二章 「現実の夢」

 僕は夢について考えていた。

 あの夢をみた日はいつもそうだった。

 夢って一体何だろうか。

 眠ってみる夢と実際に叶えられる夢。

 女の子は夢を売ってくれないかと言ってくる。

『夢を売る』とどうなるのだろうか。

 夢は、人生を変えてくれるのだろうか。

 僕にとって今持っている叶えた夢はなんの意味もない。

 しかし、もしも売ることで、新たな意味が生まれるとしたら?

 それはどんなに素敵だろうか。

 しかし現実では、叶えた夢を手放すことは難しい。

 夢をどこかに捨てたなんて話聞いたことない。

 本当にあの子になら夢を売ることができるのだろうか。

 所詮眠ってみる夢の話だと、僕は考えるのをやめた。


 簡単な朝ご飯を済ませた後、ソファに座り仕事のメールをチェックするためにタブレット端末をスライドする。

 それとともにテレビの電源も入れる。

 同時並行してニュースからも情報を得るためだ。

 僕は早坂 樹(はやさか いつき)という。

 フリーランスとして働いている。二十五歳だ。自分のペースで仕事をしたいと大学卒業後すぐにフリーランスを選んだ。

 わざわざ大きな仕事をしたいと思わない。

 それなりに生活できて、彼女である一華との時間をたくさんとれればそれで十分だ。

 お金にもそんなに執着しなかった。  

 今いる部屋に置いているのはベット、テレビ、ソファ、テーブルだけ。片付けるのが苦手だから極力物は増やしたくないと考えるからだ。

 家の広さだけで言えば家族4人ぐらいで暮らせそうな広さはある。  

 彼女である南沢 一華(みなみざわ いちか)もよく泊まりに来たりしている。

 一華は僕より五つ年上だけど、可愛らしい女性だ。

 でも、しっかりしていてで世話焼きなところもあった。 

 何かと理由をつけて僕の部屋に泊まりに来ては、今困っていることはないかと心配してくれる。

 そんな一華の優しさがすごく嬉しかった。

 包容力のある女性だ。  

 僕は彼女を大切にしようと心に決めている。

 スマホには、一華からメッセージが来ていた。

 「今日はそっちに行ってもいい?」と書いてあったので、「いいよ」と返事を送っておいた。


 現実の夢に関しては、他の人よりかなりの数を叶えてきたと思う。

 夢を叶えれば、人生は豊かになると思っていた。そう信じていた時期もあった。

 「夢を持ちなさい」と常日頃、親に強く言われていたのも関係するかもしれない。 

 僕は親の言うことをしっかり守る子だった。

 誰かが何かを明確に教えてくれると安心できたのだ。  

 それを任務のようにこなしていくと、夢はどんどん叶っていった。

 例えば、最近叶えた夢だとマイホームを手に入れたことだ。僕はこの年で、マイホームを持っている。 

 マイホームは一華との未来のために購入した。

 一華とは三年の付き合いになるけれど、まだ同棲はしていない。お互いの生活を大切にしたかったからだ。

 それでも、後々結婚を視野に入れて真面目に付き合っている。

 世間一般のカップルに比べて、仲はすごくいい方と思う。

 

 

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