第11話 ご先祖のメデューサはとっても淫乱な百合でした
<前回のお話>
会長の裏の顔を動画で拡散した芽出(めで)と柔子(やわこ)のダブル主人公。
ざまぁ! と悪態をつきながらふたりはメデューサの首が眠る部屋へ直行。
だがそこには痴女みたいな恰好をしたヘルメースがいた。
「よよーん」をやたら語尾につけるアホなヘルメースに二人は鼻穴を広げ大激怒。
それにビビったヘルメースはメデューサの首を差し出した。
ご先祖さまの首を前にした芽出がまたもや大激怒。
怒る以外能が無いのかコイツ! 激怒の続きは↓
「な、何より受け継ぎたくなかったのはあなたの性根です~! わたしのお母さんもそうでした、父さんをいいよう利用すると別な女を作って消えちゃいました……あなたも女を利用しては捨てていったそうですね~! わ、わたしの体にあなたと同じ血が流れていると思うと……お、おかしくなりそうです~!」
「芽出ちゃんやめて! 指先が顔に食い込んでるよぉ!
「生まれたくなかったですよ~……こんなわたしなら生まれたくなかったです~……」
「落ちついて! 芽出ちゃんの綺麗な顔が傷だらけになっちゃうよぉ!」
言いつつ困惑してしまう。
以前あたしの部屋で『目を開けば石化するのもメデューサのせい、胸が小さいのもメデューサのせい』と言ってたけど、まさかそこまで深刻な思いを秘めてたなんて……ああっ! どうしよっ。
「ゴチャゴチャ五月蝿いねえ。何だい、おまえがあたいの子孫かい。ずいぶん貧相な体のチビだねえ、いっしぇしぇしぇ」
え? なに、この声?
ああ! メデューサの目が開いてるぅ!
「メデュー……サ」
芽出ちゃんが顔から手を放した! のはよかったけど、そこに現れたのは表情のない能面のような顔ー!
ヤバイよ、あの顔は絶対ヤバイよ!
「石化ビーム!」
ひゃあ! メデューサに発射したぁ!。
「ああ!? いきなり何様だいっ!」
何とぉ、メデューサも石化ビーム発射ぁ!
うわっ、ぶつかり合って弾けたっ。
「どっひゃははは! 予想外のご先祖と子孫の対決~! おもろいね、ねいろもぉ! なんつって」
メデューサの首入ったケースを抱えて爆笑してるんだけど。
なにこの痴女みたいな人! 十二神とかの一人らしいけど全然神らしくなよー!
バラエティ番組の司会で手を叩いて笑ってるだけの大物芸人と一緒だよー!
「ヘラヘラやかましいよ、ヘルメース」
「およよ、ゴメンちゃいメデューサちゅわん」
「それにしても二千年ぶりかい、相変わらずナイスボデーしてるねえアンタ」
「およっ、久々だねそのセリフ。そうおだてて手玉に取っちゃうんだよね~、メデューサちゅわんは! イケナイよね~、ねよイナケイ~、なんつって」
「しぇっしぇっしぇっ、あたいは手玉に取ってるつもりは毛頭ないよ、女どもが自分から転がり込んでくるだけさね」
ヘルメースとメデューサが笑ってる。
こんなアホな光景、今の芽出ちゃんが見たら――ひぃっ、どす黒いオーラが立ち上がってるぅ!
「げ、下品です……お下劣過ぎます~! あなたのお下品な血のせいで、お下劣な血のせいで……」
また芽出ちゃんの目が赤くなった!
「ちょ、ちょっと落ち着いてよー、芽出ちゃん!」
「もう絶対に許しません、許しませんよ~」
「およ! 来たよ来たよ、メデューサちゅわん、子孫がな~んか来ちゃったよん。は~い一言どうぞ、ぞうど、なんつって」
アホなヘルメースがメデューサの首が入ったケースを芽出ちゃんに突き出したよ!
何でこう焚きつけまくるの、このアホな痴女。
「この~! 忌々しい血筋の元凶め~!」
「いっしゃっしゃっしゃっ! あたいの血で不幸な人生だぁ? つくづくふざけた子孫だね。そういうバカたれは一度石になって頭を冷やしな!」
「黙るです~! その憎らたらしい顔を石化してやるです~!」
「生意気な子孫だね! このチビガキがぁ!」
ひぃっ、また赤いビームが同時発射されたぁ。
ビーム! 赤いビームが二人の間で押しつ押されつのせめぎ合いになってるよぉ!
何これっ、凄いことになってる!
「両者一歩も引かない史上稀にみる接戦ですぞ~! これはどちらも勝たせたいですねぇヘルメースさん。んっん~、そぉですねぇ、でも勝者はただ一人! あの二人も勝つのは自分と思ってるはずですよぉ、ヘルメィスちゃん。なるほど、確かにそうかもしれませんねヘルメースさん」
ヘルメースが器用に声を変えて一人二役の解説してる!
この人ホント、アホだ。
「しゃらくさいね、こまっしゃくれたガキが!」
うわ、メデューサの髪がケースを衝き突き破った。
「いしゃっ!?」
芽出ちゃん! 髪が首に!
「およよよ? ぶっふぉぉ!」
狙いがそれた石化ビームがアホみたいなヘルメースの顔面に直撃!
ざまぁ。
「うっほぉ~、ビックラこいたなも~、ラクッビ、なんつって」
ええ!? ケロとしてるっ。
あのヘルメースって人、やっぱり只のアホ痴女じゃないんだ!
「お返しさね、くらいな!」
芽出ちゃんの首に髪を巻きつかせたままメデューサが石化ビーム発射したぁ。
「いしゃ!?」
やだっ! 芽出ちゃんにビームが――
「芽出ちゃん!」
あ! ああっ! やだっ、やだやだ! 芽出ちゃんが、芽出ちゃんが石化しちゃったよぉ。
あうっ! 何? 後ろから誰かに突き飛ばされた?
あ、 こっちを突き飛ばした誰かが石化した芽出ちゃんを肩に担いだ。
「ほな逃げるで、柔子ちゃん」
誰この人? 何であたしの名前知ってるの?
「ウチ、ステノいうねん。あのメデューサちゃんの姉や。簡単に言うと芽出ちゃんの遠い親戚。あーっと、そやな」
ステノさんがキョロキョロ辺りを見回すと目を止めた。
「柔子ちゃん、あのメデューサちゃんの首取ってえな。ウチ両手塞がってんねん」
ステノさんが顎をしゃくった先へ目をやる。
「あっ」
床にうつ伏せのペルセウスさんがメデューサの首をがっちり抱えていた。
「うおお! こ、このメデューサの首、アテナさまの為に奪わせないである!」
ペルセウスさんの所まで来てメデューサの首に手を伸ばした。
ひぃっ! やっぱ髪の毛が蛇になってるぅ。
しかも芽出ちゃんみたいに可愛らしい蛇じゃないー、獰猛で何か毒々しい蛇ー。
「しゃしゃーっ! この手を放しな、アホたれペルセウス! あたいの寝こみを襲いやがって、あんときゃ夜這いに来たのか好きだねアンタとすっかり油断してたよ! しゃーっ! 思い出すと悔しいね!」
「吾輩にとってアテナ様の命令は絶対なのである。貴様は物凄く怖かったので寝こみを襲うしかなかったのであるー」
「しゃしゃーっ! こんな腰抜け女に首切られるなんて口惜しいねえ!」
そんなやりとりをしている間に首を奪おうとしてたけど、凶暴な蛇の面々がシャーっと威嚇するので手を出せないー!
無理無理無理! これ噛まれたら皮膚や肉が腐っていく猛毒系だよー。
それを見ていたステノさんが苦笑いでこう言った。
「しょうがあらへんか、ここは芽出ちゃんを連れ出すことでよしとしましょか。ほな行きまっせ柔子ちゃん」
「は、はい」
ステノさんの背中を追って駆け出す。
そうやって辿り着いたのが芽出ちゃんが住むこのアパート。
「なんやねん? ウチの口に何かついてる?」
サンドイッチを食べていたステノさんが目をぱちくりさせてこちらを見る。
「いえ、その、何でステノさんは芽出ちゃんと一緒に住んでいるんですか?」
口の端についたソースを親指で拭ったステノさんがその訳を話はじめた。
つづく
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