第二十三話『ヴァンガル武器製作会社』

 薄暗い部屋。

 部屋は、無駄に豪華に装飾が施されている。

 小魚が泳ぐ水槽が、緑や赤色に点灯を繰り返している。

 中央に低く、長方形のガラステーブル。

 そして、向かい合うようにして置かれた革製の黒いソファー。

 天井には、様々な金や銀で造られた置物、宝石などが宙をゆったりと舞っている。

 その中でも目を引く、銀の山羊の頭が不気味に照らされて。

 キラキラと、輝いて。


「相変わらず、趣味の悪い部屋だ」

「そう言ってくれるな」


 着物コートを纏った男性の不満に、綺麗に整えられたオールバックで縁のない眼鏡をかけている男性が苦笑を混じえて返す。

 部屋には2人だけだ、2人以外いない。

 居てはならない。


「それで…」

「あぁ、もちろん持ってきた、やはり教団のヤツらが狙ってきたがね、我々の社員は強い」


 自慢げに大きく手を叩いて、着物コートを纏った男性は笑った。

 言葉締めに、社員と言うのかは分からないが、とだけ付け加えて蛇が彫られた箱を机の上に置いた。


「さっそく、いいかね」

「ええ、もちろん」


 オールバックの男性が箱を手に取り、くるくると弄る。


「どうやってあけるんだ」

「蛇の頭のところを左に回して、蛇の尾を指にひっかけて下に引っ張ってみろ」


 言われた通り、オールバックの男性が手順を踏むと、カチッという音がして箱が開いた。

 箱の中には小さな試験管がビッシリと敷き詰まっていて、試験管の中には黒いドロドロとした液体が見える。


「よく割れなかったな、教団が狙ってきたなら戦闘があっただろ」

「そういう箱なんですよ、オーバーテクノロジーって言うんかね、そういうの」

「ということは、からすが創ったのか」

「さすが鋭い、その箱気に入ったのなら、その箱の設計図を差し上げますが」


 オールバックの男性は箱から試験管を一本を取り出し、目の前に持ってきて少し振って中の黒いドロドロとしたものを観察している。


「いやいい、それより私が欲しいのはその鳥自身なのだがね」

「悪いが、彼は気難しくてね、俺じゃなくてカラスに直接交渉してくれ」


 オーバーオールの男性は残念そうに、首を横に振った。


「ともかく、ソレを試すんなら捨て駒でやることだな」

「ご忠告どうもありがとう」


 試験管を箱の中に戻し、箱を閉じた。

 部屋を時計の針の音が、支配している。

 水槽を泳ぐ小魚が、一匹、ぷかぷかと浮いていた。





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