第七十七話『寸劇』
戦いは終わった、そんな
ピリリも、そりゃあその雰囲気に飲まれたのは悪いけど。戦犯は?と聞かれたら迷わず彼を指名する。
「んな」
ピリリの右の太腿に、激痛が襲った。激痛、肉が裂かれる、串刺しにされる痛み。それなのに出た声は、なんとも間抜けな声。
そこからの展開は、ほんとうにあっという間の出来事だった。
太腿が引っ張られバランスを崩し転倒、ミミがピリリを襲おうとする第2の触手へ剣を
確殺、確定で殺すってこと。もしくは確実に殺す気じゃんの略かな。やっぱ忘れて。
「姉ね!!」
カランと音を立てて落ちたミミの剣を手に取り、さっきミミがやって見せたように、ピリリは足に刃を入れた。
「んがあぁぁぁぁあっ!!!!」
「まだ戦闘は終わってないみたいですよ!」
ミミはさっきの拳銃をアライグマの彼に返していたせいで丸腰に、そして拳銃を持っている本人は。
「さ、いあくですね」
「ラクーンッ!!」
胸を貫かれて、自らを拳銃で撃った。そう、今彼がして見せたのが確殺。迷いなく自分の頭を貫いた、普通の拳銃で。
先程の拳銃じゃない。
「急げ!こっちだ!!」
今、使われた拳銃はヴァニタスさんの足元へ。不自然なくらい、綺麗に。
「姉ね!何してるの!!」
「切れないのっ!」
足が切れない、どうやってあんな簡単に自分の腕を切っていたんだろう。痛いのもあるけれど、それ以前に人間が丈夫すぎる。
どうにか、切断しなきゃ、頭を使え、考えて、何か、力を増強する魔法とか、覚えてたら良かったな。ミミみたいに……いやでもミミもそんなに力はないはず。それなのにどうして。
「……なるほどっ」
剣をきちんと見直して思いついた、いや思い出した。即座に剣に魔力を込めて、大熱を帯びさせる。
「ぐなぁぁぁああっ!!!!」
「ヴァニぃ!!」
「待てよ!やってみるから!」
足を切断、意識が飛びそうな程の激痛を耐えながら、目に映ったのは。足を貫いた触手を外れた足ごと殴り飛ばしたヴァニタスさん。
ヴァニタスさんにそのまま抱きかかえられ、また激痛で意識が遠のく。
「なあ」
結衣さんの声。
ほんの一瞬意識が無くなって、気づくとヴァニタスさんの拳を、片手で受け止めている結衣さんがいた。
ピリリが元いた場所から離れて、出口付近の扉にいつの間にか移動していたようだ。
「ん?」
「ラクーンのさ、銃って貰ってええんかな」
ヴァニタスさんは私をそっと床に寝かせて、敵を見据えた。
駆けつけたミミがまたあの小瓶を取り出して、液体をピリリの足に乱暴にかける。
「姉ね……」
「うん、わぁし、はだいじょぅぶ……」
ひとつの戦場に、花が咲いた。
肉々しく不気味に美しい、偉大な妖花が、城を飲み込もうとしている。
花柱に、鉤爪が揺れている。
まぶたが重い、頑張ってまぶたを持ち上げても、気付くと目が閉じてしまう。
出血が多すぎた、もう視界が……。
〇
言霊とか、よくわからんけど。
ラクーンは、あの銃を使う時、言霊を使ってた。
うちは魔法とか、そういうのを使うんは昔から苦手やったし。苦手なものは、努力しなきゃ大人になっても苦手なままや。
「あそこだ!もうあれしか勝ち筋がないぞ!」
「敵地のど真ん中やんか!最悪や!」
やっとの思いで拾い上げた拳銃に、まだ温もりを感じる気がする。
覚悟はいつでもできてなあかん。今日話したやつが明日にはおらんくなってる様な仕事や、深く考えん方がええ。
今まで、何度もこういうことは経験してきたしな。もう、慣れたはずやろ。
やけどさ、最後が、自滅っていうのは、違うんちゃうかな、ラクーン。
死ぬ場所は選べんくても、死に方は自分で決めたい派やからな、うちは。
そういう話も、昔お前としたよな。
そりゃ、あのバケモンの性質も分かってるし。お前の判断が間違ってるとは言わん。いや、むしろ正しいまである。
けど、やけどお前は、お前はまだまだこれからやろ。
なあ、まだやれる事、やりたい事、やらなあかん事あったやろ。うちに言いたいことあったんやろ。
なあ、ラクーン。
「かませ!結衣!!」
「ぶっ殺す!」
……じゃあ、これでさよならやな。
約束通り、この拳銃は貰っていくからな。お前にうちのお気に入りのライター、あげんくて済んで良かったわ。
やっぱり、賭け事弱いよなラクーン。どっちが先に死ぬかなんて、変な賭けしてさ。
……結局、お前の口から聞けんかったけど。うちは好きやったで。
お前のこと。
「────っ!!!!」
「させるかぁっ!!」
うちを狙った触手、いや
今の死ぬかと思た、ミミが剣投げてくれんかったらお前のとこ行くとこやったわ。危ない、危ない。
「生ヲァ、あヴァア……」
もちろん、使い方はちゃんと知ってる、ずっとラクーン、お前のこと、見てきたからな。
じゃあ遠慮なく、この銃の
文句は、また会った時に言ってや。
だから今は、そっちで暇しといてな。
「レッドホットテンポ!」
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