキョロした。
「飯時だというのにピアがいない!! 大事件だ!」
「スーリヤもいないだろ。多分二人で釣りに行ってる。おかず捕りに時間が掛かってるんだろう」
俺の推測通りだった。
二人ともホクホク顔だ。大漁だもんな。
すぐさま魚は焼き始められて、焼けた順から食卓に供されることとなった。
「ピア! 結婚してくれ!!」
「まだご飯の前だよ! 待って!!」
「お、おう」
飯の前に愛の言葉を囁いても、ピアには届かんな。
色気より食い気なのだ。
捕れたての川魚を食べつつ、今年の方針について話すことにする。
「みんなのお陰で、我が勇者村も四年目を迎えた。今年はどうしていこうか、という話なんだが」
「割と今のままで満足だよ」
フックから現状維持案が飛び出してきた。
若いのに保守的だな……!
いや、ビンという子どももいるし、今年はミーが赤ちゃん産むしな。
「俺もそうかな。我が家はこのままでもいい。たまに宇宙船村に遊びに行かせてくれれば……いてて!」
アキムがちょっと本音を口にして、スーリヤに尻をつねられている。
宇宙船村はほどほどにな。
「醸造所では、醸造室と発酵室にあと一人ずつ欲しいところです。ブルストさんが大工仕事も兼務しますから、専任がいると助かります」
クロロックからは現実的な意見である。
「それなら、その、畑仕事ももう少し人がいると……。畑を広げて食べ物もふやしたいです」
シャルロッテも増員希望か。
畑作は、フーとグーの虎人親子がかなりいい働きをしてくれているが、勇者村の畑はそれなりに広い。
手が完全に行き届かない部分も出てくる。
稲作も再開すると、さらに人手が足りなくなるしな。
宇宙船村で、人柄が良さそうなのを二、三人スカウトしてこよう。
村のちびっこたちがもうちょっと大きくなれば、戦力としてやっていけるだろうしな。
「すると、開拓をしていかんとな。勇者村は大きくなったが、それでも人を入れるとなると手狭だ。家を増やさねばならんし、畑も増やさないといかん。人を多く養うなら米が収量が多くていいよな」
おお、ブルストの説得力ある発言だ。
「ああ。開拓は今からやっていこう。で、畑というか田を増やすということだな。後は、肥溜めだけでは間に合わんから、肥料を作るための設備を拡張してニーゲルの他に担当を設けたいところだ」
難しい話になったので、子どもたちがわーっと広場の方に走り出して行ってしまった。
熱中症には気をつけろよ!
勇者村婦人会が、子どもたちが戻ってきた時のための水を用意し始める。
難しいことが苦手な村人たちは、昼寝をしに散っていってしまった。
残ったのは、俺とブルストとクロロックである。
「不思議なことに最初の頃のメンツだ」
「村長のショートだろ。建築と醸造担当の俺だろ。そして農業知識と発酵担当のクロロックだ。まさに村の心臓部三人じゃねえか」
「本当だ。この村、マジで俺たちのやって来たことを大規模に拡張していっているものだったんだなあ」
今になって驚く。
「これから募集するメンバーは、畑作と肥料でしょう。でしたらば、ワタシの専門分野ですね。次のスカウトには、ワタシを連れて行って下さい。それまでにパピュータさんに発酵室の現状維持ができるくらいの技術を叩き込んでおきます」
「頼もしい!」
「それと地球のビール工場の見学の件をぜひ考えておいて下さい」
「それは俺も行きたいぞショート!!」
「村の重鎮二人の頼みだからな。断れないな……! せっかくだからエンサーツも連れて行って、おっさん軍団で行こうぜ」
盛り上がってきた。
ビール工場見学については、後で親父にアポイントを取っておくとしよう。
農協が関わっている地ビールの工場があったはずだ。
「ではこれからの勇者村の未来を祝って……ワタシから秘密のプレゼントが」
「なんだと」
俺とブルストがざわざわする。
そっと差し出されたのは味噌であった。
そこに、野菜をスティック状に刻んだものが刺さっている。
「勇者味噌と名付けました。我々でいただいちゃいましょう」
「どーれ……。おおっ、うまいうまい」
「こいつは美味いな!」
ということで!
勇者村の運営は次の段階へ移行するのである!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます