第九話『雑食、マカロニは食べない』


「これ、次の仕事ね」


「え、わかりました!」


 護送任務だ、やった。報酬が普段よりいいんだよね。

 報酬貰ったらどうしよう、新しくなにか服とか。でもちょっと高いチョコレートとかもいいかも。


「今回のバディは志東だ、やつにあったらよろしくと言っといてくれ」


「し、志東さんですか!?楽しみです!」


 とっても久しぶりの人だ。楽しみ。

 でも、ここから遠いのがやだな。5日くらいかかるのかな。

 でも、この仕事が終わったら休暇しばらくとっても余裕が出る。


 がんばる。

 楽しみで、わくわくして、私は愛刀をなでなでした。

 この刀を見せるのも久しぶりだったはず、本当に楽しみ。



     〇



「すごいの!聞いて!この任務、報酬がすっごくいいの!」


 ペンギンを模した、青いパーカーの。

 淡い青の髪と黄金の瞳を持つ少女がはしゃいぎながら、資料を運ぶ。


「ほんと!?いいねー!ぼくのがんばりどきだー!じゃあ、お腹いすいたからなんか奢ってー!」


 良い報酬と聞き、カラスが両手を広げ。こちらもはしゃぐ。

 カラス、と言えど。生物としての観点からしてはカラスではない。その容姿故の名だ。

 フルフェイスのペストマスクに、黒いローブ。そして一般的な園児を思わせる身長。

 肌を一切見せない格好に、男性が女性かの区別のつかない中性的な肉声。

 その名も、カラスである。


「この任務が成功したらなにか奢ってあげるわね!でも今は私も五日間くらい竹輪ちくわしか食べてないの」


 青い髪の少女は資料を古びた机の上にホコリを払ってから置き、照れる素振りを見せる。

 全体的に、ホコリが溜まっていそうな場所だ。

 木造の小屋で、壁は一部のみ古い赤レンガで構成されている。


 小屋の中は様々な機会などのパーツで溢れていて、部屋の唯一の灯りのランタンは工具の散らばっている木製の作業机の上に置かれている。


「で?なんの任務なわけー?」


 カラスは工具を元の場所に、ひとつひとつ眺めながら直していく。

 少女は資料をもう一度手にとり、ペラペラとめくりながら。


「護送任務って書いてあるわ、何かを運ぶみたい?」


「なるほど!僕様なら簡単楽勝って感じなわけだ!」


 カラスは椅子の上に立ち上がり、右手を拳にして突き上げた。

 青髪の少女は無関心に「わーすごーい」と空返事を返しながら資料に目を通している。


「でも決行の日までまだ時間があるみたいだから、任務を受ける報告だけ先にしておくね、それにカラスにもほかの仕事があるんでしょう?」


「まぁね!近々ね保存状態がいい猟銃を手に入れる予定なのだ」


「ふーん、私はあんまり興味はないわ、考古学は苦手だもの」


 もう一度机のホコリを払って、資料を置く。短時間でまたホコリが沢山溜まっていたことに少し驚く。


「じゃあ、また次に会いましょ」


「うん、ばいばーい」


 少女もカラスも、振り返ること無く。互いに手を振り合った。



      〇



「んぁ」


 ここは、どこだろう。

 体が痛い。

 少しづつ、冷気に震えながら、思考が冴えてくる。

 ここは自分の家だ、そして。


「むにゃ……」


「……」


 どうやら、ベットから落とされたらしい。

 モルは寝相が悪いようだ、早急に布団を買わなければならない理由ができた。

 今日は、仕事は休みなのだが、やることが山積みだ。

 買い物に進級試験の出場申請に。


「……お、はよう」


「モル、おはようございます」


 眠たそうに目を擦りながら、掛け布団を引きずってモルが起きてきた。

 カーテンを開き窓越しに外を眺め、朝の陽射しを浴びる。

 今日は雲のない快晴のようだ、僕の朝は早い。まだ、人通りの少ない石畳の道。


「さぁ、歯を磨いて顔を洗って、何か食べに行きますよ」


「はーい」


 ピンポーンと。

 モルと洗面所に向かおうとした、その時。家に響いた高い音不自然に高い音。


「ん、こんな時間に?」


 鳴ったのはドアベルだ、僕の家のドアベルは壊れているのか微妙に外れた音が鳴る。

 それにしてもこんな朝早くの時間に、一体なの誰だろうか。


「誰ですか、こんな朝早くに……」


 鍵を開け、ドアノブに手をかけた。

 一体誰なんだろう、敵だった場合。

 いや、大丈夫か。


 「はーい、こんな朝早くに誰でゴヒャッ……」

「おっはよー!!!!」


 そんな朝の挨拶が聞こえたと同時、腹部に強烈な激痛が走った。


「よっ!例のもの受け取りに来たよ!」


「ちょ、あの、おなか、いた……」


 洗面所から警戒して、ハブラシを咥えたモルが覗いている。


「じゃ!朝ごはんもまだ食べてないから!何か作ってー!」


 視線を少し下にずらすと、背の小さい黒いのが居た。


「……茹でてないマカロニならありますが、それでいいなら……」


「食べれるかぁ!」


 カラスがそう、わめいた。

 まったく、朝からうるさい鳥だ。


 今日も一日が始まった。

 

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