第203話 突撃、フォレストマンのお宅
フォレストマンと色々話をした結果、彼らはずーっと昔から熱帯雨林に住む一族だということが分かった。
肌の色を変えられるのは、一族みんなが持っている能力らしい。
カメレオンとかみたいな種族だな。
顔立ちは、俺とクロロックの間くらい。
トカゲっぽい。
クロロックに慣れているので、ちょっと人間に近い彼らの表情はよく分かる。
「集落作ってるの? 案内してくれない?」
「むう……。よそ者を入れると悪い病気が流行る」
「あー、なるほど」
頭がいい。
確かに、外部と隔絶した集落だと、外から伝染病なんかが入ってくると大変なことになる。
免疫を持っている人がいないから、全滅することがあるのだ。
フォレストマンの他の集落は、そうやって滅びたりしているらしい。
「大丈夫。俺は病気を治せる」
「本当か!?」
俺の言葉に、フォレストマンが大変びっくりした。
疑うということを知らぬ人である。
でも、実際に俺は病気を力技で治せる。
普段はあまり振るってもよろしくないので、自重しているだけである。
言うなれば、細胞レベルよりも小さい、ウイルスサイズのものを体内から駆逐する魔法とかある。
やり過ぎると明らかに体に悪そうなので、これをパワー一割くらいにして使うのが常であるが。
「では安心した。連れて行く」
「おう」
「ショートさんの持つ信頼感はすごいですからね」
「ホロホロ」
「そこの鳥、食べるのか」
「ホロ?」
「手を出したら大変なことになるからな。トリマルには触れない方がいい」
「分かった。モケモケと同じか、それよりもずっと怖い感じがする鳥だ」
モケモケっていうのは、あのテンタクルジャガーの呼び名らしい。
一気に可愛くなったな。
こうして俺たちは、フォレストマンに案内されながら森を歩いていった。
途中で一度モケモケと遭遇したが、トリマルがやさしく連続キックで失神させたので無事であった。
「と……鳥強い……。俺、手出ししなくてよかった」
フォレストマン、トリマルにすっかり怯えた。
だが、トリマルがいればモケモケが恐るるに足らないと気付いたらしい。
堂々と歩いていく。
一応、足跡は常に隠していく気づかいだけはしているが。
「ついた」
鬱蒼と茂る森の目の前で、彼はそう宣言した。
「森では?」
「集落だ。俺たちここに住んでる。おーい!」
フォレストマンが声を掛けると、森がざわざわと蠢いた。
「ショートさん、これはだまし絵です。色々な素材を組み合わせて、森に見えるようにしているのです。あれは茂みではなく、家の壁です。あそこは空間に見えますが、そのように色を付けているだけです」
「なんだって!!」
かくして、あちこちからフォレストマンが顔を出した。
彼らの村は、だまし絵でできた村だったのだ。
トカゲっぽい感じのフォレストマンが、わいわいとやって来る。
おっ、ちっちゃいのもいる。
よそ者は警戒するものかも知れないが、隣で無防備に仲間が立っているので、そこまで脅威ではないと判断したのだろう。
そう思って隣のフォレストマンを見たら、不思議な色に変わっていたのでびっくりした。
「あっ、なんか緑色になってピカピカしてるじゃないか」
「これ、警戒しなくていいという意味。お前、病気を治せる人。治して欲しい仲間がいる」
「ほうほう。案内してくれ」
フォレストマンに連れられて、一見の家の中へ。
そこには、ぐったりした様子のちっちゃいフォレストマンがいた。
「モケモケの触手に刺された。触手、毒がある。刺される、運悪いと死ぬ。こいつ、運悪い。死にそう」
とても心配げである。
「よし、友好の印に治してやろう。だけど、俺の治す力も無限じゃないからな。頼りすぎるなよ」
実はほぼ無限なので頼ってもらっていい。
だがこうしないと、フォレストマンが自活する力を奪ってしまうかも知れないからな。
「分かった。特別な力、なかなか使えない、分かる。それ、俺の仲間のために使ってくれる。ありがたい」
「おおーっ」
他のフォレストマンたちも、何やら感激しているではないか。
どうやら、俺がめったに使えない癒やしの力を、わざわざ他人であるフォレストマンのために使うということが、彼らの感動を呼んでいるらしい。
純朴な人々だ。
そのままの君でいて欲しい。
「どーれ。治癒魔法ドクコロリ(俺命名)!」
フォレストマンに触れて魔法を流し込む。
魔法がぐりぐりと彼の体内で広がり、悪さをしていたモケモケの毒を真っ向から粉砕、分解していく。
肉体そのものもダメージを受けているようだから、これを回復させてしまえば話が早いが……。
回復はちょっとだけにしよう。
しばらくは静養に掛かるだろうが、いきなり全快よりは自然である。
俺の力を小さく見せておかねばならん。
下手に凄いのを見せて、神だと崇められては大変だ。
彼らフォレストマンとは、対等な付き合いをしていきたいのだ。
小さいフォレストマンの顔色がだんだん良くなってきて、呼吸が穏やかになった。
どうやら、体の色から毒が抜けたということが分かるらしい。
フォレストマンたちからどよめきが漏れた。
「毒治った」
「すごい」
「精霊様の技」
「この人精霊様」
「おおー」
「ありがたや」
しまった!!
崇められてしまった!!
フォレストマンたちの純朴パワーを舐めていたぞ!
「待て待て。俺はそんな崇められるような存在ではない。これは、お前たちとこれからお付き合いをしていきたいので、挨拶として毒を治したのだ」
「付き合う?」
フォレストマンたちが首を伸ばした。
これ、首を傾げる意味がある動作っぽいな。
「ああ。俺たちは森の外にある村に住んでいる。君たちと物々交換で交流がしたいのだ」
思いつきだったが、こいつはなかなかいいアイディアではないか。
辺境に住む仲間同士、仲良くしよう。
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