第30話 オヤブンの存在意義
——パァン——
何か壁を突き抜けたような手応えを感じた。
魔法陣に描かれる術式も今までの物よりも複雑になっている。
今まで見たことがない術式だった。
「い、今までの【重力操作】じゃない……」
【重力操作】の新しい扉が開いたような、そんな気がした。
ある確信を元に魔法陣の上に小石を投げてみる。
「う、浮いた!!?」
ヨハン司祭が目を見開いて叫ぶ。
放り投げた小石は魔法陣の上で不自然に上昇した。
「ま、まさか、重力を反転させたっていうのか?」
「そ、そうみたい……だね……」
信じがたい気持ちで二人で顔を見合わせる。
「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」
目が合ったら思わず2人で叫んでしまった。
何故って、今までどうやっても【重力操作】で重力を反転させるようなことは出来なかったからだ。
そのため【重力操作】とは重力にある程度の強弱をつけることができる魔法だと思っていた。
そしてそれだけでも十分多くの役に立つ魔法だった。
これが重力を反転まで出来るとなればまた違った活用法が見えてくると思う。
——ボシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ——
穴から地下水が盛大に噴き上がった。
「「やったぁぁぁ!!!」」
両手を挙げて喜び、そのままハイタッチする。
地下水はかなり空高くまで吹き上げられているが、高く上がるにつれ次第に空気中に霧散していった。
そして雨の様に水滴が周囲に降り注いでくる。
「おっと、減りがすごいな」
そうこうしているうちに、貯めた魔力が早くも底を着きそうになる。
魔力の消費が桁違いだ。
ただ、一度発動させてしまえば継続させることは簡単で、魔力の供給経路を地脈に繋ぐだけでいい。
そうすると地脈から魔法陣に自動的に魔力が供給される。
この地脈と魔法をつなぐスキル(?)も自然と扱うことが出来る。多分僕の中にその術式が刻まれているんだと思う。
ちなみに村全体を覆う超巨大な障壁も地脈に繋いで維持している。
地脈の魔力の放出量は人間がもつ魔力とは比較にならないため、今発動中の【重力操作】も余裕で維持することができた。
ただ、地脈の魔力を直に操って何か魔法を発動させる……といったことはできない。
例えるなら地脈の魔力は嵐で荒れ狂う川みたいなものでとても制御できないのだ。
精密な魔力操作が必要な魔法の発動=魔法陣の構築に用いることはとても出来ない。発動済みの魔法に接続して魔力タンクとして扱うことしかできない。
でも僕自身にも地脈の魔力は供給されているんだけど、一度僕に供給された地脈の魔力は僕の魔力として自由に扱うことが出来るから魔力って不思議だなと思う。
ちなみに魔法を地脈に繋いでも、僕と魔法の繋がりが切れるわけではないのでその後も魔法の操作は可能だ。
【重力操作】の魔法陣に地脈をつなぐと、今まで発動し続けていた【命の息吹】が止まった。それに伴って僕が発していた光も収まる。
「こ、これは、もしかして【重力操作】の上級魔法……なのかな?」
「上級魔法? ……ってなに?」
「アイザック、魔法は基本的に(シオン村は例外だけど)精霊と契約した貴族と、貴族と契約した騎士が扱えるものだってことは知ってるだろう?」
「うん、それは知ってるよ」
「騎士と貴族じゃ発動できる魔法の規模が違うんだ。騎士は貴族が扱える魔法の一部しか使えない。それも威力の弱い魔法しか扱えなくてね、貴族のみが扱える威力の高い魔法は上級魔法って呼ばれてる」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ、この魔法が【重力操作】の上級魔法だとしたら僕は貴族様と同じくらい強いってこと?」
「うん、そうかもしれないよ」
「へへ、やったね!」
貴族様と同じくらい強くなったのだとしたら、それはとてもすごいことだ。
でも、そうじゃなかったとしても自分の成長を実感できたからそれだけでも十分嬉しい。
「ところでさ、アイザック……大分髪の毛伸びたね」
「あぁ、うん。今かなり連続して【命の息吹】が発動したからね。切っちゃお」
僕の髪の毛は伸びるのがかなり早くなった。あと爪もね。
これは間違いなく【命の息吹】の影響なんだけど、連続して発動し続けると明らかに伸びたってのが分かる。ちなみに今は丁度手首から指先までの長さ分髪が伸びた。
今みたいな事がなくても、普通に一日過ごせば結構伸びてしまうのだ。
女の子みたいな髪型になってるけど、短く保つのはかなり面倒なのでそこは我慢している。だいたい腰くらいまで伸びたらザクッと肩くらいまで切るようにしてる。
前髪とかは邪魔になるので、髪の毛は全部後ろでまとめて【形成】した輪っかで一括りにしている。
——ザクッ——
おもむろに髪を掴み、お父さんからもらった短剣で一気に切る。
この作業も慣れたものだ。それに直ぐに伸びるから多少変な感じに切ってしまっても気にしない。
多い時には日に何度か切るからね。
ちなみに僕の髪の毛は動物たちにはいい餌になるらしく、外に捨てておくとユピィを始め家畜達が嗅ぎつけてきて食べてくれる。
今回もどこからともなくユピィが飛んできて切り落とした髪の毛を啄み始めたのだった。
しかし、何故見たこともない術式を展開できたのか。
アイザックの心に一つ疑問が残ったのだった。
◇◇◇
時を同じくして、村では一つの命が消え去ろうとしていた。
牛のオヤブンである。
「悪いなオヤブン、今までご苦労だった。今までたくさん助けてもらったのにすまないが、これでお別れだ。せめて最期は苦しまないように一瞬で仕留めるから大人しくしててくれよ」
そう言ってダンが剣に手をかける。
「フン」
剣を大きく振りかぶると、オヤブンの首元めがけてダンは剣を振った。
オヤブンは魔境化の影響を受けてかなりの巨体となっており、頭の位置はなんとダンよりも高い。
そのため、体重を乗せて振り下ろす……というわけにはいかないが、それでも太い首を刀両断するだけの十分な力が込められていた。
オヤブンを苦しませずに済むように、そう願いが込められた一振りだった。
少なくともダンはそれで片が付くと思っていた。
——ガキン——
しかし、甲高い音と共にダンの剣は弾かれたのだった。
『俺も甘く見られたもんだな。ダン、この程度で俺のタマが獲れるとでも思ったのか?』
(弾かれた! バカな! それにこれは念話か!?)
剣が弾かれたことと、頭の中に響く声に混乱しつつもダンは何とか声を絞り出す。
「オヤブン、……お前、人の言葉が分かるのか? しかもスキルまで使うなんて……」
ダンの声を聞いた周りの観衆も驚く。
『まぁな、気が付いたらいつの間にかオメエらの言葉が分かるようになってたよ』
「なんで今まで黙ってたんだ?」
『ふん、わざわざ話すことは何もなかったしな』
「そ、そうか。だが話が理解できてたってことはこの後どうなるかも分かってるんだろ? 苦しまないようにするから大人しくしててくれよ」
『そいつは出来ねぇ相談だな。っていうかオメエは言葉の分かる相手を殺めるのに抵抗はねぇのかよ?』
「勿論あるさ。しかし命とは多くの犠牲の上に成り立つものだからな。皆で感謝して頂くことを約束するよ」
『ちっ、所詮この世は弱肉強食ってことかよ。まぁいい。そういうのは嫌いじゃねぇ。そうやって俺も群れのボスになったわけだしな。俺が勝ったらオメエは俺の下僕だ。ダン、いいな』
「へぇ、言うじゃないか。いいだろう。約束だ。図体がデカいからって勝てるとは限らねぇぞ」
『男と男の約束だ。あと己の存在を懸けて体でぶつかるとしようや!』
「そうしよう」
オヤブンは頭を下げて角を向け、前足で地面を何度も抉る。戦闘準備は既に万端といった感じだ。
「【強化】」
一方のダンも全身に魔力を纏い光を放つ。
恐らく勝負は一瞬だろう。
観衆は両者のただならぬ気配からそう感じ取っていた。
「オヤブンがスキルを使えるのには驚いたけど、この勝負はダンの勝ちね」
「そうね。残念ながら纏っている魔力量が全然ちがうもの。それに多分オヤブンは突っ込んでくるだけでしょ? オヤブンに勝ち目はないわね」
ニイナとサラは両者の分析を行っていた。オヤブンの戦闘力は未知数だが魔牛と化したのは間違いない。その巨体に加えてスキルまで使うとなるとまさに怪物と言える。
体格ではダンを遥かに上回るオヤブンだが【強化】を使ったダンの魔力はオヤブンを圧倒していた。
『凄まじい力を感じる……ならば俺も出し惜しみは出来んな……』
——BMOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO——
オヤブンは雄叫ぶと頭を数度振り、凄まじい眼光でダンを見据えた。
「おい、何かオヤブンの角にすげぇ魔力が集まってねぇか?」
ガイルの言葉に皆が固唾を飲む。
「おいおい、これってまさか……」
オヤブンの角が熱を帯び始めていた。
その熱量にロイドは思い当たるところがあった。いや、ロイドだけでなく皆が同じスキルを頭に思い描いていた。
——バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ——
「【纏雷】ね」
黄金牛の種族固有スキルとも言える圧倒的破壊力をもつスキル。
ユーリに言われるまでもなく皆がそれだと理解した。
しかし、黄金牛が【纏雷】を発動可能なのは「もこもこした毛により静電気を発生させやすいから」というのがヨハン司祭の見解であり、普通の牛であるオヤブンがこのスキルを使えるはずがないのだ。そして【纏雷】は【強化】の上位互換のスキルで未だにアイザック以外誰も発動させることが出来ていない。
「とんでもねぇスキルを使いやがったな。なんでお前がそれ使えるんだよ!」
予想の遥か上を行かれたダンが思わず弱音を吐く。
『他の牛が使える技だ。同じ牛である俺に使えねぇ道理はねぇだろ』
「そ、そういうもんか?」
今や纏う魔力の量も質もオヤブンはダンを上回っていた。
ただ、【纏雷】はとてつもなく魔力を消費するという弱点もある。
(初撃……そこさえ凌げれば俺の勝ちだ)
2撃目はない。オヤブンはこの1撃に全てを懸けたのだ。
しかし、だからこそ強い。
この一撃に関して言えばはオヤブンは無敵に近い。
スピードは圧倒的で避けることは無理だろう。
そして威力は言わずもがな。当たれば即死だ。
当然だが、オヤブンは命を懸けている。ならば自分の命も天秤にかけられるのも当然だろう。
(ならば、せめて俺も全魔力を出し尽くすのみだ)
——うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお——
ダンの声が大気を震わせ、体はより一層光を発する。
――バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバ――
一方、オヤブンも体に雷を纏う。
凄まじい魔力の奔流に新参の移住者たちは肝がつぶされる想いで見守っていた。
そして次の瞬間、あっけなく勝負はついたのだった。
両者が正に一歩踏み出そうとしたその瞬間に地面が光り、魔法陣が展開していた。
と同時に凄まじい負荷が両者に掛かり両者ともども地面に伏したのだった。
「ふう、何とか間に合った……」
アイザックが【重力操作】で横やりを入れ身動きを封じると、魔力が尽きたのか両者は共に気を失った。
その後、オヤブンを潰す計画は白紙になった。
群れのボスということと、【念話】で人とのコミュニケーションが可能ということで、今後更に黄金牛たちとの連携が可能になる。それは村の発展に寄与するとみなされた。
そして何よりもオヤブンは強い。家畜がこんなに強くなっているなんて誰も思ってもいなかったので皆驚いたが、おそらくあのままオヤブンとダンがぶつかればダンは死んでいただろう。
もし森から魔物が侵入した際には戦力となってくれるはずだ。
その2点が買われ、自らの存在意義を示したオヤブンは自らの命を救ったのだった。そして、ダンとオヤブンは決着こそなかったものの命懸けで対峙したことでダチになったのだった。
そんな出来事があった後、村の重役たち(元から村にいるメンバー)は村作りについて話し合った。
地下水を汲み上げることに成功したので、きれいな水(飲料可)が豊富にあることを前提にした村作りをするためだ。
話し合いの末、かなり今までの常識を覆した村作りをすることになった。
まず地下水を貯める貯水槽を造った。
穴を掘った際に出た大量の土砂があるし、水自体も【石化】できるので材料には困らない。
巨木並みに大きい超巨大な貯水槽を8槽建てた。
2槽は熱水用、4槽は冷水用で、残り2槽は予備だ。
貯水槽毎に穴を2つの掘ってある。片方の穴を地下水を汲み上げるのに使い、もう片方は貯水した地下水を排水するのに使っている。
熱水用の貯水槽は常に地下水を循環させ温度を保っている。
そして、勿論浴場も造った。
今まであまり体を洗う習慣はなかったがお風呂は気持ちいいので皆好んで浴場を利用するようになった。
また建物毎にも屋根に貯水槽を設置することになった。
各建物の貯水槽は水道管で超巨大な貯水槽とつながっており、冷水と熱水が供給される。
実験したところ供給される熱水は流石に温度が下がるのだが、それでもかなり熱いお湯を供給することが出来きた。
新しく建築する家は壁や床には水道管をくまなく設置し、熱水で家全体を温めることが出来るように設計した。
勿論、暖房のために流す熱水の量はレバーで操作可能にし、水道管に流す熱水の温度も水と混ぜることで変更できるように設計してある。
暖房設備に関しては当初の目標を達成したのだが、家の建築は中々完了しなかった。
お風呂に入るようになり、皆の心に清潔という概念が生じ始めたからだ。
つまり、今まであまり気にならなかった汚いもの、臭いものが気になるようになったのだ。
そうなると、トイレ事情をもっと何とかしたいという意見が出てきた。
そして水を豊富に使えるのだから台所ももっと便利にしたいという意見が出てきた。
勿論、こういう意見が出てくるのは女性陣からなので無碍に扱うと大変なことになる。
そんなわけで大きな屋敷を1軒だけ建てて試験的に日々改造している状態で、皆の家を建てるには至っていない。
ちなみに以下のように改造していった。
・トイレの穴が臭いので何とかしたい。
→何とか水で臭いに蓋が出来ないかと試行錯誤した結果、肥溜めから下水管に変えた。下水管から臭いが上ってこないようにするために下水管を縦に短く2度曲げることで水をためることが出来るようにした。また汚物を水で流すためにトイレ用の小型の貯水槽を設置し、勢いよく汚物を流せる仕組みを作った。そのために汚物を受け止めるための器も新しく発明した。ちなみにこれを便器と呼んでいる。
・トイレで用を足した後、股や尻をきれいにしたい。
→これも何とか水で解決できないかと試行錯誤した結果、【水操作】の魔法を応用することで何とか実現できた。【水操作】の魔法陣を設置したトイレ用の貯水槽をもう一つ用意し、レバーを捻ると水が出てくる仕組みを作り、水の出口付近に設置した【水操作】の魔法陣に水が触れると便座上空に水が流れるようにした。人が座っていれば丁度尻や股を洗浄してくれるように水が流れる設計だ。ちなみにもう一つレバーを設置し、そのレバーを捻ると【回転】のスキルによって作られた風がお尻を乾かしてくれる仕組みも作った。こちらはレバーを捻ることで羽根車に魔力が流れる仕組みになっている。いずれも地脈の魔力を利用しているので魔力を扱えない人でも使うことが出来る。
・屋敷でも自由にお風呂に入れるようにしてほしい。
→屋敷にはもともとお風呂があったので水道管を通し、排水管も設置した。温水と冷水のレバーを設置し温度調節をしてお湯を張ることが出来るようにした。ちなみに、下水関係は地下に巨大な穴を掘り、とりあえずそこに流している。冬の間によい処理方法を研究するつもりだ。
・台所でも水が自由に使えるようにしたい。
→台所に水道管を通し、排水管も設置した。
・台所の煙を効率的に外に排出したい。
→トイレの風を送る仕組みを利用し、煙を吸い込んで外に排出できる管を設置した。レバーを回せば小窓が開き、羽根車がまわって煙を吸い込むように設計した。これを換気扇と呼んでいる。
といった感じで、僕が魔法でかなり自由に家を弄ることが出来るということもあり、今までとは全く違う家になっていった。
現段階に至るまでおよそ10日を要している。
ちなみに、こんな僅かな時間で様々な工夫を施すことが出来たのには理由がある。
元ネタがあるからだ。
その元ネタは何かというと、「超古代文明」である。
現在の文明を遥かに超える高度な魔法工学を持った文明が過去に存在していたことが分かっており、時々地下から遺跡や遺物が発見されることがある。
そしてそう言ったロマンあふれる話は農奴の僕でさえ何度も耳にしたことがある。
なんでも「超古代文明」の時代は今の王様よりも遥かに快適な生活を多くの人々が享受していたのだとか。
そして教会は遺物の博物館も運営しており、ヨハン司祭は大の遺物好きなのだ。当然博物館には何度も足を運んだらしい。
便器の発想や、水で蓋をする下水管の発想などもヨハン司祭が目にした遺物を参考にしている。
多くの国、都市、街などで遺物を参考にした住居を建設する案は出ているらしいが、技術不足で実現には至っていないらしい。
他にも家のことで要望はあるのだが、今の僕のスキルではこれ以上の改良は難しい。
とりあえず現時点での完成を見たということで、ようやく皆の家の建築に着手した。
一先ず、同じ屋敷を2軒建てダンとロイドの家族の家とした。また移住者が住んでいる宿舎も新たに建設した。今度の宿舎はちゃんと生活に必要な台所やトイレ、風呂、暖房設備などを備えている。
屋敷は1軒建てるのに1日を要し、宿舎については10日を要した。以前とは構造が複雑になったため想定していたよりも時間がかかってしまった。
それでも何とか雪が降る前に建築を終わらせることが出来たのでよかった。
これから本格的に冬が来る。
でも去年よりも皆の表情は明るい。
去年はまさか魔境化している森に居をかまえることになるとは思っていなかったけどね。
そんな折、通信具に反応があった。
レイムの街の冒険者ギルドマスターであるレックスに渡してあるものからだった。
「はい、こちらアイザック」
——アイザック、こちらレックスだ。南の空を見てくれ。何か黒い影ががこっちに近づいてきているんだ——
「ユピィ!!!」
急いでユピィを呼ぶ。
――ピィィィィィィィィィィィィィィィ——
ユピィが応えた。
「【重力操作】、【強化】」
思いっきり上に跳ぶ。
跳んだ僕をユピィが掴んでさらに上空に押し上げてくれた。
見えた。
「何だ、あの影は!」
レックスの言う通り、南の空には黒い影が蠢いており、徐々に北上しているようだった。
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