第267話 村人全員の礼服を作れ!!!!
修羅場なのである。
式まで期日は短い。
いや、一週間あるけど!
だがその間に、村の全員の体格や尻尾やらに合わせた礼服とドレスを作らねばならないのだ!
「あっちの世界の式かい? きっとすごいんだろうねえー」
バインにおっぱいをあげながら、何やら夢想しているパメラ。
彼女の場合、女性としては大変体格が良いので、日本のドレス基準からするとかなり工夫して作らねばならない。
背中が開くようにしておけば、足から着られるから角は問題あるまい。
「礼服ってのは窮屈じゃねえのか? 尻尾が収まるが心配だぜ」
フーは虎人だから、立派な虎尻尾がある。
これがズボンの上からちゃんと出せるようなデザインにせねばならない。
「ワタシの服ですか。たしかに、いつもの野良着ではいけませんからね。ですが吸水性の高い着衣では表皮が乾くのでその辺りの処理をどうにか」
クロロックはカエルの人なので、皮膚の粘膜の問題がある。
ということで、一人ひとりフルオーダーメイドなのだ!
一応、フックとミー、アキムとスーリヤ、アムトにピアにシャルロッテなどは体格が近い。
採寸は似た感じでいける。
ちなみに。
服飾担当のリーダーはミー。
補助でスーリヤとリタ。
見習いがカトリナ。
この頭数ではなかなか厳しい。
なので、ブレインが促成で服を作る技術を身に着け、参加する。
さらに時間を確保するため、メンタルとタイムの部屋へ……!
ビンとサーラ、ルアブ、カールくんは我が家で預かることになる。
俺も服はさすがに専門外だからなあ。
だが、ここに強力な助っ人が!!
『神も興味があるから手伝おう』
「おお、やってくれるか鍛冶神!! だが余計な加護とか付与しないようにしてくれよ……」
『努力する』
鍛冶神はサムズアップしてから、メンタルとタイムの部屋へ入っていった。
あそこは時間の経過がゆっくりだからなあ。
それでも働く人間の精神は疲弊する。
くたびれたらたっぷり休み、そして作業再開だ。
目の前で、ポチーナとシャルロッテが大鍋いっぱいの料理を作っている。
服飾担当者たちのための、戦闘糧食だ。
みんながんばれ……!!
俺は、ちびどもの世話をして応援しているぞ。
「ということで、大人たちが仕事をしている間、俺がみんなを乗せて遊覧飛行することにする」
おおおーっとどよめく小さい人たち。
俺はスッと巨大化すると、彼らを乗せて飛んだ。
当たり前みたいな顔で巨大化しているが、これは次元の位相をずらして巨大化している魔法で……まあいいか。
空をまったりと飛び、手前村の上空を通過して村人たちをパニックに陥らせ、王都上空を通過して大騒ぎになり、そのまま風まかせに海の王国まで飛んで、ノリのいい海の人々が笑顔で手を振ってくるのに挨拶を返したり。
途中でレッドドラゴンのドーマが並んできて、世間話をしたりした。
『ショートさんとこのちびども、ちょこちょこヤバそうな魔力纏ってるのがいますねえ。似てるのはショートさんの子ども? だけど俺はあのちびが一番将来的には怖いですわ』
「ビンなー。人格者として育っていることが何より幸いだ」
『マジで世界の平和はショートさんの腕に掛かってますからね。頼んますよ。じゃあな、ちびどもー』
ドーマが手を振りながら離れていく。
小さき人々は歓声をあげながら、手を振り返した。
「またねー」
「おっきーねー」
「ねー」
「すげええドラゴンだあ」
「ししょうはドラゴンともしりあいなんですか! すごいです!」
小さき人々の反応は色々だなあ。
ドーマから敵意を感じなかったのと、俺がいるので恐ろしくはなかったようだな。
今後はああいうのとも共存していく必要があるし、そのためには力や知恵が重要になってくる。
しかし、その辺りを教えるのはまた今度。
今は楽しいだけでいいのだ。
「俺は顔が広いのだ。色々な知り合いがいるぞ。そうだ。次は海の神に会いに行くか」
ということで、海の神を呼んでちょっと談笑したあと、そろそろ夕方になるので帰ってくることになった。
はしゃぎ疲れたマドカとサーラとビンは、すやすやと眠っている。
カールくんは俺の上で魔法の練習をしているし、ルアブはその真似をしているようだ。
ハハハ、一朝一夕で魔法を使えるようにはならないし、才能が必要だぞ。
見たところ、ルアブには魔法の才能がない。
どれだけ努力しても魔法は使えないだろう。
なので、彼には体術を教えてやるとしよう。
パワースなどは全く魔法が使えないが、体術だけで世界の戦士の頂点に立った男だからな。
ぬうっ!
パワースの事を思い出したら、結婚式まで連想してしまった。
もうすぐなんだよなあ……!!
ふわふわと帰還したら、戦いを終えた服飾担当たちが死屍累々であった。
完成した衣類が積み上げられている。
「ついに作り上げたか!! 凄いな!」
「凄いでしょ!!」
一人だけ元気いっぱいのカトリナ。
ブルストのフィジカルを受け継いでいる彼女は、極めてタフである。
彼女とともに、完成した衣服をあらためて行く。
うむ、丁寧な縫製、そして現代日本の意匠を取り込んだデザイン。
凄い。
ミーはあれだな。
何気に服を作る才能があるんじゃないか?
そして細かい所の補強はスーリヤがやったそうだし、彼女も凄い。
「私もねえ、色々できるようになったよ! ちょっと複雑な服が作れるようになった」
「なんだって!? それは凄い……! えらい……!!」
俺が褒め称えると、カトリナがニヤニヤした。
「もっと褒めて……!!」
というので褒め称えていたら、なんだか盛り上がってしまって、その後二人きりでも盛り上がったのだがそれはまあ別の話だろう。
だがこういう時に限って、二人目ができる伏線が張られたりするんだよな……。
そんな事を思いつつ、時間はまたたく間に過ぎていき……。
海乃莉の結婚式当日となったのである!
つまり、二十歳の誕生日でもある。
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