第03回 日本語は移ろいゆくものだけれど「チート」って言葉の意味、変くない?

 タイトルがもうすでにおかしい件。

「チート」って日本語じゃないじゃん。



 本題の前に、日本語は移ろいゆくもの、という部分から。


 現代日本で「もののあはれ」って使わないじゃないですか。平安時代の文学的・美的価値観、でしたっけ? 今風に言うとなんですか? 「尊い」?


「尊い」も元来の意味から逸脱しつつありますしね。

 私は最初「てぇてぇ」って文字列が理解できませんでした。

 尊いてぇてぇなんですね……。


 事程左様に言葉というのは時代の流れに沿って移ろいゆくものなわけで、普通の人よりも比較的「言葉の正しさ」にうるさい文章書きである私も、ある程度は「しゃーなしやで」と思ってはいます。


 いますが、


 ひとつだけ許せない日本語があります。


「チート」


 いやだから英語じゃん。

 和製英語というべきですか、もはや。


 ええと、カクヨムを読んでいる方なら一度は読んだことがあるであろう「異世界転生チートモノ」というジャンルで使われる「チート」は大雑把に解釈すると「その世界の技術から大きく隔絶した強大な力あるいは才能(を持つ者)」となります。


 さて、ではチートの語源は?

 以下、weblioより抜粋。勿論、英語です。


 cheat

 他動詞


〈…を〉だます 《★【類語】 cheat は自己の利益や目的を達成するために不正手段で相手をあざむく; deceive は真実を隠したり歪めたりして相手をだます; trick は計略によってだます》.

 cheat one's (business) partner(s) (自社の)組合員をだます.


〔+目的語+前置詞+(代)名詞〕〈人を〉だまして〔ものを〕取る 〔of,out of〕.

 He cheated me out of my money. 彼は私をだまして金を奪い取った.


〔+目的語+into+(代)名詞〕〈人を〉だまして〔…〕させる.


 自動詞

〔動詞(+前置詞+(代)名詞)〕〔…で〕ごまかし[不正]をする 〔at,on,in〕.

 cheat at cards トランプでいかさまをする.

〔+on+(代)名詞〕《口語》〔配偶者などに隠れて〕浮気をする.

 He cheats on his wife. 彼は妻に内緒で浮気をしている.


 名詞

 不可算名詞 [具体的には 可算名詞] 詐欺(さぎ), いかさま,カンニング 《★【比較】 この意味では cheating のほうが一般的》.


 可算名詞 ずるいやつ; いかさま師,詐欺師.

 a tax cheat 脱税者.


 はい。今日の授業はここまでです。と言いたいところですが、ところがどっこいここからが本題です。


「チート」の意味(名詞に限定しますが)は「詐欺、いかさま、カンニング」。要するに「ズル」です。


 どこをどう間違って「スゲー力」になったのかといえば、異世界転生無双モノの嚆矢こうしたるソードアート・オンライン(以下SAO)に端を発するものと勝手に考えています。


 とは言うもののSAOの作中では、チート、チーターは正しい意味で使用されています。「ズル。ズルをする者」という意味で用いられています。SAOプログレッシブの1巻に「チーターだ!」「ベータあがりのチーターだ!」というような箇所がありますね。それを混ぜて「ビーター」という造語を作った川原先生のワードセンスはマジですげーなと思います。


 話を戻すと、そのベータテスターのチーターである主人公のキリトさんがまあ無双しまくるのが、SAOの楽しいところなのですが、チート=スゲー力みたいなニュアンスに捻じ曲がって受け取った人がいるのかなー、と思ったりなんぞしています。


 私はいわゆる「チートもの」に詳しくないので、「いやそうじゃないだろ」というご意見は各々ご自由にお持ちになってくださいませ。これは私見でございますだ御代官様見逃してくだせえ。


 なんにしろ「チート」という単語が本来の意味から乖離してしまっている現状を私はうれいて――たりはしません。「なんかやだなあ」と思っているだけです。だから自分の作品の中で「チート」という言葉は使わないし、使うことがあったとしても本来の意味で用います。単なる私の拘りなので、別に押し付けているわけではありませんのであしからず。


 今現時点で、おそらく私のような者の方が少数派、でしょうし。


 あ、そうそう。

 私も異世界転生モノを書いておりまして、よろしければお読みくださいませ。

 主人公は一般人ですが相棒の性能がめっちゃ高い感じです。やたらロリが出てくる頻度が高いですが、そこは純粋に著者の趣味です。書きたいものを書きたいように書けるから一次創作は楽しいので、そこに枷をかけても意味は無いですよね。


「チート」という単語もそんな枷なのかもしれません。私にとっての。

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