第6話 その先に待つもの

かなでが行きついた答えは『ママ』の生きた背景を記憶に留めておく。それだけだった。

イントネーションやブレスの箇所。

笑い方や会話中の間の取り方は心得たつもりでいた。今まで悩んでいた『ママ』のバックボーンを知る為に、かなでは彼女の写真や趣味、パパとの出会いや家族構成と、あらゆる情報を野沢に頼んで取り寄せてもらった。


様々なことがわかった。

都内の女子高校では陸上部。

ポップカルチャーに詳しく趣味はイラスト。

短大を卒業後にイタリアンレストランでアルバイト。ロックバンドも好き。ハープティーや温泉も好き。太宰治や三浦綾子の小説にハマって、寝る前の愛読書は『氷点』

幼い頃に飼っていた猫の名前は鈴吉。

露出した服は好まない。

スカートは履かない。

ジーンズにこだわりがあって、特にボブソンがお気に入り。

GRMブランドをこよなく愛して、行きつけのショップは浦和のバルコ。

アルコールに弱くて、絶叫マシンが嫌い。

もちろん、お化け屋敷は大嫌い。

家族写真はいつでも笑顔。

息子は翔太君。

夫婦は名前で呼びあっている。

写真を撮るのはパパの役目。

だから家族写真はママと翔太君の姿ばかり。


かなではふと思う時がある。

この人と、一度は会ってみたかったなと。


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