五章 「中学生の頃の夢」

 僕が中学生の頃に叶えた夢のことだ。

 それはまだ僕が夢を叶えれば、人生が変わると純粋に信じていた頃の話だ。 

 この頃は、夢とは希望だった。


 『両親に同時に褒められたい』と言う夢だった。

 何かして、片方の親だけが褒めてくれることはたまにあると思う。

 親がアメとムチの役割を担っている家庭も多いと思う。 

 でも両方の親に同時にはなかなかないと思った。

 だから僕はそれを体験したいと思った。

 しかも、僕の両親は、厳しくてなかなか褒めてくれるタイプの人ではなかった。

 そこで僕が考えたのは、勉強も運動も一番になることだった。

 どちらも抜かりなく毎日努力した。

 そして、勉強は全国統一模試で一番になり、運動も所属していたテニスクラブで全国一になった。

 その二つの成果を両親に伝えると、二人とも笑顔で「よくやったね」と大層褒めてくれた。

 何をしても、「まだまだ上がいます、より頑張りなさい」と言っていた親が褒めてくれた。

 それがその時はたまらなく嬉しかった。

 僕は一つの夢を叶えた。

 

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