十七章 「思い出す」
突然、膨大な量の情報が、頭にはいってきた。
それは、紛れもなく、僕がなくした記憶というものだった。
一華との思い出、仕事の考え方、マイホームを手に入れた理由、お金についての考え方、今までの生活、お酒を飲まなかった理由。
一気に情報が頭の中を駆け巡る。
それらすべて忘れてしまっていた。
すべて一華への愛情に関することだった。
僕の夢は、一華への愛情と関係が強いのだろうか。
確かに一華とは付き合ったのは3年前だけど、小さな頃からずっとそばにいた。所謂幼馴染というものだ。
僕が夢を叶えたときには、いつも一華がそばにいてくれた。
もし、一華の言うとおり、夢の記憶だけでなく、夢に関係しているエピソードも消えるとするなら、一華への愛情がわからなくなったのも納得がいく。
一華が手を差し伸べてくれたあの日。僕が流した涙は、一華の愛情に触れたからだろう。
それを記憶のない状態でも何か感じるものがあったのだろう。
僕は夢を売り、それによって手に入れたお金で人生を豊かに変えられたと思い込んでいた。
何よりも大事な一華をないがしろにして、僕は何をしていたのだろう。
僕の人生において一華がいなければ、意味がない。豊かになどなるはずがないのだ。
僕は大きな過ちを犯した。
そして、この変化は一華が何かしてくれたのだとすぐにわかった。
今なら一華のことはよくわかる。
一華とは自分を犠牲にしても、僕を助けようとしてくれるような人だ。
僕はまた一華に助けられた。
そして、激しく後悔した。
思うところはたくさんある。
でも一番は、一華を大切にできなかったことだ。
僕はなんてひどいことを一華にしてきたのだろう。
それなのに一華はずっとそばにいてくれた。
変わらず優しくしてくれた。
さらに自分の寿命まで差し出して、僕の夢を買っていた。
きっとそれは、今回の記憶が戻ったことに関係しているのだろう。
本当に取り返しのつかないことをした。
僕は何をしたら許してもらえるだろう、償えるだろう。
僕は、一華に何ができるだろう。
考えていても何も変わらない。
僕は、すぐに一華の元に走り出したのだった。
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