第二十四話『真実の継承』
不思議。
『悪の魔王と正義の勇者』
『勇者』
異世界とされる場所から来たという記憶を有する者が勇者として、人々が自然に認識する。
勇者は一人であり、その勇者として認識されている者が何らかの要因で亡くなった時。
次の勇者が、現れる。
全ての人間の思考に、勇者の容姿の特徴とそれが勇者である、勇者は魔王を倒す正義である、という認識がされる。
『魔王』
4つのサイキョウから、それぞれに素質のあるものが魔王として選ばれる。
選ばれた者は、勇者同様。人々の思考にその容姿と特徴、魔王は悪いものである、という認識が自然に芽生える。
それぞれ『最強』『最凶』『最恐』『最狂』という区切りであり、選ばれた者が何らかの要因で亡くなった時、素質をもつ者が新たに選ばれる。
魔王は恐怖される存在である、これは変化することはなく絶対である。
以下は、魔王とのコミニケーションを記録したものになる────。
〇
僕は、この人がどうしても好きになれない。
「それでー、要件はなんですか」
「
「なんでも知ってるんじゃないんですか」
「なんでもじゃあない、我が知っているのは真実だけだ」
真実しか知らない、と性別の無い『真実の警鐘者』はニィッと不快な笑みを見せた。
男とも女ともつかない容姿、男と言われればたしかにそうだし、女と言われれば確かにそうだ。実際はどちらでもないらしいが。
僕より小さいくせに、僕より態度は大きい。
いや、そこは関係ないか。
僕は今、路地裏街の拘置所。その最下層に来ている。
もちろん、エレベーターを使ってきた。
今いる部屋は、綺麗に整えられている。生活感がないくらいに、人が暮らしているとは思えないくらいに。
モルが使っていた部屋とは、大違いだ。
最近、モルを基準に何かを比べることが多くなってきた。
なぜだろう。
「でも、真実の名前と書いて真名でしょう、真実なら知ってるんじゃないんですか?」
「もちろん、汝の忌み名くらい知っているとも、けれど忌み名は意味があって忌み名なのだよ、我の口から出して我が呪われるのは嫌だ」
「僕の口からなら、僕は呪われないんですかね」
「……たぶんね」
ものすごく信用ならない「たぶん」が返ってきた。
目を合わせようとせず、わかりやすく口笛まで吹いて(吹けていない)くれている。
「真実しか知らなくとも、嘘はつけるでしょう」
「もちろん」
肯定したということは、この回答がどにらにせよそういうことだ。
「汝が言わないのなら、言う気になるまで昔話でも話そうか」
「いいですね昔話、僕好きですよ桃太郎とか、とくに桃太郎が猿と犬とキジをみたらし団子にして食べる所とか傑作ですよね」
「ないと思うんだけど、桃太郎が猿と犬とキジを食べるシーンなんて」
「え?知らないんですか?」
「君に虚言癖があるって言うのは知ってるよ」
知られていたみたいだ、残念。
けれど少し言い過ぎだ、ぼくは少し嘘をつくのが好きなだけだ。
嘘つきは泥棒の始まりと言うが。
ぼくは仕事ゆえに殺人犯みたいなものだぞ、泥棒もおっかなびっくりだ。
「それよりもね、汝がもっと嫌いそうな昔話をしてあげよう」
警鐘者は、またニィッと不快な笑みを浮かべた。
そうして、警鐘者は昔々と昔話の定文を
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