ドロイドワールド
東雲才
第1話
2×××年−–−–
ここは人型ロボット、アンドロイドと人間の共存した世界。
「2人だけだと寂しいなぁ、相棒」
彼は公安署の署長、橘健。アンドロイドと人間が平和に共存するための公安委員会に所属している。公安委員会の中でもトップの業績を残し、相棒のアンドロイドのアルカナと仕事をこなしている。
「御主人様が公安署の合格試験厳しくしすぎるからですよ。」
「仕事も全然来ないしなぁ。」
その時、コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。
「御主人様。丁度いいですね。御依頼人がいらしたようですよ。」
「おう!早速入れてやれ!」
「こ、こんにちは...」
「やぁ、いらっしゃい。ここに座って。」
「はい。」
そうして2人は机を挟んで向き合うように座った。
「俺は署長の橘健。って言っても2人しかいないけどな。あなたのお名前は?」
「神崎由奈です。」
「神崎さん、今日はどういったご依頼で?」
「実は...昨日の夜、帰宅中突然男の人に囲まれて私のアンドロイド...ウーノが誘拐されちゃって。小さい頃に父が贈ってくれた大切なアンドロイドなんです。」
「なるほど、で、どこで誘拐されたんだい?」
「〇〇駅らへんです。」
「なるほど、アンドロイドの誘拐か...。ブラッドファミリーって聞いたことあるかい、お嬢さん?」
「い、いえ、聞いたことありません。」
「俺の統括してるこのあたりでは有名な犯罪組織だよ。俺が支部をいくつか壊滅させたんだけど、シンギュラリティが起きてからアンドロイド関連の犯罪に手を染め始めたから多分ブラッドファミリーみたいな犯罪組織に所属するグループの仕業じゃないかな。」
「そうなんですね...。あの、良ければ私のアンドロイドが攫われた現場まで来てくれませんか?何かわかるかもしれません。」
「そうだな!それが早い!行くぞ、アルカナ!」
「了解です、ご主人様。」
「このあたりです。」
「ここか...?駅から少し離れてるけど随分薄気味悪い所だな。」
「御主人様、神崎様、気をつけてください。複数の生体反応がこちらに向かってきています。」
「ん...?」
カツ...カツ...カツ...と周りから足音が集まってくる。
「なんだ、お前ら!」
目の前には1m以上ある大剣を担いだ男が立っていた。
「ヒィッヒィッヒィッ〜!まんまとその女に騙されやがったなぁ橘ぁ!」
「...っ!どういうことだ!」
「ごめんなさい!あの人にアンドロイドを返す代わりにあなたをここに連れてこいって言われたの...」
「...卑怯な...なんなんだお前!!」
「俺の名前はよぉ、ドラファスっていうんだぜぇ。お前のせいでよぉ、ブラッドファミリーの支部がどんどん潰れちゃってよぉ、ボスからお前を殺してこいって言われたんだよなぁ!」
「お前らブラッドファミリーのメンバーか!」
「約束は果たしました!お願いです!私のアンドロイド...ウーノを返して!」
ウーノは口を塞がれ、手足を拘束された状態でドラファスが連れていた。
「こいつかぁ?やだねぇ!こいつ...面白い機能持ってんだろ?神崎グループの御令嬢さんよぉ?」
「神崎グループ!?」
「神崎グループといえばシンギュラリティの達成の先駆けとなった企業ですね。」
アルカナが言った。
「...こいよ、お前ら。俺をボコボコにするんだろ?」
「そんな余裕ぶっこいてると痛い目見るぜぇ!やっちまぇ!お前らぁ!」
「御主人様、私もお供します。」
ドラファスの周りの子分達が橘とアルカナに襲いかかった。
「うらぁーー!」
2人は華麗に相手の攻撃を避けつつ、相手がバランスを崩したとこ目にまとまらぬスピードでパンチを繰り出した。
2人だけで10人程の相手をコテンパにしてしまった。
「舐めてもらっちゃぁこまるな!」
「流石、ボスが目を付けるだけの実力だなぁ。けどよぉ、今度はこの俺が相手をしてやるぜぇ!」
ドラファスは大剣にスイッチを入れると刃の周りが赤く光り始めた。
「このアンドロイド技術が応用された俺の大剣、かわしきれるならかわしてみろよぉ!」
ドラファスの振り下ろした大剣は光の筋を描いた。2人は素早い剣さばきを避けつつ、高速パンチを繰り出していったが、ドラファスは器用に攻撃を防いだ。
「...御主人様と私の2人がかりなのにほぼ互角にやりあってる...」
一方、神崎は橘とドラファスが戦っているうちにウーノの元に駆け寄り、拘束道具を取り外そうときていた。
「ごめんね...私、何も出来なかった。」
「大丈夫です由奈御嬢様、私もなにも対抗することができませんでした。すみません。」
「そんなことないって...とにかく、今助けるから」
「...ん?」
ドラファスは神崎がウーノの拘束を解き始めたのに気付いた。
「てめぇ、なにをしやがる!!」
神崎の方へと刀を振り下ろした。
「まずいっ!」
橘は神崎の方へと全力で走った。
「ぐあっ!」
神崎を庇った橘は背中を切りつけられた。
「橘さん!」
赤い血飛沫...ではなく複数のケーブルが橘の身体から剥き出しになった。
「お前、人の顔してんのに、アンドロイドだったのかぁ?...」
「うるせぇ!お前には関係ねぇ!」
「身体はボロボロなのに威勢がいいねぇ。けどこれでお前も終わりだなぁ!」
ドラファスの大剣は橘の身体を貫き、そしてその身体から引き抜かれた。
「橘さん!」
「ご主人様!」
ドスン...橘の体は地面に崩れ落ちた。
「ハハハハハハハハハ!」
ドラファスが高らかに笑った。
「これであとはあのアンドロイドを連れていくだけだなぁ。お前ら、そのアンドロイドを引き渡せば、大人しく返してやるからよぉ、さっさと寄越しな!」
「...っ!嫌だ、渡さない!」
神崎がそう言うと、アルカナが立ち上がった。
「まだ私は戦えます。」
「懲りないねぇ〜どうせこの大剣に引き裂かれるだけなのによぉ!」
ドラファスはアルカナに大剣を振りかざした。ドラファスの攻撃は目まぐるしいほどに早く、アルカナは防ぐことしかできない。
大剣を振りかざした地面は簡単に凹んでいった。
「この大剣!攻撃力が桁違いだ!」
「ウーノ!お願い、橘さんを助けて!」
「...私に任せてください。プログラム・エンコード!!!」
ウーノがそう叫ぶと橘の身体は不思議な光で包まれ、壊されたパーツが修復され、さらに補強され始めた。さらにドラファスの大剣から赤い光が消えていった。
「な、なんなんだよぉこれはぁ!...っ俺の大剣が、勝手にシャットダウンしているっ!なにをしたぁ!お前ぇ!」
ドラファスが叫ぶと、橘が立ち上がり始めた。
「おい、てめぇ、俺を散々な目に合わやがったなぁ...」
「橘!なんで立ってやがるっ!」
「おらぁぁぁああ!!!」
橘の体から火が吹き、渾身の一撃がドラファスの腹に命中し、その勢いで吹っ飛んでいった。
「御主人様、大丈夫ですか!?」
「はぁ...はぁ...はぁ...お前らこそ大丈夫か?」
「...橘さん!騙すようなことしてすみませんでした!」
神崎が頭を下げた。
「気にすんなよ、俺もお前のアンドロイドに助けられたしな。あいつらの言ってた通り、不思議な能力持ってるんだな。体が直っただけじゃなくてパワーアップした感じがしたぜ。」
「私は触れたアンドロイドのプログラムを自由自在に操ることができます。おそらく、私の機能を持つアンドロイドは出回っていないので狙われてしまったのでしょう。橘様、御嬢様と私を助けていただき、ありがとうございます。」
「おうよ、こちらこそだ。」
「ところで...橘様は人なのですか?アンドロイドなのですか?」
「俺は小さい頃大事故にあっちまってな、頭とか主要な臓器はしっかり残っていたから手術で他の部位をアンドロイドの部位で補ったんだよ。」
「だから御主人様は並外れた戦闘能力を持つのですよ。」
「そんなことがあったんですか...本当にありがとうございます、橘さん。私、どうお礼していいのか...」
「いいって、いいってお礼なんて。」
「私、橘さんの仕事お手伝いできませんか?」
「おっ、いいね。2人しかいなくて寂しいって言ってたし。いいだろ、アルカナ?」
「勿論ですとも。」
「じゃあこれからよろしくな!神崎!」
「はい!」
こうして今日もまた、平和な世界が保たれるのであった...
ドロイドワールド 東雲才 @chocolatejunkie12
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