第12話 妹の子孫を愛する姉っておかしくない?

<全開のあらすじ>

 牛丼特盛を爆食いする会長のライブ動画を流した百合カップルの芽出(めで)と柔子(やわこ)。

 勢いそのまま狙っていたメデューサの首を奪おうとするが、芽出VSメデューサの首という血縁対決になってしまう。

 敗者はメデューサの子孫のくせに石化された芽出。

 百合恋人の柔子が泣き崩れて

【おわり】(頭から草)

 と思いきや、メデューサの姉であるステノが登場、芽出を抱えると柔子と共にその場から逃走した。

 場所は一転、芽出のアパート。

 何とステノと芽出は同棲しているという。

 それに柔子がムキーっと大嫉妬「ちょっ、何で何で何で(30秒続く)何で一緒に暮らしてるのよ、うらやまフンギャア!」

 続きは↓


「何でって、芽出ちゃんはウチの妹の子孫やさかい面倒みなあかんやろ」


 そ、そうだよね、両親がいない状態だもんね。

 思わず嫉妬した自分が恥ずかしい。


「ま、それ以上にあのコ可愛いさかい。一生面倒見たいわ、でへへ」


 嫉妬復活ぅ!

 

「ん? なに睨んでんのや。もしかして柔子ちゃん妬いとる?」

「妬いてます!」

「でははは! ホンっとストレートやなあ、柔子ちゃんは」

「あの……あたしのこと芽出ちゃんから聞いたんですか?」


 聞いてなければあたしの名前とか知らないはず。

 そしてあたしが芽出ちゃんのこと愛してるのも知ってるはず、その上であんなコト言ってくるならもう戦争だよぉ!


「聞いとらんで。あのコ、ガッコのことあんま言わへんからな」


 え?


「ほんでもウチ、柔子ちゃんのこと大体知っとるで。芽出ちゃんに気付かれんよう毎日尾行してたさかいな」

「尾行!?」

「柔子ちゃんの家に芽出ちゃん入ったのも見とったで、おかしなことしたらシバキ倒すとこやったけどな」

 

 うっそぉぉ! じゃあアソコ石化されるの見てたのぉ?

 っていうか止めてよぉ!


「な、何で毎日尾行してるんです?」

「せやから芽出ちゃんはウチの妹の子孫。そんな愛しいコを四六時中見守るんは当然の義務や」

 

 し、四六時中って……仕事とかどうしてるのよ、この人?

 っていうか妹の子孫に恋愛感情もつなんてダメなんだから……ん?


「あの、ステノさん」

「なんや、芽出ちゃんと結婚したい言うならお帰りはあちら」

「ち、違いますよ! 芽出ちゃんが妹の子孫というからにはメデューサには子供がいたんですよね。そんなの初めて知りましたよ」

「まあな、本とか映画じゃ退治されるバケモン扱いで終わりやさかいな。そのバケモンに子供いるなんて話、誰も知らんっちゅうか、興味あらへんやろ」

 

 ステノさんがちゃぶ台に頬杖をついた。


「ほんで子供の父親やけどな、知りたい?」

「え? 別にそれは――」

「勘弁してぇな、これホンマにホンマの極秘事項やで」


 だから別に興味な……って、誰もいないのに何できょろきょろするの?

 何で耳に顔近づけるの?


「あのポセイドンが父なんや! 驚いたやろ、な? 頼むから気絶せんといて!」

「えっと、その、ポセイドンって聞いたコトありますけど何でしたっけ?」

「ボケカスアホンダラ、ええ加減にしいや!」


 ヒィッ!


「そんなだからゼウスがギリシャ神話啓蒙しようとするねんで? ええか、ポセイドンっちゅうのはな、海の神なんや。ごっつう偉いんやで」

「う、海の神?」

「そや、チャラいけどゼウスの次に偉いんやで。その愛人やってたんがメデューサちゃん、つまりウチの妹なんや。ドえらい話やろ?」

「は、はい。ええっと何か凄い話ですね……ってちょっと待ってください。つまり芽出ちゃんはポセイドンとメデューサの間に出来た子供の末裔ってことですよね?」

「そや、芽出ちゃんの体にはポセイドンの血が流れとる。いうなれば神と怪物の混血児や。ハイブリッドってヤツや、でははは!」


 あの超絶可愛い芽出ちゃんが神の血を引いてるなんて! 

 あたしが一目惚れするのも無理ないわ!


「と、ところでステノさんって普段は何されてるんです?」

「んぁ? だからアパートで芽出ちゃんの世話しとるがな。掃除、洗濯、家事一般やな」


 仕事のこと聞いたんだけど、それは止めといた方がいいみたい。


「その、芽出ちゃんの身の回りの世話出来て羨ましいですね」

「ではは、やめてえな。ウチ、芽出ちゃんの夫ちゃうで、でははは!」


 肩どつくのやめて! っていうか嫉妬爆裂しそう。


「まあそれ以外にも芽出ちゃんにゼウス学園のこといろいろ教えてるんや。あの憎ったらしいアテナとか、そいつの奴隷みたいなペルセウスとか」


 芽出ちゃんが初対面でペルセウスや会長のことを知ってたの、こういう訳だったんだ。


「それだけやないで、世の中を上手く渡っていく術も教えとるねん」

 

 誇らしげに胸を叩いたのでステノさんの巨乳がぽよよんと揺れた。

 そっかあの可愛い芽出ちゃんが何で悪知恵働くのか、やっとわかった。


「見守ったり家事したり教育したり、ステノさん偉いですね」

「持ち上げんといてえな、愛する芽出ちゃんの為や、そんくらい当たり前や」


 愛するって言った!

 言っちゃったよこの人、芽出ちゃんを一番愛してるのはあたしなんだから!


「と、ところでステノさんお仕事してるんですか。生活費とか家賃、どうしてるんですか?」

「でははは、さもしいこと聞くやんけ。どついたろかホンマ」


 ヒィッ!


「冗談や冗談、真に受けたらアカンでホンマ。銭はなあ、芽出ちゃんが捻出しとるんや」

「へ、芽出ちゃんが? どうやって?」

「何やガッコの離れで見たやろ、蠅を宝石してんの」

「ああー、それかー」

「それや、そやさかい養われてるウチは芽出ちゃんを守らなきゃあかんのや。わかったかいな」

「なるほどです」

「わかったならはよ食い、冷めてまうで」


 頷いてナポリタンを口に運んだ。


「もぐもぐ……ところであのアホ丸出しのヘルメースって何者なんです?」

 

 ズズズーっとストローでカフェオレを飲むステノさんが、いかにも疎ましそうな目になる。


「あれはオリュンポス十二神のひとりや」

「いや、あの、さっきも言いましたけど、あんまりそういうの詳しく無くて……」

「そやったな。えーっとや、アニメであったやろ『ペガサス何とか拳!』って必殺技出すの」

「ああ、それあたしのお父さんとお母さん大好きだったんでわかります。聖闘師スターアローですよね」

「それや、あれに出て来た最強の敵がオリュンポス十二神をモデルにしてんねん」

「はあ……何となくわかったような……にしても観てたんですか、そのアニメ」

「大概見たわ! 主人公の星美が可愛いねん! って何言わすんや!」

「す、すみません」

「そこは『ミーハーやんけ!』って返すトコロや。まあええ、その十二神のヘルメースってのはな、ああ見えてほんま食えんヤツやで、ルパン顔負けのドロテク持ってたり、誰でもコロっと騙されるホラを吹く名人やったりな。そのくせ頭は切れるし、商いもごっつう上手いんや。そういやアルファベットあるやろ? エー、ビー、スィーとかの、それ作ったんもヤツなんやで、これ豆な」

「へ……へえ……何か凄い人、いや神なんですね」

「なもんやからゼウス学園の理事長任されとるんや」

「え? そのヘルメースって人、理事長だったんですか?」

「ちょい、ちょい待ち、入学するなら理事長位確認せなあかんやろ」

「いやあ、近くて偏差値ちょうどいいから選んだんでそこまで確認しませんでした……」

「まあどうでもええわ。さて、腹も膨れたことやし芽出ちゃんの石化解除始めまっか」

 

 両腕を上げ伸びをしたステノさんが「どっこらしょ」と言いながら立ち上がった。

 

 そうかー、メデューサのお姉さんだから石化解除も出来るんだね。

 でもどんな方法で解除するのかな? 

 芽出ちゃんは……ア、アソコに触れることで解除してたけど、ステノさんも同じ方法!? 

 あっ、首と両手を振りながら芽出ちゃんの前に移動した。



 つづく

 次回予告:驚愕! ステノの石化解除! きみは百合を感じたことがあるか

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