一章 「夢をみる」

「あなたの夢を、売ってくれませんか?」

 

 ステンドグラスが天井と壁にきれいに映し出されている。

 ここは一体どこだろう。

 木の冷たさを体で感じる。まず今いるところは木造の建物の中だということは確かだ。

 鐘の音が、ごーんごーんとずっと鳴り響いている。

 教会か何かだろうか。

 そんなに大きな音ではない。

 でも、音に敏感な僕には苦痛な音量だ。

 そんな中、その声ははっきりと聞こえてきた。

 あふれ出てくる不安感を拭いさりたくて、近くを見てみる。しかし、僕以外には誰もいないようだ。

 だから、恐る恐る声のする方に体を向ける。

 左右白と黒のバイカラーのワンピースを着た女の子が立っていた。

 小さな天窓からは光が入ってきていて、彼女を照らしている。

 長いまつげが印象的だ。

 髪はショートカットでカールしていて落ち着いた印象のかわいらしい髪型だ。

 背は170センチある僕よりだいぶ低いので、きっと150センチぐらいだろう。

 服装以外は特に不思議なところはない。

 僕は何か言葉を話そうとするけど、なぜか声が出ない。

「また会いましょう」と彼女はそう言うと、すっとその場から消えていなくなった。


 そこで僕は、目を覚ました。

 横と後ろを刈り上げたツーブロックの髪型に寝癖が少しついている。

 大きな窓からは、朝日が眩しく入ってくる。

 自堕落な生活はしたくないと朝日がいっぱい入ってくる部屋を寝室にした。自然の光で目を覚ますのが一番健康にいいと言われる。

 僕はベットの縁に置いてる眼鏡を手にし、身につける。 

 だんだん視界が鮮やかになってくる。

 目が悪いのは小さな頃からそうだった。先天的なものらしい。

 また、いつもの夢をみていたようだ。

 この夢を僕は何度もみている。

 謎の女の子がでてきて、夢を売ってくれないかと話しかけてくる。

 心当たりなら、ある。

 僕は夢をすべて捨てたいと何よりも強く願っているのだ。

 今後夢を叶えたいとも思わない。

 もう五年も前から思っている。今年の夏までにはなんとか解決策を見つけたいと思っている。

 それには理由もある。

 その思いが、あの夢として現れてきているといって間違いないと思う。

 夢は自在に操れないのはわかっている。

 でも、それほどまでに僕の夢を嫌う思いは強いのだ。

 僕にとって、夢とは全然キラキラしていなくて、むしろ嫌いなものなのだ。

 

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