第3話恋の奴隷 完結編

あれから2カ月が過ぎた。

私と彼女の関係は未だ変わっていなかった。

ただ、、お遊び調教に関しては以前もエスカレートしていき、保健室でもするようになった。

でも、それはさすがに先生がいない時。


そんな今日この頃、ある人に屋上に呼び出されていた。

私は時間になると屋上に足を運んだ。


「ごきげんよう。今日はどうしたんですか?」

「…‥…」


屋上に行くとすでに呼び出し人は来ていた。

まずは挨拶をと思ったけど、無視されてしまった。

それにしても先ほどから起こっているような睨んでいるような顔。

あまり良い話ではなさそう。


「流石に何か言ってくれないと困ります。美瑠玖をまたしているんでなるべく急ぎたいで話してほしいのですが……。」

「最近、美瑠玖さんの様子おかしいと思いませんか?」

「そうですか?私は普通通りだと思いますよ?」


すると、さらに険しい顔へとなった。

私はそのような顔をされる覚えはないけれど。


「私この前見たんです。美瑠玖さんと愛奈さんが保健室である事をしている所を。」

「ある事‥…ですか?はて、何の事でしょ?私たちはおかしなことをした覚えはありませんよ?」

「ふざけないでください!!」


怒鳴るように叫ばれた。


「あらあら、淑女としていかなる時も荒げてはいけませんよ?品位を疑われますよ、?」


私を呼び出していたのは、委員長さんだった。

だからこそ、ここに呼ばれた意味が分からない。


「あなたにそのような事を言われる筋合いはありません。私はあなたの事を信じていたんですよ。美瑠玖さんをいじめから助けてあげて、告発もしたのに。‥…なのに、あなたもいじめをするような人だったなんて……。」


という事は、委員長さんが言っていたある事とはお遊び調教の事なのでしょう。

ただ、彼女は勘違いしている。


「何か誤解をしていらっしゃいますね。」

「誤解?何がですか!あれを見て、誤解だって、まだ白を切るんですか!!」

「確かに、そう思われるようなことを私はしていたかもしれません。ですが、それは頼まれての事です。私はしたくてしていたわけではありません。」


私は真実を言った。

でも、美瑠玖から頼まれたことは隠して。


「頼まれてですって!誰ですか!」

「さあ、誰でしょう?それに、それを聞いてどおするんですか?もしかして、やめさせるつもりですか?」

「そうです!こんなことあってはいけません!!」


何と言う正義感。

彼女なりの信念と言うものがあるのでしょう。


「ですが、教えることはできません。」

「なんでですか!」

「話は最後まで聞いてください。教えない代わり……今後あのような事をしないと約束しましょう。」


すると呆気にとられていた。

私が素直にこういうとは思っていなかったんでしょう。

わたしだって、元々はやりたくなかった事。

それに、こちらの方が面白そう。


「これでいいですか?」

「それで信じてもらえると?」

「なら、今後は美瑠玖の面倒を見るのをあなたに任せましょう。ちゃんとそれなりのお金も用意します。それで声を雇うなりしてもよろしいですよ?もちろん毎月100万以上は用意さしてもらいます。口約束がダメならちゃんとした場所で契約書をしてもいいですよ?」

「今更‥…どうして……。」

「元々やりたくないことをやっていたんです。だから、あなたに任せれば一安心です。それと、今から美瑠玖を呼んでもいいですか?あの子にも今後自由の身だと伝えたいのです。」

「分かりました。」


そして、私は彼女屋上に来ることだけを伝えた。

もちろん委員長さんに監視されながら。



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私は、少し期待していた。

もしかしたら、今日で終わりにできるかもしれないと。

あの間違った結果を覆せるかもしれない。

今ならまだ間に合うのではないかと‥‥。


それともう一つ。

美瑠玖がまた私を楽しませてくれるのではないかと……。


私が連絡すると、美瑠玖は息を切らせながら屋上へあがってきた。

彼女は私たちを見ると、怪しげな雰囲気を感じ取ったのか心配そうな目を向けた。


「怯えなくて大丈夫よ。」


私はにっこりと笑顔を向ける。

すると、美瑠玖も表情が和らいだ。

でも、そんな顔をされると、気持ちが高揚してしまう。


「実はね、あなたにちょっとお話があるの。」

「は、はい!」

「実はね、今日からあなたは私のもとに来なくていいわ。」

「え‥…。」

「実はね、委員長さんにバレてしまったの。だからもうこれ以上はしないわ。いえ、出来ないかしら?どちらにしろ、これ以上私は何もしないのであなたは自由の身です。」


そう伝えると、美瑠玖は固まってしまった。

でも、私は喋るのを止めない。


「それと、これからは委員長さんを頼ってください。彼女のおうちで面倒を見てくれるという事になりましたので、今日からそちらに引っ越してもらいます。‥…それと、お金の面は罪滅ぼしとして私は出しますので安心してください。」

「…‥…愛奈様は、それでいいんですか?」

「ええいいわよ。私はあなたの事が好きだから、これ以上酷い目にあわしたくないの。だから、ここでお別れ。じゃあね。」


彼女に最後の挨拶を済ませると、委員長さんの方に向き直った。


「それでは最後のあいさつの方も済ませたので、契約書の記入を済ませましょう?」

「わかりました。私はこちらに記入したので、後は愛奈さんの名前を書くだけです。」


私は委員長さんから契約者を渡してもらう。

私は持っていたカッターとペンを取り出す。


人差し指を軽く切り、出てきた血をペンに吸わせる。

血をインク代わりに、私はゆっくりと名前を書いていく。


名前の殆どを書き、後は『愛奈』の『奈』を書くだけ。

その時事が起こった。


書きかけの契約書を美瑠玖に取られてしまった。


「美瑠玖?何をしているのかしら?あと少しで契約は結ばれます。返してください。」

「そうだよ美瑠玖ちゃん!これであなたは……」

「ダメ!!!」


屋上全体を震わせるほど彼女は叫んだ。

今までにいた事のないほどの大声。


「私には、私には、愛奈様が!!」

「いい加減にしなさい!それを返しなさい!」


まるで子供の我がままのようだった。

だから私は、親のように厳しく言った。


「いやです!私は、私には、愛奈様がいないとダメなんです!愛奈様しか!!」


これには委員長さんも面食らってしまっていた。

委員長さんからしてみれば、美瑠玖が喜ぶと思っての行動。

なのに、美瑠玖本人から否定されたのだ。


「美瑠玖さん、何を言っているんですか!愛奈さんはあなたに色々と酷いことをしてきたんですよ!?それなのにどうして!?」

「愛奈様は酷い事をしていません!か、勝手に決めつけないでください!そ、それに、こんなもの!!」


彼女は契約書を両手で持ち、引き裂いた。

そして、跡形もなくびりびりに裂いた。


「な、なんてことを‥‥。どうしてですか!それがあればあなたは……。」

「勝手に決めつけないでください!愛奈様は私のためにしてくれていたんです!それに、私を救ってくださる人は愛奈様だけなんです!愛奈様を‥…愛奈様を私から取らないでください!!愛奈様は、私の‥‥私だけの崇拝者ご主人様なんです!だから、邪魔しないでください!!」


まさかそこまで私の事を思っていたなんて。

とても嬉しい。

今にも犯してあげたい。

でも今は我慢。

まだその時ではない、この先がまだある。


「美瑠玖、あなたの気持ちは十分分かったわ。」


私は一歩一歩と美瑠玖に近づく。

すると彼女は頬を和らげ、まるで救われたかのような笑みを見せる。

だからここで、彼女をどん底へ叩き落す!


「でもね、そろそろ大人になりなさい。私とあなたの関係は周りから見ても異端なの。それに、あなたはあの時救ってあげた私を美化して見過ぎている。一種の依存みたいね。あなたはもうどこかで壊れてしまっている。本当に治療しないといけないわ。私がいなくても大丈夫でないとダメなの。だから、私とあなたは距離を取らないといけない。分かるでしょ?」

「な、何で…。愛奈様なら、分かってくれると……。」


彼女は崩れ落ちた。

信じていた人に理解してもらえない。

これほど残酷なことをされて、平常心を保てるわけがない。


「あ、愛奈さん、流石にそれは言い過ぎでは…。」

「何を言っているんですか?あなたから言いだしてきたことですよ?」

「そうですが…」

「あなたは甘すぎますわ。だから美瑠玖のような人が生まれるのですよ?」


彼女は悔しそうに眼をそらす。

もう見ていられないようだった。


「嫌だ、嫌だ…。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」

「あなたは本当に‥…」


美瑠玖は往生際が悪く、私の足元にすがってきた。

まるでは大切なものを必死に守るように、話さないようにしていた。

一瞬その忌々しい姿を見て蹴ってしまおうかと思ったけど、やめた。

彼女が次にどんな言葉を放つのか気になったから我慢することにした。


「私を捨てないでください!私は愛奈様のもなんです!私はあなたに捨てられたら、もう居場所がないんです!だから捨てないでください!これからどんなことを言われても言う事を聞きます!どんなことをされても文句を言いません!だから私を一人ぼっちにしないでください!私はあなたのちゃんとした奴隷になります!名前も奴隷と改名してもいいです!だから捨てないでください!!っもうこれ以上私を一人にしないでください!」


少しは面白い内容だったけど、魅力を感じない。

そんなことをされても困るだけ。

だから、私は体をかがめ、彼女と同じ目線に立つ。


「やはりだめですね。」

「どうしてですか!私は、私は!!」

「別にあなたの居場所がなくなるだけではありません。ちゃんと委員長さんがいてくれます。それに、私のところに居るよりもよりいいかもしれませんよ?それに、委員長さんはとても優しい方です。私よりもあなたの事を大切にしてくれます。痛い思いをしなくて済みますよ?」


それでも美瑠玖は涙を流し、私に訴えてきた。

”捨てないでください”

その一言を言い続ける。

私と言う名の鳥かごを彼女は気に入り過ぎて飛び立つことをやめてしまっている。

拒絶しているのだ。

だけど、そんなことを周りを許してくれない。


だから、本当の最後にと彼女に提案する。

この条件を飲めればあなたを一生私のもとにおいておくと。

あなただけを愛しいじめ続けると。


「私はどんな条件でも必ず‥‥!!」

「なら、ここで服を脱いで委員長さんに土下座をしてください。土下座で言う言葉はもちろん、『私は愛奈様の奴隷なのでこれ以上私たちに口を挟まないでください。もう、愛奈様に変なことを吹き込むことはやめてください』って言うのよ?さあ、あなたは出来るかしら?始めましょうか、儀式けいやくを!」


彼女だけに聞こえるように耳元でささやいた。

これが出来れば、私も美瑠玖の覚悟を認めざる終えない。


「美瑠玖さんに何を‥‥!?」

「提案をしただけですよ。ある事をすれば、私が死ぬまで面倒を見ると。」


私の怪しげな笑みに何かを悟ったのか構えていた。


「私は何もしませんよ?ほら。」


私は両手をあげて立ち止まる。


「あくまで美瑠玖に行動をさせるだけです。それに、美瑠玖がこれをできなければあなたのもとに行く。問題ありませんよね?」


彼女はゆっくりと構えを解いた。

でもまだ案獅子きれていない様子。

それに美瑠玖も心の準備が整っていないのか全然動かない。


「美瑠玖、私をあまり待たせないでください。すぐに始めないのであれば条件を満たせなかったと見なしてもいいのですよ?」


美瑠玖は、制服の第一ボタンに手をかけた。

ただ、手は震え中々外せない。

それに、今さらと言うのに羞恥心で体をうまく動かせていない。


それでも、私のために動いている。

やっと第一ボタンを外し、2つ目へ。


「み、美瑠玖さん、いったい何を!?」

「いけませんよ?これは条件です。だから、あなたは手を出さないでください。」


私は委員長さんに注意した。

飛び出そうとする彼女の前に立ちふさがって見せた。


「あなたいったい何を…!?」

「無理難題を押し付けているだけですが?こうすれば美瑠玖もあなたのもとに行くでしょ?」


ただ、彼女の意志以外でこの儀式けいやくを破棄させない。

あくまで、彼女の意思を尊重させるものだから。


委員長さんを止めているあだにどんどん脱いでいく。

頑張って、脱ぎ捨てている。


「下着も外してくださいね?」

「!!」

「な、それは!?」


恥ずかしそうにしながら下着のフックに手をかける。

そして、最後はしたのを脱ぐだけ。


「愛奈さん、今すぐやめさしてください!こんなところで女の子があんな格好をしていいわけないでしょ!?」

「何を言っているんですか?これが条件なんですから止めさせるわけないでしょ?それに、これなら美瑠玖はしないと踏んでの事です。それでもするという事はもう分かっているのではないですか?」

「……っ!」


そして、全てを脱ぎ捨てる。

そして、委員長さんに向かって土下座をした。


「私は愛奈様の奴隷です。」

「駄目、もうやめて!」


それでももう止まらない。

止められない。


「なのでこれ以上私たちに口を挟まないでください。」

「聞きたくないです!」

「もう、愛奈様に変なことを吹き込むことはやめてください。」


弱々しくも彼女は言い切った。

私のだした条件を満たし儀式けいやくをすませた。


「どうして‥。あなたはそこまでも…。」


委員長さんは絶望してしまっていた。

救う筈の子を救えなかった。

彼女を絶望させるにはあまりにも大きな出来事だった。


でも、それはしょうがない事。

私と美瑠玖は壊れてしまっていた。

もう救えない程に壊れてしまっていたのだから。


私は美瑠玖の所へ掛けより服をかけてあげる。

彼女は泣きながら、それでも自分と戦い続けていた。


「これで、私は一生愛奈様のもと‥‥。」

「えぇ、頑張りましたね。もう服を着ていいですよ。あなたは自分に打ち勝った。えらいですね。」

「はは、はははは!ははははは!」


彼女は泣きながら笑っていた。

最後の人間としての大切なまだ壊れていなかった部分をやっと壊した。

この私の手で壊したのだ。

それが、言い表せない程に嬉しかった。




――――――――――――――――――――――

――――――――――

――――

――



それから月日は流れ、私と美瑠玖は学校をやめた。

突然の出来事で、クラスの人達が大騒ぎしてると聞いた。

これは最後まで私たちの味方でいてくれた保健室の先生からの話だった。


「それにしもよかったんですか?一言ぐらい伝えた方が‥…。」

「いいんです。委員長さんは分かってくれると思います。ただ、先生に一つお願いをしてもいいですか?」


私はいつものように指を4本立てる。


「喜んで!と、言いたいですが、最後ぐらいただ働きでいいですよ。そこまで落ちていませんからね。」

「そうでしたか。」


冗談めかしに言って見せた。


「では、委員長さんが気をとしている時は寄り添ってあげてください。学園で彼女から話しかけてくれていたことは、私にとって日常生活のガス抜き見たいなものだったんです。学校に来ることが楽になったのも彼女のおかげなんです。だから、落ち込んだりしている彼女を誰かが支えてあげて欲しいんです。」

「分かりました。」


先生には学園での最後の心残りを託した。


それから学校をやめた私たちは、お父様の元へ向かった。


「入りなさい。」

「失礼します。」

「し、失礼、します。」


美瑠玖は初めて入る部屋でとても緊張している。

私も悟られてはいないものの、緊張していた。


「座らないのかい?」

「いえ、立ったままで十分です。」

「そうかい。それで、話と言うのはどういう事かな?それに、学校も勝手にやめたそうじゃないか?」


早速情報を仕入れていた。

まだ伝わっていないと思っていたが、うちのネットワークを甘く見過ぎていた。


「申し訳ありません。それに関して今から話そうと思っていました。」

「そうなのかい。……その前に聞きたい。お前も、亡き妻のように私の前から消えるのかい?」

「……申し訳ありません。親不孝な私を許してくださいとは言いません。ですが、認めてください。私は、彼女と2人だけの場所を求めてこの鳥籠から出ていきたいと思っています。」


お父様は、持っていた書類を一度机に置いた。

そして、椅子を回転させ背中を向けた。


「お前も、私の前から姿を消すのか……。それの気持ちに嘘はないんだな。」

「はい。私の名前を捨ててでも。」


名前を捨てる。

それは家族から縁を切るという意味だけでない。

この世界から私を抹消するという事。


「なら、そちらの子にも聞こう。君は、娘が何処へ行こうともついて行くのかい?」

「私は、愛奈様に救ってもらった日から、覚悟を決めています。愛奈様が行くのであればどんな場所でもついて行きます。この身はすでに愛奈様のものです。 」


とても嬉しい事を言ってくれる。

それに、面と向かってお父様に意見するのは初めてだ。

彼女の成長は嬉しい限りこの上ない。


「なら何も言わない。好きなようにすればいい。ただ、名前はここに残す。帰りたくなったら、いつでも帰っておいで。」

「っ……ありがとうございます、お父様!!」


お父様は背を向けて許してくれた。

背を向けて、涙を見せないように優しく言ってくれたのだ。

それがとても嬉しくて、感謝しきれなかった。




=====================




「愛奈様、本当によろしいのですね。」

「ええ。メイド長、今までありがとう。そして、ここに集まってくれたみんな、今までありがとう。」


家の前に集まった全メイドと全執事。

ただ、お父様だけがそこにいない。

お父様だけは、大事な仕事でここにはいない。


「そう言えば忘れていましたが、この鍵を受け取ってください。」


私はお父様に渡しそびれた一つのカギを取り出した。

それを目の前にいるメイド長に渡した。


「それは私の部屋にある金庫のカギです。」

「それをどうして…。」

「それをお父様に渡してもらいたいのです。」

「それなら、直接渡されたら‥…」


私は首を横に振った。

だって、お父様ならきっと私から渡しても受け取ってもらえないから。


「それでは行きますね。美瑠玖、行きますよ。」

「は、はい!」


私は歩き出した。

美瑠玖は彼女らしく、全メイドと全執事に頭を下げ、私の後ろを歩いてきた。


「愛奈様、荷物はこれだけでよかったのですか?」

「えぇ。後の物は現地で調達すればいいわ。それに、あなただってあまり荷物を持ってきていないじゃない。よかったの?」

「私は、愛奈様がいればそれ以外は望みません。」

「嬉しい事を言ってくれるわね。でも、女の子だから可愛い服を着ないとダメよ?」


私は美瑠玖にどんな服を着せようかと悩みながら目的の場所を目指した。

飛行機を使って県をまたぎ、電車を乗り継いだ。

そして、懐かしさのある目的の場所へとただりついた。


「美瑠玖、着いたわよ。」


彼女は目を輝かせた。

周りには何もないけれど、その真ん中に立派な一軒家が立っている。

元の家に比べれば大きさは劣るけれど、それでも、一般のお家と比べれば文句なし。


「鞄を渡してもらえる?」

「は、はい。」


預けていたカバンを受け取る。

その中に入っているアルカードを取り出し、入り口の扉にかざす。

すると、鍵の開く音がして、扉が勝手に開いた。


「さ、中に入りましょ?」

「し、失礼します。」


中に入ると、とてもきれいな玄関だった。

リビングの方に行っても、白一色でどこにも汚れのない部屋。

誰もいないのに、ずっと放置されていた家なのに汚れ一つない。


「やっぱり、設備はちゃんとしているようね。これなら安心して暮らしていけるわ。」

「こ、この家はどうしたんですか?」

「ここはね、お母様の隠し財産と言ったらいいのかしら?」


この家は、お母様が生前密かに買い取っていた家。

正しくは、この敷地がお母様の物。


ここは、お母様がお父様と私とゆっくりとした時間を過ごすために用意してくれていた場所。

周りの目を気にせず仕事を忘れて、ただ一般の家族として過ごすために用意してくれていた場所だった。


今では、お母様は亡くなり、忘れ去られてしまった私有地。

ただ、お母様は私にだけ教えてくれた。

正しくは暗号だけを残してくれた。

私はお母様の最後の言葉を頼りにここを去年見つけ出しばかりだった。


ただ、私も時間は空いていなくて、場所の関係もあって訪れられなくて今日初めてだった。

設備などの把握だけは出来ていたため、ここなら大丈夫ではと思っていたが当たりだった。


本当は、ここはお父様と私で来るはずだった場所。

ちゃんと綺麗にしてからお父様を招待しようと思っていた場所。


「今日からは2人だけ。最初の内は不便かもしれないけど、頑張っていきましょう。」

「はい!」


ここからやっと始まる。

私と私の大事な恋人との生活を。

何もかも投げ捨ててゼロになった私たちが、これから始めましょう!




――――――――――――――――――――――

―――――――――――

―――――

――




「本当に、よくここまで育ったよ。本当に君に似てすばらしい子に育ったよ。」


飾ってあった写真立てを手に取る。

それは昔家族3人である場所で取った家族写真。

愛奈が5歳のごろ訪れたとある場所。

君が良く気に入っていた場所であり、僕が告白した場所。


「それにしても、愛奈は本当に君にそっくりだ。外見だけでなく内面も。そして、資産家であった君の部分もまたちゃんと遺伝しているよ。一人で、嫌二人で生きて行けるだけの力を持っている。まるで君の写し鏡のようだ。」


本当に末恐ろしい子に育った。

僕に内緒で何億と言う金を動かし、倍以上の利益を者にしている。

そして、その利益の何割かを僕に譲歩しようなんて、親不孝と彼女は言っていたけど、僕こそ親として失格だ。

そして、僕が知りえなかった君が残してくれたとっておきの場所まで見つけるなんて本当に立派に育った。

親不孝なんてかじゃない。

ちゃんとした親孝行をできているじゃないか。


「それに、僕だけに招待とは、ぜひ今度遊ばしてもらいに伺うよ。」


愛奈の部屋に合った倉庫。

そこには一つの通帳と手紙、とある電子カード。

通帳には14桁以上の数字が並べられていた。

手紙は私宛のも。

そして、その電子カードは謎に包まれていた。


まずは、手紙を読ませてもらうことにした。


拝啓お父様へ

これまで本当にありがとうございました。私のワガママをいつも許してくれたお父様にとても感謝しています。私がこのような性格だからこそ手を焼くことも多かったと思います。それでも、笑顔で私と向き合ってくれたことをとても嬉しく思いました。立派な父親でるとそれこそ自慢できるほどです。ですが、最後の最後まで私は、お父様に何もできず、ただ迷惑しかかけなかった最低な娘です。このような親拭くもので本当に申し訳ありません。だからこそ、その罪滅ぼしとしてこの私の資産の一部を受けとってほしいです。これは私が正規のやり方で手に入れた資金です。ですからか使っても何も問題ありません。だから、これをメイド、執事と共に使ってほしいです。これは皆さんへに感謝と私を育ててくれた謝礼でもあります。とても少ないお金ですが、使ってほしいです。そして、お父様もう一つだけ使ってほしいものがあります。それは一緒に合るはずの電子カードです。このカードに書かれてある大文字の英語をパソコンのキーボードに書かれてある者に当てはめてください。そして、キーボードに書いてある平仮名に変換して読んでください。そうすればとある場所が浮かび上がるはずです。そこに一度でもいいので来てください。私たちはいつでも待っています。お母様と共に待っています。ただし、1人だけでお願いします。私たち家族だけの場所へ。


それを読んで、すぐさま私は調べた。

そして辿り着いた答えは、君との思い出の場所だった。


「あの子は本当によく育ったよ。」


何度も涙と共にその言葉を流すのであった。






=============================





「そこの少年や、どうしたのかしら?」


私の声に反応して、飛び上がる少年の姿を見た。


「少年、名前は?」

「…‥…みなと、です。」

「男の子なのに可愛らしいお名前ね?それで、どうしてここに来てしまったの?」

「道に、迷ってしまって……。」

「そうなの。ご両親の方は?」


少年は険しい顔をして首を振った。

これは、あまりよさそうな話でないと理解した。


「ともかく、ここに居ても何もないから、一旦私の家へ連れて行ってあげる。」

「……いいんですか?」

「えぇ。でないと連れて行くなんて言わないわ。」


私は少年の手を握ってあげて案内する。

少年は嬉しそうに私の後についてきた。


「愛奈様何処に行って‥…て、どうしたんですか!?浮気ですか!?」

「違うわよ。困っていたからとりあえずここまで連れてきたの。」


美瑠玖は私と2人で過ごすにつれて本当に大人になった。

こうして誰の前でも声が出せる。


「美瑠玖、お客様をもてなす準備をしてもらえる?」

「分かりました!」


私たちの生活は、今でも充実していた。

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