十三章 「夢の代償」

「まずは、そもそもなんの話かわからないんだよね」

 とりあえず部屋に入り、熱いコーヒーを飲みながら話を続けた。

「だから、わからないよ」

「そうなのね。それじゃあ、夢を売ったことは覚えてる?」

「それはなんとなく」

「落ち着いて聞いてほしいの。その夢を売ったことが原因で、樹は変わってしまったのだと思う」

「夢を売ったことで? そんなはずはないよ」

 夢売ったことを悪く言われたのが気に入らなかった。

 僕の今の中心は、夢を売って手に入れたお金だった。

 また僕の頑張りを認めてくれないのだろうか。

 僕が立ち上がって部屋を出ようとすると、一華は僕の手を両手で握ってきた。

 一華から、並々ならぬものを感じた。

「お願い、最後まで聞いて。夢を売ると、その夢の記憶がなくなるんだよね? もし仮に、その夢に関係することも一緒になくなるとしたらどう思う?」

「それは、大変なことだよね」

 僕は適当に答えた。

「そう、大変なことなのよ。事態は思ったより、深刻なことなんだよ」

「深刻?」

「樹は自分が変わったことさえわからなくなっている。だから、夢を取り戻そう。もう一度だけ、私を信じてくれないかなあ?」

「そこまで言うなら、付き合うけど。実際に僕はどうしたらいいの?」

「未来さんのもとへ、二人で行こう。樹はついてくるだけでいいから」

 一華の行動力に押されて僕は仕方なく、一華の言うとおりにすることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る