十三章 「夢の代償」
「まずは、そもそもなんの話かわからないんだよね」
とりあえず部屋に入り、熱いコーヒーを飲みながら話を続けた。
「だから、わからないよ」
「そうなのね。それじゃあ、夢を売ったことは覚えてる?」
「それはなんとなく」
「落ち着いて聞いてほしいの。その夢を売ったことが原因で、樹は変わってしまったのだと思う」
「夢を売ったことで? そんなはずはないよ」
夢売ったことを悪く言われたのが気に入らなかった。
僕の今の中心は、夢を売って手に入れたお金だった。
また僕の頑張りを認めてくれないのだろうか。
僕が立ち上がって部屋を出ようとすると、一華は僕の手を両手で握ってきた。
一華から、並々ならぬものを感じた。
「お願い、最後まで聞いて。夢を売ると、その夢の記憶がなくなるんだよね? もし仮に、その夢に関係することも一緒になくなるとしたらどう思う?」
「それは、大変なことだよね」
僕は適当に答えた。
「そう、大変なことなのよ。事態は思ったより、深刻なことなんだよ」
「深刻?」
「樹は自分が変わったことさえわからなくなっている。だから、夢を取り戻そう。もう一度だけ、私を信じてくれないかなあ?」
「そこまで言うなら、付き合うけど。実際に僕はどうしたらいいの?」
「未来さんのもとへ、二人で行こう。樹はついてくるだけでいいから」
一華の行動力に押されて僕は仕方なく、一華の言うとおりにすることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます