第2話 ハネムーン

魔法使いの世界では、上昇気流に乗っかってお空高く舞う遊びを『ハネムーン』と呼んでいます。

ひねもすとタマオちゃんは可愛い羽根をパタパタさせながら、尾っぽを上にして舞い上がる格好が大好きでした。

こうすると、素敵な宮殿がくるくる回りながらどんどんちいさくなっていくのです。

初めの頃は目が回って気を失いそうになったひねもすも、タマオちゃんからのアドバイスを貰うと上手にハネムーン出来るようになりました。


くるくる回る宮殿と広大な森の虹色の世界。

オレンジ草や三日月草の垣根で囲まれたレンガ造りの建物の町は、沈みかけのおひさまに笑われていて、灯る明かりもまばらです。

海辺の水車クルクルの群れの先に、まあるい水平線が見えるくらいまでひねもすとタマオちゃんは舞い上がっていきました。


『えっへへへ。ひねもすぅ!あたしの方が高いもん』


タマオちゃんは自慢げにからだをくるりとひるがえして、今度はシュッと羽根をたたんで真っ逆さまに落ちていきました。

山吹色のてっぺんまではまだまだいけそうにありません。

桃色に染まりながら、ひねもすも羽根をたたんでタマオちゃんの後を追いかけました。


『負けるもんか。ぼくだって』


ひねもすはタマオちゃんのぷりぷりおしりから目を離さないように、ぱちぱちと瞬きをしながら向かい風へ突進していきました。

今度はぐんぐんと地上が迫ってきます。

水平線はあっという間に見えなくなって、町並みも視界からなくなって宮殿の森の茜色やオレンジ色が迫ってきます。

宮殿の中央塔の大時計が見えてくると、タマオちゃんは再びくるりと向きを変えて、低くなったお城の垣根めがけて突っ込んでいきました。

ひねもすもドキドキしながら後を追いかけます。

目の前に迫る垣根には2つの穴があって、細長い穴はひねもすのトンネル。

まん丸の穴はタマオちゃんのトンネルです。

早く通り過ぎた方が今日の勇者なのです。

タマオちゃんはちょこちょこと振り返りながら言いました。


『あたしの勝ちだもん!』


『ぼくだって!!』


ひねもすは思い切り足と首をピーンと伸ばしました。

すると不思議とからだが回転を始めて、タマオちゃんを抜き去ってトンネルをくぐり抜けたのです。

驚いたタマオちゃんは、垣根にぶつかりそうになりながら。


『すごいよひねもすぅ!』


と言って、疲れ切ってひっくり返るひねもすのお腹の上でぴょんぴょんと飛び跳ねました。


ー王様のお部屋には、パフパオの実で出来た桜色の紅茶のあまい香りがしています。

ツンツンとした風が吹くちょうど今頃。

紅茶がいちばん美味しくなるこの季節を、宮殿のみんなは楽しみにしていました。

ハネムーン疲れでクタクタになったひねもすとタマオちゃんは、浅めの花柄のティーカップの中にちゃぽんと浸かって、ほやほやのぬくぬくを味わいながら夢見ごこち。

疲労回復、羽根痛、腰痛、リウマチ、クチバシ疲労にも効果があるパフパオのお風呂は、シマエナガ達にも大人気でした。

そんなひねもすとタマオちゃんを見ながら、パパさんは笑っています。

王様らしい立派なあご髭を揺らしながら。


『わあっはっははは』


タマオちゃんがパシャパシャするのを見て。


『わあっはっはは』


と。

ひねもすは何がそんなにおかしいのか、不思議でなりませんでした。

ママさんはとっても美しいお妃様で、赤栗色の長い髪の毛は、やさしく流れ落ちる小滝のようにツヤツヤと輝いてます。

ぱっちりした目を細めてアルバムを眺めながら。


『ひねもすとタマオちゃんにも考えてほしいの。スカーレットの婚約者にふさわしい方を。わたくしだけでは判断がつかなくて』


と言って、パフパオのお茶をすする口もとは嬉しそう。ひねもすはお風呂からあがって羽根をプンプン振りながら言いました。


『ぼくたちなんかにお嬢様の大切な人を選べるかなあ。だってだって、愛するなんてとっても美しいことは写真だけじゃわからないもの。なんだか恐ろしくなってイケナイことみたいな・・・』


ほやほやのしずくが、ティーソーサーの上に模様を描いています。タマオちゃんもお風呂から出て羽根を震わせて言いました。


『ひねもすは真面目なんだから。ママさん達といっしょに楽しみながらお写真眺めましょ。それかみんなでダンスパーティーとか開くのも素敵じゃない? 』


その言葉にママさんが反応しました。


『ダンスパーティー? いいですわねえ。お話もできるしなんとなくお相手の印象も判るし、ダンスパーティー素敵ですわ。ねえ。あなた』


『わあっはっははは』


『実はわたくし達の出会いもダンスパーティーでしたの』


そう言って頬を赤らめるママさんを見て、パパさんはまた笑っていました。

こうして、ダンスパーティーは開催される運びとなったのでした。


・・・ところが。


ダンスパーティー当日の朝でした。

会場になるはずの宮殿広間の床一面に、それはそれは可愛らしいきのこ達が一斉に生えてしまったのです。

紅い傘に白い斑点のきのこの上で、タマオちゃんは首を傾げで言いました。


『なんできのこ?』


ひねもすには判っていました。

この一大事はスカーレットの魔法の仕業だと。

彼女をうんと叱るつもりで部屋を飛び立とうとした時でした、ドアの前できのこ達を眺めていたママさんとパパさんの話し声が聞こえました。


『困りましたわねえ。もう中止する訳にはいかないですし、かといってきのこ達を片付けるには時間もかかりますし、どうしたら良いのかしら。ねえ、あなた』


『わあっはっははは』


『わたくしも張り切ってましたのに・・・ねえ、あなた』


『わあっはっははは』


『あら。そうだわ! でしたらいっそのこと、お庭できのこパーティーにしましょうかしら?バーベキューパーティーですの。ねえ、あなた』


『わあっはっははは』


2人の話を聞いていたタマオちゃんは大喜びしながら、部屋中を飛び回りました。

ひねもすも気持ちは同じでしたが、スカーレットを叱る役目に、ちょっとだけ羽根が重たく感じてもいたのでした。


プリンセス・スカーレットの見ている魔法使いの世界の景色は、他のみんなが眺めている色合いとはどうやら違うみたいです。

風やおひさまや草木のにおいは、度がすぎるくらいにやさしくて。

小鳥のさえずりやミツバチたちの羽音、それに小川のせせらぎは、スカーレットにとって哀しいくらいに心地のよい音を周囲に響かせていたのでした。

ためらいもなくー。


情熱的な愛も、刺激的な略奪も。

破滅的な独占欲や、魅力的な嫉妬心も。

魔法使いの世界には存在しないのです。


切れ長で、若々しく潤んだグリーンの瞳は大きくて、スッと通った鼻筋は強くてたくましい意志を感じます。

けれど、かわいい小鼻と厚ぼったい唇には幼さが残り、わずかに張った顎から長い首筋にかけての、白くて艶やかな肌はとても魅力的です。

おさるさんみたいに開いた両耳の、ぶどう型のイヤリングがスカーレットが喋るたびに揺れていました。


『私は生まれてくる時期を間違えてたんだわ。ホントにそう。この世界には真の英雄も勇者もいない。情熱的なキスだってないのよ。そして胸を焦がす程の出会いもないまま死んでいくの。500年の途方もない無駄な時間の浪費よ。あーあ、生きるってなんなのかしら?教えてちょうだい。ひねもす』


姿見の上で毛を膨らませたひねもすを、スカーレットはジッと見つめました。緊張している証拠。次に言うことを考えている証拠。ひねもすの癖を見抜いていたスカーレットは、悪戯な笑みを浮かべてコルセットの位置を胸元へと少しずらしました。

汗で蒸れるのが気持ち悪かったからです。

スカーレットはしばらくの間、くちばし籠るひねもすを見ていましたが、だんだん気の毒になって。


『わかったわよ。悪かったわひねもす。魔法を使ったのは反省してるわ。もうしないと誓うわ。けれど私はこのまま歳をとりたくはないの。闘いの時代の方が私には合っていたのよ。最近思うの。可笑しいでしょ?』


と、謝りました。

ひねもすはやっとくちばしを開いてくれました。


『ぼくはそうは思わないよ。けれどそれはないものねだりじゃないかな。スカーレットは今幸せかい? パパさんママさんだってとっても良い人なのに』


『・・・そうだけど、つまらないのよ』


『つまらないのかい?』


『うん』


『ぼくは時間の問題だと思うんだ』


『いくらおめかししても虚しいだけ・・・』


伏し目がちに話すスカーレットを見て、ひねもすも孤独なプリンセスを気の毒に感じてしまいました。


長いまつげはくるんとカールしていて、白目は青みがかっているスカーレット。その淋しそうな目に、ひねもすはこれまで何度も同情してしまいました。

しかし今回は違います。

教育係としての使命をきっちりと果たすべく、心を禁断の谷の法皇(人間界で言う心を鬼にして)にして、くちばしを酸っぱく、スカーレットにうんぬんかんぬん。あーだこーだ。どーのこーのと諭して聞かせたのでした。

そこまでさせたのは、タマオちゃんの水車クルクルに懸ける情熱と、羽根をビシッと敬礼させた瞬間のカッコよさがあったのでしょう。

しかしひねもすには、身近すぎる存在が自分の心に影響しているなどとは思ってもいませんでした。

いい加減聞き飽きたスカーレットは言葉を遮るように言いました。


『そんなにピーチクパーチク言わないでよ』


『ピピ、ピーチクパパ、パーチク・・・』


『そうよ。私だって反省してるんだから。ひねもすには敵わないわ。これからも私のかけがえのない大切な先生でいてね。あなたがいないと私はダメなの。それよりもどうかしら?』


スカーレットは、ふわりとカールさせたミディアムヘアをサイドのリボンでまとめていました。くるりと一回転して見せると、絹みたいな黒髪が風に踊ってとてもいい匂いが漂いました。

ひねもすはすっかり魅せられて、さっき言われた。


『ピーチクパーチク』


なんてどうでも良くなってしまいました。


『ぼくはとてもすてきだと思う。スカーレットは奇麗だよ』


『そお?ありがとう。ダンスパーティーは取りやめになったからBBQドレス探したんだけどどお?美しくてかわいいきのこたちに負けないかしら?』


スカーレットは自分がしでかした事は宮殿の時計台に置いといて(人間界で言う自分がしでかした事は棚に上げて)両肩を惜しげもなくむき出しにした、白地に緑の蝶々柄をあしらったパーティードレス姿でモデルさんみたいなポーズを決めました。

ところが、ロングスカートの裾を踏んづけてしまって危うく転がりそうになってしまいました。


『もうっ!こうするんだから!』


ふくれっ面のスカーレットがスカートを捲し上げてビリビリに割くと、すらりと伸びた細い足が露わになりました。

ひねもすは風邪をひかないか心配になりましたが、もし生まれ変わりがあるとしたらスカーレットみたいになってもいいかなと考えていました。


人間界でも一部の地域で生息しているカエンダケは、ちょっともぐもぐしただけでも生命をなくしてしまいますが、魔法使いの世界のカエンダケはすこし違っています。

ホニャラ湖と呼ばれる湖底に群れで自生しているのです。

色はほんのりと桜色で、食べることはできませんがきのこのみをグリル出来る力があるのです。

陸地に引き揚げられたカエンダケから放たれるグリル波は、他のきのこたちから出るうまみ成分と反応して遠赤外線に似た熱を発します。

これらはひょんなことから発見されたのですが、その『ひょん』はいまだに解明はされていません。

でも良いのです。

おいしいものを皆で笑いながらもぐもぐと出来るのはとても幸せなのです。


宮殿正面に広がる大庭園に集まった紳士淑女たちは、王族でも貴族でもありません。皆お洒落に着飾って上品に振る舞っていますが、ほとんどはごく普通の家庭で暮らす、ごく普通の住人達です。ただ一つ違っているのは、みな魔法使いであるということー。

めらめら燃えるカエンダケの上に置かれたペペタケは、網の上で反り返って香ばしく焼けています。

それを美味しそうに頬張るサマンサと夫のダーリンは、町で印刷屋を切り盛りするおしどり夫婦で有名です。

その隣でみぴょこタケに舌つづみ舌鼓を打っているのは、キャラメラ国一の美男美女と評価の高いアラドロとナスキン。先祖代々靴屋を営んでいます。

スカーレットは一人一人とあいさつを交わしながら、立ち話をしてはきのこをパクリ。また立ち止まってはパクリと、与えられた使命をこなしていました。

ただ多すぎる来訪客に疲れてしまった終盤。スカーレットの言葉は決まり文句みたいになってしまったのです。


『あらこんにちわ。ごきげんいかが?』


『あらこんにちわ。楽しんでくださいね』


『あらこんにちわ。ごきげんよう』


等々、しまいにはふてくされて木陰に座り込んでしまいました。

平和な世界にはナンパや駆け引きもありません。

もちろん不倫や美人局やアブノーマルもありませんから、大勢が集まる場でもドキドキハラハラといった出来事は起こらないのです。

スカーレットは大股を開いて空をぼんやりと眺めました。

するとひねもすとタマオちゃんが飛んできて、両膝にちょこんと乗っかりました。


『ぼくはダメだと思うんだ。乙女がそんなカッコじゃいけないよ。はしたないから足を閉じて早く早く』


早口でまくし立てるひねもすに、スカーレットはむっつり顔で言いました。


『そうかしら?とても私がしている行為がはしたなくて不純なものには思えないわ。だって私に興味を注いでいる好奇な目。熱い視線なんてどこにあるのかしら?平和な世界じゃそんな情熱も存在しないわ。みな臆病なのよ。なんなら生まれたまんまの姿でもお見せしようかしら・・・それも虚しいだけ』


スカーレットの言葉にタマオちゃんが反応しました。


『スカーレットかわいそう・・・』


その瞬間、スカーレットは顔を覆ってしくしくと泣き出してしまいました。


すると背後から。


『コッコオキュワキュワ、コッコオキュワキュワ』


と、魔法使いの世界で有名な大フクロウ・ンジャメナのの鳴き真似をする声が聞こえます。

とてもヘタクソな声の主を確かめたくて、スカーレットは両手を地面につけたまま思い切り仰け反りました。

天と地がひっくり返っる景色の中、ヌッと巨木の陰から出てきた紳士がスカーレットの顔を覗き込んで笑いかけています。

びっくりしたと同時に、かあっと顔を赤らめたスカーレットはサッと足を閉じて立ち上がりました。

ひねもすとタマオちゃんはその弾みで草の上に転がってしまいましたが、紳士の頭の周りをパタパタと飛び回って、ハンティングキャップにいつ止まろうかと考えてました。

スカーレットは言いました。


『ひどいですわレット様。いつからそこにいらしたの?』


レット様と呼ばれた紳士は、ピョコラ国の王族のひとりで、端正な顔立ちと引き締まったスリムな体型は女の子たちの憧れの的でした。

カーキ色のジャケットに黒パンツ、チェック柄のハンティングキャップがいつものスタイルです。

レットは目を細めて。


『今出るべきじゃないと思ったんでね。取り込み中かな?』


『もお。意地悪にもほどがあります』


『すまなかった。だけどスカーレット・・・』


そう言うとレットは、スカーレットの顎先を長くて綺麗な指で撫でながら、零れた涙の感触を楽しみました。こんな意地悪なところも女の子たちには人気があったのです。

スカーレットは。


『いつまでも私を子供扱いするのはおよしになって。もう120歳なんですから』


とほっぺたを膨らませましたが、レットにツンツンされると中の空気はプシュっともれて、そのあとは楽しい笑い声が響き渡りました。

巨木に背もたれて座る2人はまるで恋人同士のようです。

しかし、スカーレットはそれが恋だとは思ってはいませんでした。

今は・・・。

ひねもすとタマオちゃんは、レットのハンティングキャップにようやく止まることができました。


『やあ。ひねもすとタマオちゃん。元気かい?』


レットは友だちにはキチンとあいさつをしてくれます。シマエナガたちの間でも、レットはとても親しまれていたのです。


『きのこは美味しかったのかな?』


とレットが笑うと、タマオちゃんは食べた順番にきのこの種類を説明しました。ひねもすはどうしてきのこパーティーになったのかを言おうとしましたがやめました。この場がとっても和やかになっていたし、スカーレットも笑っていたからです。


広場から大きな声が聞こえて来ました。

その声はとても明るくて、照れくさそうでもありました。


『紳士淑女のみなさん。準備はよろしいかしら?お相手を選んでください。ダンスダンスダンスですわ』


スカーレットは真っ白な歯を見せながら笑いました。


『ママったら・・・もちろん私のお相手をして下さるレット様?』


『光栄です』


広場全体に軽快なリズムが響き渡ると、男女がペアになって水車みたいにくるくると回りながら踊り始めました。

人間界のポルカにとっても似ている音楽は、この魔法使いの世界 ーとりわけキャラメラ国の山岳民族の間ではとても親しまれた民族音楽です。

ママさんは元はというと、その地域の薬局屋の娘でした。

王様と知り合ったのも宮殿で開催されるダンスパーティーでしたから、なんとしても今日は踊りたかったのです。

広場の中心では王様とママさんを囲むようにして、男女のペアが思い思いにくるくると回っています。

中には相手にされなかった太っちょ紳士と、もっともっと太っちょ紳士同士がドスンドスンと踊っていたりもしていますが、みんなとにかく笑っていました。


ひねもすとタマオちゃんも、空中でパタパタ羽根を広げて踊っています。

スカーレットは無邪気に笑いながら、レットの腕を引っ張りました。

レットは身体を大木みたいに構えて、スカーレットの手を離さないように上体をひねりながら言いました。


『悲しんでいたお姫様スカーレット』


『意地悪なレット様。今日は誰がなんといおうと踊りまくるの。法王とだって!』


『見返りも計算済みかな?』


『見返りだなんて』


と言いながらくるくる回っていると、音楽はワルツへと変わりました。

レットはスカーレットの背中を引き寄せました。

冷たい手の感触にドキドキしながら、その子供っぽさを笑われないようにと、スカーレットはワザとツンと上を向いて真っ直ぐにレットを見つめながら言いました。

目を離してしまうと負けちゃう気もしていたのです。


『レット様は踊りがお上手ね』


『そんな社交辞令は必要ありませんよ。それよりも背伸びするのをやめたらどうかな?そしたら冒険に連れて行って差し上げよう』


『・・・』


『退屈しているんだろうスカーレット。君の知らない世界が空にはもっと広がっている。ほうきを知らないまま一生を終えるなんて君にはもったいない』


『ほうき?ほうきを見せてくれるのかしら?』


『違う世界も』


レットの顔がスカーレットに近付来ました。

スカーレットは厚ぼったい唇をキュッと結んで、唾をごっくんと飲みこみましたが心配する必要はありませんでした。

耳元で囁やくレットの提案に瞳をキラキラさせて言ったのです。


『レット様の目つき・・・まるで私を裸にしているみたい』


その言葉がすべての始まりになってゆく事を、スカーレットは知る由もありませんでした。

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