第5話 生徒会室行ったら会長に〇〇された

<これまでのお話>

 入学早々、メデューサの末裔である芽出(めで)に一目惚れした柔子(やわこ)。

 早とちりで石化された手を戻して欲しい、と言う柔子に人の目がないところでやりたいと芽出。

 さっそく彼女を自宅に招いて百合展開を期待する柔子だったが、今度は女性自身を石化されてしまう。

 石化解除には芽出の女性自身を触れさせないと出来ない。

 ふたりは互いに女性自身を合わせようとするが、そこへ柔子の父が帰ってきてしまう。

 父(この世界に男性は存在しないので女性)を前にどうする柔子。

 続きは↓



「……柔子、あなた何やって……」


 何でこんな時間に帰ってくるのー!?


「と、父さん、違うの! これはその……」

「そちらの方は?」

「た、ただのお友達!」


 やばっ、父さんの目付きが変わった!

 結婚前提のお付き合いまでいかがわしい行為は絶対ダメ、って考えだもんなぁ。

 ヤバイよぉ、父さんのことだから芽出ちゃんまでお叱りくらう可能性がある。


「芽出ちゃん!」

「え?」


 手を取って父さんのいる玄関へ駆ける。

 ここは強行突破! 

 芽出ちゃんと愛のエスケープ!


「柔子、待ちなさい!」

 

 父さんに腕を掴まれた、でもひるまない。


「はいっ!」


 芽出ちゃんの靴を拾い上げて放った。


「いしゃ!?」


 芽出ちゃんナイスキャッチ!


「逃げて!」

「そんな~!」

「いいから早く逃げて!」


 芽出ちゃんがこっちを見ながら玄関から出て行った。

 ふう、良かった――――ってこれペルセウスさんの時と同じ展開だぁー!


「や・わ・こぉぉぉ!」


 うぐほぉ!? 父さんに首固めを決められたぁ。

 くぅぅ、頭の後ろに巨乳の感触。

 ホンっとでっかい乳、そんなだから母さんに離婚されるのよ!


「もう! 今のコと何やろうとしてたの! そういうのは結婚前提になってからしなさい!」

「だーかーらぁ、違うんだって! あのコとは只の友達でー! うごっ!」


 こうしてあたしは父さんにみっちり叱られた。

 でもいいの、芽出ちゃんが巻き込まれなかったから、それだけでいいの、うん。



   ♀ ♀ ♀ ♀ 


 

 あたしは今、生徒会室の前に居る。

 何故かというとアソコが石化した昨日、あたしのスマホに生徒会長から電話が掛かってきてたから。


『明日の放課後、生徒会室へ来るように。うふふふ~』


 会長の声は天上のお茶会で交わされる女神のような声だった。


 はっきり言ってむっちゃ緊張してる。

 いや、無茶苦茶緊張してる。

 歯が口の中でカチカチ鳴ってるし。

 でも行くのよ、柔子! 

 固い意志が欲しいんでしょ!

 この試練を乗り越えるのよ! 

  

 深呼吸してドアノブへ手を伸ばす。

 そこへ戸の向こうから声が聞こえてきた。


「おほほほほ……この意味がお分かり? ペルセウス」

「はい! お分かりになるであります!」

「じゃあ言ってごらんなさい」

「はい! おほほほ、とは比類なきアテナ様の尊き笑い声であります!」


 うわっ、ドグッ! って音と「うぐっ」って声した。


「全然分かっておりませんわね、普段のわたくしは“おほほほ”、さっきのは“おほほほほ”。もう一度聞きますわよ、この違いがお分かり?」

「ひゃい! お分きゃりになりゅであります!」

「じゃあ言ってごらんなさい」

「“ほ”がひとつ多いでござりまする」


 ドグッドグッ! っていう鈍い音が二連発。

 同時に「うごっ、がっ」な呻き声。


「そのまんまですわね、では意味を教えてあげます、“ほ”がひとつ多いのはそれだけ気分がよろしいからですわ。おほっ、おほほほほ」


 ひぃぃ、通話の女神様みたいな声と違う!

 まるで女王様じゃない!


「会長、会長、会長、例の客人が、さっきから、扉の前に立っている、のだ」

 

 何抑揚のない声、もしかしてロボ?


「んまっ! 何でそれを知らせませんの、パラス!」

「何で、と聞かれても、メンドくさい、と答えるしかない、のだ」

 

 このロボっぽい声のパラスさん、あたしが扉の前に居ることを知ってるなんてエスパー?


「お入りなさい、日頃柔子さん」

 

 あ、女神っぽい声に戻った。


「し、失礼します」


 年季の入った木製の扉を開けて中へ入った。

 西洋風の格調高い部屋に心拍数上がるぅ。

 正面の金髪三つ編みをサイドテールにしている人が会長かな?

 あ、その人の横で転がっているのは!

 

「ぬっ! 貴様は日頃柔子」

「こ、こんにちは、ペルセウス先輩」

「この神聖なる生徒会室へ何の用であるか?」

「その、会長さんに呼ばれまして」

「ぬうう! 嘘をつくなである、アテナ様が貴様のような新入り一年生を呼ぶはずが……はっ! さ、さてはあのメデューサに完全な服従を誓い、アテナ様のお命を狙いにきたであるか! おのれ、このペルセウスを前にいい度胸であるな!」


 うっ血した顔で転がってる人に言われても。


「おほほ、あなたが日頃柔子さんね、わたくしはアテナ。この学園の生徒会長をやっておりますわ」

「いけません、アテナ様! そやつは刺客の可能性がはっ!」


 ペルセウス先輩を女神の微笑みのまま蹴った!


「お待ちしておりましたわ」


 ま、眩しい! 例えなんかじゃなく本当に眩しい! 


「生徒会役員の紹介をしますわ。彼女が副会長のパラス」

 

 会長の紹介する先へ目をやると、瞳が死んでいるブラウンショートの女生徒がいた。


「パラス、なのだ、コッホ曲線、コッホ雪片の長さ、は、無限大、なのだ」


 ロボみたいな声の人ってパラスさんだったんだ、っていうかその紹介なに? 意味わかんないんですけど。

 

「以上が生徒会役員ですわ」

 

 え? そこで転がってるペルセウス先輩は?


「ア、アテナ様……わ、吾輩は……」


 何か会長の笑みにビキッ! ていう音がしたような……。


「おほほ、いけませんわ。あそこのアレをうっかり忘れてました、書記のペル……ぺルーのナスカ絵といいますわ」

 

 そんな名前の人いたら見たいよっ、わざと間違えてるぅ!

 

「ですわよね?」

「はい! 吾輩の名はペルーのナスカ絵であります!」


 こわっ、何この関係。

 

「とまあ紹介も済んだところで、日頃さんを呼んだ訳をお話ししますわ」

「は、はい」

「一年A組の芽出由砂。知っておりますわね?」

「はい」

「わたくしのこの髪、芽出由砂の髪と比べてどう思います?」

 

 しゃらんと揺れる金髪のサイドテールは確かに美しい!

 でもあの超絶可愛い芽出ちゃんと比べたら……。


「わ、悪くないと思います」


 何か空気が一瞬凍ったような。

 あのペルセウス先輩まで固まってる。


「ではこの顔、芽出由砂と比べてどう思います?」


 程よく白い目鼻立ちの整った小顔は確かに美しい!

 でもあの鼻血で出血死しそうな芽出ちゃんと比べたら……。


「わ、悪くないと思いま――」


 ひえ!? 会長の顔が恐ろしい形相にぃぃ!!


「日頃さん……いえ柔子、あなたはわたくしのモノになるのよ」


 何それぇ! って肩掴んで何する気!?

 顔っ、顔が近い!

 

 ――――んぅ、キス? キスされてるぅ!?



 つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る