小さな伏線が様々なところに散らばっており、物語が進むにつれ、それらが少しずつ繋がっていく。
それは、物語として普通のことだが、この物語は何かが違う。
何が違うのか、何に惹かれるのか……。
読み進めないと面白さが解らないというのは致命的かもしれないが、この物語は『それでいい』と思えてしまう。
個人的に、ではあるが──
スキマ時間でちょこちょこ読みするよりも、しっかりと時間を取って読みたい。
そう思わせられる作品だ。
静かで、何にも邪魔されない空間で、物語の中に沈み込み、個性的な登場人物たちと蛇足ちゃん独特の世界観に浸り、溺れたい。
完成まで先は長いとのことなので、ゆっくりと待ち続けようと思う。
子供にしかない飛躍した発想力と、大人の持つ多くの知識が合わさり、奔放でいながら洗練された雰囲気を持った作品です。おもちゃ箱をひっくり返したような様子を感じますが、散らばるおもちゃの中には卓越した芸術品が混ざっています。
世界観はざっくり現代が荒廃・衰退した感じです。銃器が珍しかったり、馬車が出てきたり、それでいてエレベータがあったり電車が走っていたり。むちゃくちゃと言えばそれまでですが、これは作者の持つ独特の世界観です。一つの夢の世界と言うことができるでしょう。
話はおおむね「不思議」と戦う非日常的な日常が展開されるものです。バトルもありますがバトル自体と言うより、バトルへの経緯であるとか背景が凝っていて楽しめるものとなっています。
また、キャラクターたちが繰り広げるちぐはぐな会話ややり取りも見逃せない要素です。自分勝手なキャラクターが多く会話が成り立っていなかったりしますが、それにも負けず自分なりの解釈で話を進めていく主人公の姿が軽やかでしたたかで、人としての一つの理想像と言うことができます。
作中の随所に仕込まれた謎も面白みを増している要因ではないでしょうか。明かされるのか明かされないのか、キャラクターの言動の裏に隠された事情が興味を引きます。その中には物語の根幹に関わる重大な秘密もあって、最後に待つ大きな転換を予想させます。それはこれまでのことが何だったのか問い返すことになるようなものでしょう。そこで主人公がどんな反応をするのか楽しみです。