第6話 知らなかったのは貴方だけです(2)
ガブリエルには秘密がある。きっと彼は誰にもその秘密について、知らないと思い込んでいる。確かに彼の周りでその秘密に気付いているのは私ぐらいのものだろう。あの元婚約者のシャルロット様ですらご存知ではなかった。普通は気づかない。彼はこの秘密をきっと死ぬまで隠すつもりだろうから。
でも、私は知ってしまった。彼に言って、脅すような真似はしたくなかったが、あまりにもガブリエルがわからずやなので知らしめたくなってしまった。
「貴方の秘密を私は知っていますよ。」
王子を下に敷いて、私がそう告げると、暴れるのをやめて、不安そうな顔をするのは、ズルイです。その顔に私が弱いことわかってますよね?
貴方が好きだったのは、シャルロット様ではなくて、マリユス様の方ですよね。
知らないとお思いですか?
今思いっきり顔を逸らしましたね。図星ですか?わかりやすいですね。
幼い頃、マリユス様を独り占めしたかった貴方が、あの二人を離したくてふと話してしまった言葉を大人達が誤解したこと、私は知っているのです。何故かって?本当に疑問なのですか?
私が、いつから貴方が好きだとでも?
本当に昔から、初めて会った時から、お慕いしておりましたよ。
そう考えると、アルマ様に告白されたのも納得です。あの方、昔のマリユス様に少し似てますものね。マリユス様は昔女の子みたいに可愛らしい顔でしたものね。あれ?違いました?
マリユス様が女の子ならよかったのです。それなら、何の憂いもなく、マリユス様ご本人を婚約者にできたのに。
随分歪んだ恋心でしたね。シャルロット様がお近くにいると、マリユス様は近くに来てくださいますもの。けれど、趣味は悪いです。彼が苦しんでいたことなど、わかっていたでしょうに。
知らないフリで、彼の友人の顔を続けて貴方自身、とてもしんどかったのではないですか?
そんな目で睨んだって怖くありませんよ。私には逆効果です。寧ろ、可愛くて仕方ありません。
そろそろ気付いてください。貴方は、この騎士団で、野獣共に狙われているのです。貴方の非番の時に偶然会う男が毎回同じなのも、ピンチの時に助けてくれる男が毎回同じなのも、いつも水をくれる男がいつも同じなのも、それを飲むと眠くなるのも、全て仕組まれているからです。私は護衛として、貴方のうっかりにはもう付き合いきれないのですよ。だから、申し訳ないですが、強硬手段に出ることにします。
喉が渇いたのですか。先ほどから叫んでいるせいですね。残念ながら、ここは少し離れているので助けは来ません。お水なら口移しで飲ませてあげます。
私のお手つきとなれば、貴方に手を出そうと言う者はいなくなります。大丈夫です。優しくします。力を抜いてください。
私がどれだけ貴方を好きか思い知らせて差し上げます。
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