ヤンデレバレンタイン

今日は2月14日。

待ちに待ったバレンタインデー。

先輩に本命チョコを渡すために、努力してきたんだよ。

あの鈍チン先輩と言ったら、いっつも私の好意を冗談だと思ってるんだよ。

今日こそは、この気持ちが本物であることを証明するんだから。


鞄の中に入れた小包を確認する。

うっかりペチャンコにしてしまったら元も子もないもん。

あと、ラブレターも入っているか確認。


それを確かめると、私は家を飛び出した。

今日こそ、先輩と恋人になるんだ!!





……と、意気込んでいたのに、私は現状を受け入れられずにいた。

先輩が残っていると思って、わざわざ先輩の教室まで来たのに。

教室には先輩と先輩の同級生がいた。


「嘘、何で…。先輩は好きな人がいないって…言ってたのに……」


ドアの隙間から見える光景は、まさに2人だけの愛の楽園。

先輩はその同級生から嬉しそうに口移しでチョコを貰っていた。


あんなことを平気でやっていた。

しかも2人きりの時間を狙ってだなんて、2人の関係は確実に恋人同士。

目の前の状況から、それを否定することはできない。


胸にぽっかりと空白が空き、その場に跪いてしまった。

目からはいつの間にか涙が流れていて、拭っても拭っても止まらない。

声にならない悲鳴が私の中でこだまする。


信じたくない現実を、ハンマーのような物で打ち付けられ、無理矢理自覚させられるような感覚。

この苦しみが私の中を支配する。


「あら、可愛らしいネズミさんがいるみたい。いつから見られていたのかしら?」

「え‥…」


こっそり見ていたはずなのに、同級生の人は私をとらえていた。

すぐに逃げないといけないのに、蛇に睨まれているみたいで動かせない。


地べたに倒れた状態から立ち上がる事も出来ず、あっさりと見つかってしまった。

扉が開けられた瞬間、無理矢理引っ張られ教室の中に入れられた。


こんな姿を先輩に見せたくなかった。

涙を流している姿を、先輩だけには見せたくなかった。

こんな醜い姿は‥…。


「どうして、ヒノキちゃんが……」

「あら?知り合いなの?」


同級生の方は私を知らないのか、先輩に質問していた。

どんな答えが出てくるのかは気になったけど、今は胸を締め付けられる思いしかなかった。


ぐいぐいと先輩に近寄って質問する同級生。

それをちょっぴり嬉しそうにする先輩。

目の間でイチャイチャされることが苦痛だった。

本当は私の位置だったのに。

あんなに嬉しそうにさせられるのは私だけだったのに。


目の前の女が憎い。

憎くて憎くてしょうがない。

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。


高ぶる気持ちが、私を突き動かした。

いつの間にか、先輩の同級生を押し倒して馬乗りになっていた。

首を握りしめ、すぐにでも窒息死させたくてしょうがなかった。


「先輩は私のものなんだ‥…。なのに…なのに…‥この泥棒猫!!私から先輩を奪いやがって!!先輩は私のものなんだ!!この泥棒猫、痴女、淫魔、――」


私は、罵詈雑言を浴びさせ続けた。

このメスを殺さないと気が収まらない。

私から先輩を奪ったこの♀豚が生きているだけで吐き気がする。

先輩を落としたという事実がある事に心を抉られる。


「っ!ヒノキちゃん、ダメだよ!そのままじゃ死んじゃう!放してあげて。」


今頃になって、事態の状況を飲み込めたのか、先輩が私を止めようとしてきた。

でも、絶対の子の手を離さない。

息の根を止めるまで、絶対に‥‥





――――――――――――――――――――




気付いたら自分の部屋にいた。

ただ、なぜか窓は2枚の木の板で十字に張りつけられていた。

ドアも厳重に固定されていて、部屋から出られないようになっていた。


極めつけには、先輩が腕と足に鎖でつながれていた。

意識はなく、気絶しているようだった。

服は来ていなくて下着だけ。

興奮する気持ちを抑えられない。

今にも襲いたくてたまらない。

今すぐにでも壊さないと気が済まない。


ふと、思い出したことがった。

今日はバレンタインデーだった。

先輩のために愛情をこめてチョコを作ったんだった。


そのチョコはどこに行ったのだろうかと部屋を見渡すとテーブルに置いてあった。

小包の角がつぶれているけど、直接食べせさせてあげれば問題ない。

小包からハート形のチョコを取り出し、先輩にまたがった。

今は気絶しているみたいだから、起こしてあげないと。


「先輩、起きてください。起きないと、悪戯しちゃいますよ?」


よく聞こえるように耳元でささやいてあげた。

少しかゆいような、気持ちいいような。

そんな顔をする先輩。

何度かささやいてあげると、ビックリしたかのように起きた。


「先輩おはようございます。よく眠っていましたね。」

「……あ……ぁ…」


やっと起きてくれたのに、先輩は化け物を見るかのように私を見てきた。

焦点が合わず、何かを恐怖しているように。

そんな先輩が憎い。

せっかく私が丹精込めて作ったチョコを渡してあげようとしているのに。

優しく先輩を起こしてあげたのに。


こんな風に先輩をしてしまったのは……私の愛情を受け取れなくなったのは……そうだった、あいつの仕業だ。

私から先輩を奪った♀豚のせいだ。

そしてすべて思い出した。

今は、あの♀豚のせいで変わった先輩を直すためのお仕置き中だった。


私の愛情をいっぱい注いであげている途中だった。

先輩が気絶しちゃったから休憩にしてたんだけど、うっかり私も寝てしまったんだった。


やっぱり、あんな女がいるから駄目なんだよね。

私の人生を、先輩の人生をめちゃくちゃにする。


やっぱり、息の根を止めて正解だった。

私たちの人生を邪魔する奴がいなくなって幸せになれたんだから。

後は、先輩を元通りに戻すだけ。


「もうやめて…。私たちは女の子同士なんだよ。結ばれることもないんだから…もう――」


やっぱり先輩は壊れてる。

私の先輩はそんなことは言わない。

私の意見を冗談にとらえることがあっても否定はしない。

私を受け入れない先輩は早く直さないと。


「先輩、あの♀豚に何か言われたんですよ?だって、あの♀豚とは付き合っていたのに私はだめなんておかしいですよね?脅されでもしましたか?でも安心してください。あいつはもういません。怖がらないでいいんですよ?・…そうだ、これも食べてください。疲れた心を気持ちよくさせてくれますよ」


愛情が詰め込まれたチョコを先輩に無理矢理食べさせてた。

あの♀豚がまだ怖くてしょうがないもんね、先輩。

私が無理矢理してあげないと食べたくても食べれないんだもんね?


ほんのり甘くて、少し大人の甘さがあるビターチョコ。

先輩好みのチョコだよ?

おいしい?おいしい?おいしい?おいしい?おいしい?おいしい?おいしい?おいしい?おいしい?おいしい?


「……」


でも、先輩は感想を何も言ってくれなかった。

ゆっくりとチョコを食べていた。

食べ終わると、いつになく静かになっていた。


「少しずつリラックスしてきたね、先輩。目にハートマークがあるみたいにとろーんってなってるよ?」


先輩の顔に手をあげると、先輩の体が少し跳ねる。

混ぜこませていた薬が効き始めたのか、気持ちよくなってきたみたい。


「体中性感帯みたいになって気持ちいいですか?どうです?」

「はひっっ///」


ちょっと首筋をなぞっただけでこれだよ。

効き目は抜群。

胸の方も張ってきてるし、下の方は充血して来てる。


「どうせなら一番気持ちいい所でイこうね?色んな所を触られて、お腹の下の方がじんじんしてきたでしょ?熱くて、誰かに触ってほしくて仕方ない?そう思っちゃう?ねえ、先輩から聞きたいな?」

「さ……さひゃって‥…さひゃって、くりゃひゃい……」


快楽を求める先輩は、とても魅力的だ。

私好みで、薬を飲んでいないのに私のお腹の下の方まで疼いてきた。


「一緒に気持ち良くなろう?そして、これからも一緒にいましょ、先輩。」

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